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5.ノルンは、ノルンだ



瘴気が王国の所々で発生するようになって。その瘴気の元は病気で苦しんでいる竜たちで。竜たちをまた眠らせなければ、瘴気は浄化してもまた涌き出てくる。


竜たちを眠らせる力は初代聖女様しか持っていない。

初代聖女様の半分の魂でできた人形の私と、半分の魂を持って生まれたゴンちゃんが力を合わせれば、竜たちを眠らせてあげられるかもしれない。


そんな話を聞いても、まだ受け入れられなかった。


だって、母は森で薬を作っている普通の人間だった。魔女だなんて思ってもみなかった。

私が人間じゃないだなんて思ってもみなかった。


でも私が本当に初代聖女様が作った人形だとしたら……。



「待ってください、ノルンは、本当に人形だったのでしょうか、こんなにも……我々と同じだ。魔女の術を使ったとしても、ここまで──」


「ほう、ラスティーノの倅か。お前は母親同様私のオーラが視えるのだろう、嘘をついているか?」


エド様は、ぐっと押し黙った。それが……答えか。

私は、やっぱり異質な存在だったんだ。


『黒き子』と村の人達が忌み嫌ったのも……当然だったのかもしれない。人間ですらない。



「……ノルンは、ノルンだ」


「え……?」



重たい空気の中、アレクシス殿下は私を真っ直ぐに見つめた。

その瞳は、村の人達のような忌む色はなく、いつもと同で。



「俺は、ノルンが何者でも問題ないし何も変わりはしない」


「アレクシス殿下……」


「こんな食い意地の張った奴、どこにもいないだろ。お前は……元気に沢山好きな物を食べて笑ってればいい。もしも、竜を眠らせるのにお前の力が必要だとしても、お前に害が及ぶのなら、別の方法を探す。お前は俺らの掛け替えのない仲間だ。犠牲になど絶対にしない」



アレクシス殿下の強い言葉に涙が零れそうになった。

だって、私は、異形の存在なのに。

この国の為に、使い潰せばいいのに。

どうせ谷底に捨てられた時に終わっていたかも知れない命なのだから。


「そうだね、ノルンはノルンだ。大事な仲間だ」


「ヨクワカラナイケド、ノルン、ダイジ!」



誰一人、私を見る目を変えていない。

大事な仲間だと言ってくれる。


それだけでも、『黒き子』として谷底に落とされそうになった時にぽっかりと空いた心の中の空洞が満たされる。


エド様に救われて、沢山の親切な人達に囲まれて、ここまで生きてこられた。本当なら、存在していなかった時間だ。


大切な仲間と言える存在にも出会えた。

だから、今度は私が──。


本来の役目を果たさなければいけない。



「私は、竜たちを助けたい。だって、そうすれば、大事な人達を守ることに繋がるから。私ができることを、したいです」


「ノルン……?!」


「ほう、自分が壊れてもいいのか?」


「エルフ様は、壊れてしまうかも(・・)、と仰いましたよね?ということは壊れないかもしれない可能性もあるということですよね。私は聖なる力も魔力も持っていません。でも、この身体に宿る魂が役に立つなら、それに懸けたい。それに結構悪運は強いので、どうにかなるかもしれません」



生き残って、みんなとまた笑ってお菓子を食べる。

そんな未来があると信じたい。


真っ直ぐ見つめて決意表明すると、エルフ様は堪えきれないとばかりに吹き出した。



「クッ………、やはりお前はヤチヨに似てるな。その楽観主義で前しか向かない思考も。気に入った。ノルンと言ったか?気が向いたから力を貸してやろう」


「ルーラル様っ……!!ああああ、良かったですぅぅぅ」


エルフ様の横で押し黙っていたリドディア様がホッとしたように床に崩れ落ちた。


「手助けするかは本人を見て決めると言っただろう。お前が必死になり助けを求めただけはあるな」


リドディア様も、真実を知った影で動いてくれていたらしい。

あの長いものに巻かれる主義のリドディア様が、エルフ様に助けを求めてくれていたなんて、胸がじんとなった。



「ノルン、ではお前の力を視てやろう」



そう言って、エルフ様が私の額に指で触れた。




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