12.行きましょう、王都へ
釣り合いがとれないとか。
相応しくないとか。
身分が違うとか。
色々と理由をつけて、私はアレクシス殿下から想いを告げられても、求婚されても、受け入れることは出来なかった。
でも、アレクシス殿下を失うと思ったら。
そんなことは全部吹き飛んでしまって。
アレクシス殿下の魔力を受け入れた。
それが私の答えだった。
自分自身ですら、気づかないように、押し込めて、押し込めていた想い。
涙がポロポロと流れ出る。
「あ、アレクシス殿下のところに……行かせてくださいっ……」
◆◆◆
ゴンちゃんが抱えてくれて、アレクシス殿下の眠っている部屋へと連れてきて貰った。
青白い顔で眠り続けるアレクシス殿下に、ふらふらしながら駆け寄った。
「アレクシス殿下っ……」
声を掛けても、揺さぶっても、ビクともしない。
静かに寝息を立てる姿に、また涙が溢れた。
「わ、私の中の魔力をアレクシス殿下へお返しすることはできませんか!?」
「お前の中の魔力は、ヤチヨの魂と結びついている。切り離すのは無理だ。空っぽまで使い果たした魔力を補充するには、純粋な魔力……血縁者の魔力でなければ拒絶反応が起こるだろう」
「そんな……」
血縁者……。
王妃様の姿が浮かぶ。そして、定かではないけど、アレクシス殿下の本当の父親である王弟殿下……。
「……悔しいけど、俺が魔力を注ごうとしたが、拒絶されて駄目だった。王都に戻り、王妃殿下の協力を仰ぐしかない」
「……っ」
エド様が悔しそうに言う。やはり親子ほどの血縁でないと駄目なんだ。
王妃様とアレクシス殿下は対立しかけている状態だ。
助けてくれるだろうか。
王妃様の冷たい瞳を思い出す。
けれども、やるしかない。
「……行きましょう、王都へ」
絶対に、アレクシス殿下を助ける。
アレクシス殿下が私を助けてくれたように。
「ふん、人の子とは面倒なことだな。そうだ、こいつを共として連れて行くがいい」
ルーラル様がパチンと指を鳴らすと、ポンッと音がして、私の身長の三分の一くらいの大きさの竜の子が現れた。この黒い鱗は……
『長に怒られたの。ノルンに無茶させすぎたって。だからお前はノルンに従属しろって言われた』
「えぇ!?」
従属……?
どういうこと……?
「あ、あの、竜の子が、長に言われて、私に従属するようにと……」
「ああ。お前が最後に治した黄金の竜が、竜族の長だったんだ。こいつは長の子だ。よかったな、いいペットが見つかって」
『ペットじゃない!失礼、エルフ!……ノルン、名前つけて。僕だけの名前』
「名前……?」
そうか、従属って、物騒なことではなくて、名付け親になってほしいってことだったのかな。
黒い竜……黒……。
「チョコ!チョコはどうかなっ!?」
『え……』
「だめなら、うーん、ブラックハリケーンとか、黒豆とか!?」
『……チョコでいい』
可愛らしい姿にぴったりな名前になった。
満足していると、チョコの額が光り、私の手の甲に頭を擦り付けられ、手の甲に紋章が浮かび上がった。
『これで、ノルンはチョコの主。ノルンとチョコは魂で結びついたよ!』
「ええええええ!?」
こうして、新たな仲間が増えたのだった。
チョコは大きさを自由自在に変えられて、人の姿になることもできる。攻撃力も最大級で、ルーラル様は「いい用心棒になるぞ」と太鼓判を押してくれた。
大きな竜になったチョコの背中に乗る。
竜だけが使える特別な空間移動魔法で、王都まではほんの一瞬で移動できるらしい。
アレクシス殿下を助けるために。
私たちはチョコに連れられて王都を目指したのであった。




