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9.み、見ないでくれっ



「コーディネリア公爵家へ訪問したいのですわね、わかりました。我がマレンディール公爵家が協力いたしますわ。任せてくださいませ!」



コーディネリア公爵家とはあまり折り合いが良くないらしいアレクシス殿下は、キャスリーン嬢へと事情を話し、協力を得ていた。



「コーディネリア公爵家の聖物も消失したと言いましたら、情報共有のために訪れるのを承知してくださいましたわ。表上はお父様とわたくしで訪問し、聖女様やゴンザレス様、アレクシス殿下は変装して従者として着いてきてくださいませ」



私たちはキャスリーン嬢の協力もあり変装してコーディネリア公爵家へ潜入する予定となった。私はカツラを被りキャスリーン嬢の侍女に。ゴンちゃんと殿下は護衛に変装した。


アレクシス殿下は顔を知られているため、カツラに眼鏡と変装が必要で重装備となった。


公爵やキャスリーン嬢がコーディネリア公爵を引きつけている間に、アレクシス殿下が探知魔法でエド様を捜し、戻ってこられない事情を訊いて、必要であれば救出する。


ゴンちゃんは瘴気の気配がないか確認して、可能であれば浄化する。そして私は見張り役だ。


役割分担を確認し、私たちはコーディネリア公爵家へと足を踏み入れたのだった。



「ようこそいらっしゃいました」



もの凄い圧を放ち迎えてくれたのは、コーディネリア公爵だった。もう七十を超えるお年なのにその威厳は損なわれず、女傑と呼ばれるだけのオーラを醸し出している。



「……クロイ……ケムリ……」



コーディネリア公爵に圧倒されていると、ゴンちゃんが呟いた。私には何も見えないけれど、ゴンちゃんにだけ感じる悪い物がコーディネリア公爵についているのだろうか。


闇に呑まれると……。

以前のキャスリーン嬢やマレンディール公爵のように、人格すら変わってしまっている可能性がある。


エド様はやはり危険な目に遭っているのかな。

探知魔法を使っているアレクシス殿下を見ると、表情が険しくなる。



「……兄上の気配は地下からする。貴族の屋敷の地下と言えば……大抵は牢がある。捕らえられているのか」


「そ……そんなっ」


「心配するな。兄上は強い。大人しく捕まっているのなら何か事情があるのだろう。俺は事情を訊きに行ってくる。お前は気づかれないよう見張っていてくれ」


「はい。わか──」



アレクシス殿下が動こうとした瞬間に、鋭い斬撃が飛んでくる。ハッとして辺りを見回すと、コーディネリア公爵家の兵士に取り囲まれていた。



「怪しい動きはしないことね、第二王子殿下」


「っ……」


「気が付かないとでも思っていた?ずっと恨んでいたあなたを私がわからないはずないでしょう。それに、お隣は聖女様かしら。我がコーディネリア公爵家になんのご用があったの。それは……聖物が盗まれたことに関係しているの?」



射貫くような視線に、全て悟られていると背中に汗が流れ落ちる。コーディネリア公爵は無表情で近づいてきた。



「アンリエッタはまだ目覚めないの。エドワルドもお仕置き中よ。すべて、貴方が悪いんじゃないの?……第二王子殿下」



アレクシス殿下の肩がビクリと揺れる。

アンリエッタ……。たしか、側妃様の名前がそうだったような。

側妃様は病気療養中って公表されているけれど……目覚めないとは、どういうことだろう。


アレクシス殿下の方へ視線を向けると、真っ青になり、辛そうな表情をしていて、私は慌てて駆け寄った。



「アレクシス殿下!?どうされたのですか、具合が……」


「私は許さないわ。貴方の母親も、貴方も」


殿下へ向けられる敵意を感じ取り、側妃様とコーディネリア公爵、そしてアレクシス殿下の間で何かあったのだと悟る。


私が踏み込んでいい問題じゃないかもしれない。

でも、辛そうに唇を噛みしめている殿下を放っておくことは出来なかった。



「あの──」


「クロイノ、イッパイ、ダメッ!!」



一歩踏み出そうとした瞬間、それを遮るようにゴンちゃんが飛び出した。見えない何かから私を護るように手を広げたゴンちゃんは、コーディネリア公爵と向き合った。



「オネガイ、クロイノ、キエテ!!」



ゴンちゃんの身体から光が溢れ、その眩しさにコーディネリア公爵は顔を手で覆い後ずさる。


その場に崩れ落ちたコーディネリア公爵は、ゴンちゃんの放つ光が消えると、憑き物が落ちたように険しい表情から穏やかな表情へと変わっていた。



「わ、私……、どうして……」


「クロイノ、キエタ!ヨカッタネ!!」


ニッコリと微笑むゴンちゃんに、コーディネリア公爵の後ろにいたらしいキャスリーン嬢が何故か腰を抜かしていた。


「やっぱり……ゴンザレス様……素敵っ……」


キャスリーン嬢の中でゴンちゃんへの気持ちが爆発したようだ。


コーディネリア公爵は呆然としていたが、ハッと何かを思い出したように立ち上がった。


「私、エドワルドに酷いことをっ……。早く助けなければっ……」


そうだっ!!

エド様──



急に走り出したコーディネリア公爵を追いかけると、地下の牢屋の前に辿り着いた。


牢屋の中には──


「み、見ないでくれっ──」


女物のドレスに身を包んだエド様が慌てふためいていた。



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