11.初代聖女……ヤチヨ様っ!?
「これっ!はよ起きよ、無茶なことをする子じゃ」
「い……いたっ!」
頭をポコンと叩かれた痛みで目を覚ますと、辺り一面綺麗な花が咲いた川の畔にいた。
「全く、こんな無茶をさせるためにお前を作ったのではないというのに。魂の半分は一緒でも、性質は違うのじゃな」
「……?」
目の前には、黒い綺麗な長い髪を結い、白と赤の布で出来た、東の国の「キモノ」と呼ばれるような服を身に纏った女の人が居た。
「まあ、よお頑張った。あの竜どもの病を、自身に吸収して治そうとするなんぞ、誰にも想像できまい」
「あの……あなたは……」
「なんぞ、気が付かないのかえ?お前に半分魂を分け与えたというに」
半分……魂……。
ってまさか!?
「初代聖女……ヤチヨ様っ!?」
「そうじゃ。ここは魂の世界。もうちょっとであの世じゃな。でも、お前はまだ、あちらへ行くのは早い。叩き戻してやろうと思ってな」
「えぇ!?」
ここは……天国のようなところなんだろうか!?
叩き戻すって……。
あの肖像画で見た儚げな聖女様の、予想外の言動に驚き何も言えないで居ると……。バシッと背中を叩かれた。
「しゃきっとせい!巫女の力を使こうてお前を戻してやるから、ちゃんと愛する者と幸せに生きるのじゃぞ」
「ええええ!?」
「あ!お礼なら塩豆大福がよいのう。お前が食べればわれに通じるからのう。頼んだぞよ!」
シャンシャンと鈴の音が鳴り、私はお花畑から真っ逆さまに落ちた。
「ひゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
急降下しながら意識がなくなった。
次の瞬間、目を開けると──
「ノルンッ!!!!メガアイタヨ!!!!」
真っ白な天井と、嬉しそうなゴンちゃんの姿が目に入ったのであった──。
◆◆◆
「し、塩豆大福ってなんですかっ!?」
「はっ!?何を言ってるんだ、ノルン!医者を、医者を呼んだ方が!?」
飛び起きると、広い豪華な部屋のベッドに寝ていて、ベッドの周りには、ゴンちゃんとエド様、リドディア様がいて、ルーラル様も呆れた表情で私を見ていた。
「第一声が塩豆大福とは、やはりお前はヤチヨの魂を受け継いでいるな」
「あ、あれっ!?私、お花畑にいたのでは……初代聖女様はっ!?」
「かなり危ないところまで行ったようだな。どうせヤチヨに戻されたんだろう。お前は、竜達を治して身体に病の穢れを溜め込んで壊れる寸前だったんだ。そこをマッチョと王子達でなんとかつなぎ止めた」
……そうだ。
私は限界まで竜たちの黒い靄を吸い込んだはず。
多分、かなり無茶をした。
今、生きてるのは、みんなのお陰……?
「あ、ありがとう……ございますっ、わ、わたし……」
「ノルンが無事で良かったよ。心配するな、竜達も無事だよ、治ったばかりで衰弱しないようエルフの長殿が面倒をみてくださっている」
エド様に優しく言われ、ホッとした。
でも、あれ……?
なぜアレクシス殿下の姿が見えないのだろう……。
「あの、アレクシス殿下……は?」
私の言葉に、みんなの顔色が一斉に曇った。
どうしてだろう。
胸騒ぎがする。
「アレクは……」
言いにくそうに俯いたエド様の言葉を続けるように、ルーラル様が口を開いた。
「お前を助けるために魔力を使い果たし、昏睡状態だ」
「こ、昏睡っ!?い、命に別状は、アレクシス殿下はっ……」
心臓がつぶれそうなほど痛い。
いやだ。
アレクシス殿下が、まさか──。
自分が壊れてしまう時よりも、もっともっと感情が揺さぶられる。
「お前の中の穢れは外に溢れたものはマッチョが浄化し、中にあるものはお前自身の魔力で中和していたが、量が多すぎてお前の魔力は尽きた。本来なら人形に戻り壊れるところを、王子が魔力を注ぎ続けた」
ルーラル様の言葉に心臓が嫌な音を立てる。
え……。
アレクシス殿下が、私に魔力を……?
『魔女以外から魔力を補充する時には、ノルンだけを生涯愛すると誓いを立てた者で、ノルンも生涯相手を愛すると想う相手で無いと魔力を受け入れることは出来ない』
そう条件づけられていたはず。
どうして、アレクシス殿下が私に魔力を供給できたのか。
だって──
「王子はお前を死なせたくないほど愛してたんだろう。そしてお前はその魔力を受け入れた。……そういうことだ」




