3.オテダマンってなに!?
初めての浄化が成功し、聖女ポティとして正式に聖女として認められ、国王陛下から国民へも公表された。
瘴気に悩まされるラスティーノ王国の希望の光として、それはもう引くほどの勢いで歓迎され、黒髪・黒目の聖女様は、今や国民的スターになりつつある。
「これで俺の立太子は確実だな。よくやった!」
こっちは皆を騙している罪悪感に圧し潰されそうになっているのに、アレクシス殿下はご機嫌そうに寛いでいた。
本当に地で性格が悪い。
ただのメイドであった私と、遥か遠い国から召喚された聖なる力を持つマッチョなゴンちゃんを聖女に仕立て上げていることが露見したら……。
キュウ~と胃が痛み、食事さえ喉を通りそうもない。
「ノルン、ダイジョーブ?カオ、アオイ……!」
「ありがとう、ゴンちゃん。大丈夫……」
「ったく、なんでそう小心者なんだ。絶対バレねぇように、気を付けろよ。……後で消化に良さそうなものを持ってくるようにコックに言っとくから……少しでもいいから食べろ。命令だ」
……貶されているのか、心配されているのか。アレクシス殿下の性格がいまだに掴めなかった。
「なに無視してんだ。返事は?」
「は、はい……」
痛む胃をさすりながら、返事をする。なんで、ゴンちゃんもアレクシス殿下もこんなに堂々としていられるのだろうか。
心配しすぎる私がおかしいのか。いいや、絶対にこの状況で堂々とできる方が凄いのだ。
「聖女ポティ様っ!初代様はオテダマンという球状の武器を有していたと書かれています!!オテダマンを習得しましょうっ!」
「オテダマンってなに!?それ、爆発しませんよねぇっ!?」
慌ただしく部屋に入って来たリドディア様は、聖女様の文献を読み漁り、色々と試してみたくて仕方ないらしく、こうやって何度も初代聖女様ゆかりのものを持ってくる。
どうみても、手りゅう弾に見えるそのオテダマンと呼ばれる武器を差し出され、初代聖女様って本当にどんな方だったんだろうと恐怖すら覚える。
「ゴンザレスモ、ヤリタイッ!」
流石は聖なる力を有するゴンちゃんである。私は持つことさえままならないのに、ゴンちゃんはオテダマンを軽々持ち、リドディア様が読み上げる文献通りに、持ち上げたり放り投げたりできている。
やっぱり聖女はゴンちゃんなんだ。
そう実感する。それなのに、ゴンちゃんの功績はすべて、ポティの功績になっている。褒められるのは、いつも表に立っている私だ。
これはお芝居だからと、開き直れたらいいんだけど。
どうしても、引っかかってしまう。
「おい、面かせ」
「へっ!?」
オテダマンをするゴンちゃん達をシュンとなりながら見つめていると、急にアレクシス殿下に腕を引っ張られた。