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7.残念だわ

エドワルドsideとなります。



「うまく潜り込んでいるようね。エドワルド」


コーディネリア公爵家当主である、マーネット・コーディネリアは目を細めて俺を見つめる。御年70を越えた人の良さそうな彼女は、実は曲者であり気が抜けない。


コーディネリア公爵家は代々女性が当主の座に着く。

歴史ある公爵家の長である彼女は、俺の母の唯一の友人でもある。


小国の子爵家出の母の後ろ盾となり、側妃となった母をずっと支えてくれている。



「アンリエッタの容体は変わりないのかしら」


「はい。未だ目覚めません」


「そう。アンリエッタをあのような状態にしたあの女はやはり許せないわねぇ……」


アンリエッタとは母のことだ。母は、病気療養中と公には発表されているが、実のところはここ十数年ほど眠り続けている。


毒なのか。

呪いなのか。


医者も、魔術師も、原因を突き止められないでいる。


あの日。

俺とアレクで、調子を崩していた母を見舞った。


アレクはよく母に懐いており、母も王妃に見つからないようにアレクを可愛がっていた。


「アンリ様、これ、お見舞いです」


「まあ、アレク殿下。かわいらしいお花ですね。ありがとうございます」


アレクは何も知らない純粋な子どもで。

まさか自分が渡した見舞いの品があんな悲劇を起こすとは思ってもみなかっただろう。



温室に咲いた珍しい花は。

母上を覚めない眠りにつかせた。


花の毒なのか。

花にかけられた呪いなのか。


花が消えてしまったため、誰にも分からなかった。ただ、その花は王妃の王室で摘んだらしい。綺麗な特別な花だと、何度もアレクに見せたと言っていたから。



幼い子どもの手を使い、母を害したのは王妃で間違いない。


アレクは自分の所為だとずっと泣きはらし、今でも自分を責めている。

聖女召喚を無理して断行したのは、民の為が一番だろうが、異世界の聖女ならば母を治せるのかもと思い至り、追い詰められていた可能性もある。



「第二王子を、王妃を私は許さないわ。エドワルド、わかっているわね?」


「はい。マーネット様」


「あなたが王位を継ぐのよ。必ずね」




野心に燃える彼女の目は、衰えを知らず強い光を灯していた。母が目覚めない限り、彼女の怒りは消えることはないのだろう。


王位に興味のない第一王子を演じること。

民衆の支持を集め、第二王子と聖女一行に近づき信用を得ること。


彼女からの指示はそれだけだった。

それだけだったのに。


『兄上っ!』


『エド様っ!!』



きっともう、自分の中の一番は変わってしまった。



上辺だけの笑顔を取り繕い、頭を下げた。



「では、マーネット様。今度聖女一行をお招きしても?」


「ええ。いいでしょう。良い駒になってくれれば良いのだけどね」


歪みはきっと正せない。

温かかった母の友人は、瞳を細めて、冷たく微笑んだ。




◆◆◆



コーディネリア公爵家を出ようとした時、兵士達に囲まれる。



「何のご用でしょう?」


「聖物がなくなりました。重要参考人として、お連れするようにとマーネット様から命令を受けています。どうかご同行を」



あの冷たい瞳を思い出し、抵抗は無駄だと兵士に続く。



「裏切ったのね、エドワルド。残念だわ」



コーディネリア公爵家に保有されていた聖物は跡形もなく姿を消してしまったのだった──。




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