3.よく来たな。人の子よ
魔魚の妖精さんについて調べるためにリドディア様はムース家の隠れ里に行っていた。連絡用にアレクシス殿下がつけた魔法の鳥さんが送ってきたメッセージの声は切羽詰まっていた。
アレクシス殿下とエド様、私とゴンちゃんはすぐに旅立つ準備をした。
転移魔法で隠れ里の近くらしい街まで転移し、そこまでリドディア様が迎えに来てくれることとなった。
「こちらのことは我がマレンディール公爵家にお任せくださいませ!」
「気をつけて行ってらっしゃい」
キャスリーン嬢と、コーディネリア公爵が見送ってくれた。
マレンディール公爵家が王妃様を見張ってくれ、側妃様はコーディネリア公爵家が引き続き守ってくれる。
「よろしくおねがいしますっ!では、行ってきます!」
「マーネット様、母を頼みます」
目覚めたばかりの側妃様を置いて旅立つのは心配だろう。エド様はコーディネリア公爵に側妃様を託し、転移魔法を発動させた。
一度行っていたところへ転移魔法で行けるため、冒険者として各地を巡っていたエド様のおかげで、隠れ里の隣の街まで一気に魔法で行ける。隠れ里に辿り着いたらエド様だけは王宮へ戻ることも勧めたけど、
「リドディア殿があのように訴えるとはただ事じゃ無いだろうし、『聖女・ポティ』の護衛として、俺も一緒に行くよ」
と当然のように言ってくれた。エド様が居てくれれば心強いけど。エド様不在中に側妃様に何も起こりませんようにと祈るばかりだ。
魔方陣の光の中に入り、私たちは転移魔法で旅立った。
◆◆◆
「ようこそおいでくださいました!さあ、こちらですっ!」
街で待っていてくれたリドディア様は、再会を喜ぶ暇も与えず、私たちを馬車へ押し詰めた。
「この馬車には魔法がかかっていて、直ぐに隠れ里へと転移しますので、しっかり掴まっていてくださいね!」
馬車ごと転移させるなんて高度な魔法を使用するリドディア様にエド様とアレクシス殿下は目を丸くする。
「お前、そんな魔法使えたのか……?」
「いいえっ!ある方がかけてくださった魔法です。ムース家の相談役でもあるとっても偉い方で。その方が今回、殿下や『聖女・ポティ』一行をお連れするようにと」
「……?」
興奮した様子で話すリドディア様は、いつもの初代聖女様の歴史を語るときのように目を輝かせている。
馬車の周りの景色が光り輝き、目の前が真っ白に染まる。眩しさに閉じた目を開けた時には──馬車は停まり、窓から見える景色は一変していた。
「ようこそ、ムース家の隠れ里へ」
魔魚の妖精さんと出会った、石碑に吸い込まれた時に行ったあの森のような、古代樹が生い茂る森の中に小さな集落があるのが見えた。
ここが……リドディア様の一族の隠れ里……。
人の世界から切り離されたような、自然と融合した空間に息を呑む。
「相談役がお待ちです」
リドディア様に案内され、古代樹の洞の中に足を踏み入れると、そこには異空間が広がっており、大きな部屋になっていた。
部屋の奥の豪華な椅子に腰掛けていたのは──。
尖った長い耳に、銀色の長い髪の毛。透き通った肌に、人間とは思えない美しい顔。まるで……物語に出てくるエルフのような──男の人だった。
「よく来たな。人の子よ。ほぉ……、お前が……」
男の人の視線は、真っ直ぐに私に向けられていた。
なぜ私!?
ドギマギしていると、男の人は面白そうに笑い出す。
「本当に人間のようだな。よくできている。……私はルーラル。ムース家に気まぐれで助言を行うエルフ一族の長だ」
やはりエルフだったみたい。しかも長というとても偉い立場のエルフらしい。
彼の視線はやはり私に向けられていた。
「久しいな、その魂。聖女の作りし人形よ──」




