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1.アレクが婚約しちゃうと……寂しいのかな?




「アレクシス殿下は大丈夫でしょうか……」



王宮から帰ったアレクシス殿下は、疲れたようにソファに座り項垂れている。


確か、アルステディール公爵家の聖物を確認するために王妃様に会いに行ったのでは……。実の母親と面会するだけでここまで生気を吸い取られるって……一体何があったのだろう。



アレクシス殿下のお母様は、ラスティーノ王国現国王の正妃であり、三大公爵家・アルステディール公爵家を実家に持つ由緒正しき血筋の王妃様だ。


それだけ気位も高く、王妃様に仕えるメイド仲間は、日々やつれていくほど過酷な現場だと言っていた。



「ああ、アレクは母君と折り合いが悪いからな」


「そうなのですか!?王妃様はアレクシス殿下を溺愛しているとお聞きしましたが」


「対外的にはね。でも溺愛というよりは執着に近いかも知れないね……」



エド様は、アレクシス殿下を気遣うように目を細めた。

執着……。

何に……だろうか。


国王陛下は、エド様のお母様である側妃様だけを愛していると噂されている。もしかしたら国王陛下には見切りをつけていて、息子であるアレクシス殿下に愛情を注いでいるのか。


それが執着……?

なんとなく違和感を覚えていると、項垂れていたアレクシス殿下がゆっくりと顔を上げた。



「はーーーーーーっ」



深いため息を吐いている。


これは重症ではっ!?

一気に心配になってくる。


「こら、アレク。ノルンが心配しているよ。そんなに弱った姿を見せて、どうしたんだ?」


「兄上……。申し訳ありません。何でもありません。ノルンも……気にするな……」



エド様と、「これはやばいやつでは!?」と視線で会話する。

何も言うつもりが無いアレクシス殿下にこれ以上追求できず、取りあえず美味しい苺ケーキを目の前の机に差し入れして傍を離れた。



「何か……条件を出されたのかもね」


「え……?」


「あの人がただで動くはずがないからね。実家と繋ぎをつけるのに、アレクが悩むくらいの条件をつけたんじゃないかな。例えば……早急に婚約者を決めろ、とかね」



え……。

何故か胸がズキリと痛む。


キャスリーン嬢の影響で、今までアレクシス殿下に婚約者候補は何人か居ても婚約者は選定されなかった。


キャスリーン嬢は、「罪深きわたくしが未来の王太子の伴侶となるわけにはいきません」と婚約者候補からは辞退してしまったと聞いた。


今まで婚約者候補として第二王子派であったマレンディール公爵家は、現在、王子のどちらも支持せずに『聖女派』と公言し、中立を貫いている。


そうなると、一気に勢力図が変わってしまうわけで。


優位に立っていた第二王子派は、新たな支持を集めるために、『婚約』という手段を取る必要がある……?



「まあ、王族の婚約なんて、政治がらみが多いからね」


「そう……ですよね」


「ノルンは、アレクが婚約しちゃうと……寂しいのかな?」


「ええええっ!?」



エド様は何を言い出すのだろう。

一介のメイドだった私に……そんなことを思う資格なんてないのに。寂しいなんて、恐れ多すぎる。



「アレクシス殿下は、遠い場所にいる偉い存在ですので、その……」


「そっか……。ごめんね、変なことを訊いて」



そう言いつつ、なぜか微笑ましそうな表情で見られる。

な、なぜ……っ。



「まあ、俺らはアレクが相談したくなったときに、話を聞くしかできないのかもね」


「……そうですね」



こうして様子のおかしいアレクシス殿下を心配しつつ、話してくれるまで待つ道を選んだのだった。


まさか……。


翌日……とんでもない事態に巻き込まれるとは、思ってもみなかった。




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