8.私の……能力……?
「エルフ様、ひとつ訊きたいのですが、いいでしょうか?」
「……ルーラルでいい。なんだ?」
「では、ルーラル様。初代聖女様は、魔魚とどのような関係だったのでしょうか?」
私の質問に、ルーラル様は目を丸くした。
色々衝撃的なことがあって忘れかけていたけれども、私がマレンディール公爵家の聖物に吸い込まれた先で出会ったあの魔魚の妖精さんだと思っていたのは……もしかして──。
「魔魚……だと?初代聖女がカラカラに干していい出汁を取っていたくらいしか知らぬが」
「魔魚が、人の姿になったり、妖精になる可能性は……」
「なに言っているんだ。魔魚は魔魚だろ。人にも妖精にもならん」
訳が分からないような顔をするルーラル様に、あの魔魚の妖精さんは、魔魚ではなかったのではないかと思った。
「以前、初代聖女様が遺した聖物の中に吸い込まれたことがあったのです。そこで、顔に綺麗な鱗を生やした妖精のような子どもと会いました。てっきり魔魚の妖精さんかと思ったのですが……」
「……恐らく、竜だろうな。鱗を生やした人型になれる者といえば、竜くらいしか知らぬ。そうか、ノルン、お前は異空間で竜と会ったか……」
魔魚の妖精さんは、竜だったらしい。
病気で苦しみ、眠っていた竜なのだろうか。でも、どこも腐っては居なかった。むしろ神秘的なくらい綺麗な姿で……。
「話せたのか?」
「はい。初代聖女様を捜しているようでした。聖女様が居ないとわかると、私に代わりをしてほしいと、そう言っていたような……」
「ほう。なるほどな。それが半分の魂を持つお前の能力かもしれん」
私の……能力……?
「竜は警戒心の強い生き物だ。人型をみせ、会話も出来るなど、初代聖女以外にきいたことがない。ヤチヨは竜と会話し、癒やして眠らせた。お前にも同じことができる可能性がある」
竜と……会話できるのが、私の力……?
瘴気を浄化したり、病を治したりとか、目立つ能力では無いけれど。
私にも出来ることがあるみたい!
希望の光が見えた気がして嬉しくなる。
「まあ、ただの推測だ。まずは、痛みや苦しみで我を忘れて暴れる竜達をどうにかしなければ、対話などできないからな」
「え……?」
「竜達が近づいてきた。もう時間がないな。私の声はリドディアに聞こえるようにしておく。そこから指示を出してやる。私は、この隠れ里とエルフの街を守らねばならぬからな。竜はお前達でなんとかしろ」
「ええええ、必殺技とか、竜を眠らす方法とかはっ……」
「竜の元へ送ってやろう。武運を祈る」
パチンとルーラル様が指を鳴らすと、私たちは隠れ里の外と思われる、何も無い広い荒野へと移動していた。
はるか彼方の空は夜のように黒くなり、その黒い固まりがこちらへ近づいてくる。あれは、まさか瘴気を纏った竜たち……?
「瘴気かっ……。ゴンザレスくんは瘴気を浄化するのに専念してくれ。俺とアレクは魔法で竜達を食い止める。リドディア殿はエルフの長殿から何か指示があれば聞いてくれ。ノルンは、竜と対話できそうなら、対話を試みてほしい」
状況を瞬時に判断しテキパキと指示を出すエド様は、やはり冒険慣れしているだけある。きっと、沢山の修羅場をくぐり抜けてきたのだろう。頼もしく感じた。
「ゴンザレス、クロイノ、ヤッツケル!」
「うん、頑張ろうね、ゴンちゃん!」
竜はあっという間に私たちの目と鼻の先に来た。
その姿は──
生きる屍のような……ほぼ骸骨で、目玉だけ輝いていて、肉体は腐り落ちていた。
これが病にかかった竜……。
一匹一匹が山のように大きくて、圧倒されてしまう。全部で5匹の竜が私たちめがけて飛んできたのだった──。




