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4.自分が何者かも知らずに生きていたのか。



「え……?」


「なんだ、自分が何者かも知らずに生きていたのか。面白い」



やはり私に言っている……?

聖女の作りし人形って……どういうことだろう。


この黒目黒髪が初代聖女様とそっくりだから?



「私は永い時を生きてきた。初代聖女とも知り合いだ。リドディアが持っている書物はほぼ私が話したことを、人の子が面白おかしく書き残した物だ。愉快な内容だっただろう?」


「えぇっ!?」



そんな昔から生きているの……!?

ルーラルと名乗るエルフは一体何歳なのだろう。



「初代聖女の居た頃には、この世界も今とは異なって様々な種が共存していた。エルフやドワーフ、獣人に妖精族、それに……竜もな」


「……竜……?」



あの瘴気の元になっている……竜とも共存していた……?

人と竜は戦ったのでは?

消滅しない竜の身体から瘴気が出ているのでは──



「お前には全く記憶が無いようだな。ならば話してやろう。初代聖女は異世界から召喚されし特殊な力を持った人間だった。初代聖女が召喚された時を同じにして竜達は皆、未知の病に冒されていた。その病を癒やす力を持っていたのが初代聖女だったのだ」


「え……?竜を、瘴気を浄化する力ではなくて、竜を癒やす力……?人と竜は戦ったのではないですか?なぜ竜を癒やす力が……」


私たちが知っている事実と異なることばかりで頭が混乱する。

そもそも、言い伝えられている史実が違うのだろうか……?


「人と竜は戦ってなどおらん。竜を倒したと威張りたい人間が物事の真理を曲げたのだろう。人も竜も他の種族も共存していた。あの頃はな……」


かつては竜と共存していた。

だから、病んでしまった竜を癒やす力を持った初代聖女様を人が召喚した──?


「初代聖女様が……竜を、癒やした……?」


「ああ。しかし手遅れになる竜もいた。竜は不死身だ。身体が腐り落ち、死ねずに苦しむ竜の病の進行を止めるには眠りにつかせるしかなかった。初代聖女は安らかに眠りにつけるよう一匹一匹に祈りを捧げ、聖物に癒しの力を込め祀った。竜はその癒しの力が続く限り、安らかに眠れていた」



それじゃあ、神殿や公爵家には……竜が眠っていたということ……?

でもなぜ今になって瘴気が……。



「聖女の力は永久に枯れないわけではない。何代か聖女を召喚し、聖物に力を注いでいたようだが、初代聖女の作りし聖物そのものの力は時間の経過と共に朽ち、竜が目覚めたのだろう。癒しの効果がなくなり、苦しんでいる。身体の腐敗も再び始まり、瘴気が出現しているのだろうな」



そんな……。

初代聖女様が居ない中、目覚めてしまった竜をどうすればいいのだろう。ゴンちゃんの力は、竜を癒やすこともできるのだろうか?



「初代聖女は、未来を見越して、己の魂を半分に分け、この地にとどめた。人形に魂を移してな。本来は、竜が目覚めた時に人形も目覚め、竜をまた眠りにつかせるはずだった。しかし、人形は持ち去られてしまったんだ。人形を覚えているのはこの私くらいでついさっきまで存在すら忘れていた程だ、誰も探さず、瘴気はこの地に満ちていた」



私は嫌な予感がした。

さっき、彼は私を見て言っていたではないか。


『聖女の作りし人形』……と。

私は──。



「お前が、聖女の魂を半分受け継いだ人形だ。しかし、おかしな魔力も込められているな。そうか……人形を持ち去ったのは魔女だったか。己の魔力を込め……人形に命を吹き込んだのだな」


綺麗な青い瞳に見透かされているような視線を向けられる。

エルフだから、常人には見えないものも視えるのだろうか。


彼の口から出た言葉に私は混乱を隠せなかった。


「私が……人形……?……魔女が……持ち去った……?」


幼い頃から、森で母と二人で暮らしていた。

私に父はいない。


母は……魔女……?

私を……人形から人間に変えた──?


ドキドキと心臓が五月蠅いくらい鼓動を早める。



「ノルン、ダイジョーブ!?イジメラレタ!?」



ゴンちゃんが心配そうに私をのぞき込んだ。



「ほう……。もう半分か」


「え……?」


「そのマッチョの魂は聖女のもう半分の魂が転生したものだな。よく、転生したら身体が丈夫になりたいと言っていたが……」



ゴンちゃんは……初代聖女様の生まれ変わり!?

そうか、それで聖なる力を持って生まれたのか……。

やっぱりゴンちゃんは本物の聖女様だったんだ!



「魂が揃えば、もう一度竜たちを眠らせることも可能かもしれん。まあ、力を使えば、元々人形のお前は、壊れてしまうかもしれないがな」



そう、ルーラルと名乗るエルフは言ったのだった。




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