表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

43/75

かわいい弟



俺、エドワルド・ラスティーノには、母親が異なる7歳下の弟が居る。


『あにうえっ、こんどは、いつあそべますかっ!?』



ふっくらとしたほっぺに、好奇心に目を輝かせた小さな可愛らしい少年が、俺の中の弟像だった。


幼い頃は只の仲の良い兄弟で居られたが、年を重ねる毎に第一王子と第二王子という俺らの関係は複雑になっていく。


俺も母も、何も望んでいないのに、周りがそれを許さない。

国王である父の寵愛を一身に受ける母は、日に日に笑わなくなっていった。



「私は、王位継承権を望みません」



色々とあった末──そうはっきりと父親に告げ、幼いアレクを残し城を飛び出たのは、アレクが十歳になるときだった。それから冒険者になり国内外に出向き、瘴気や竜について情報収集をしていた。


どの街に行っても、アレクのことが脳裏によぎり、渡すことはないとわかっている土産を買ってしまうのが癖になっていた。


『エドさまっ!!』


縁あって他国で瘴気の満ちた谷底に落とされそうになっていた所を助けた少女──ノルンは不思議な子だ。


少しの間共に旅をして、ラスティーノ王国に連れてきた。辛い幼少期を過ごした彼女には、幸せに生きて欲しいと願い、乳母の家に預けたのだが、弟の聖女召喚にすっかり巻き込まれてしまった。


ノルンを通じ、俺はまたアレクと過ごすこととなった。



『エドさま……。アレクシス殿下へのお土産、渡してくださいね。アレクシス殿下は拗ねてます……』


いったい何年前のことを覚えているのだろうと。

収納魔法の中にある、渡せなかった土産の存在を暴露され、心が乱れる。


アレクは欲しくないのではないか。

幼い頃に、自分を置いていった兄の土産など。



『ください。全部……』


『アレク……?』


『兄上が……選んでくださった物なら、なんでも……嬉しいですから』



照れくさそうに言うアレクに、今まであったわだかまりが解れていくのを感じた。

ノルンの力はすごい。

アレクも、俺も、素直にさせる。


頬を赤くさせ俯くアレクを見て──。

もう成人を迎えている弟なのに。

あの頃と変わらず……かわいいと破顔してしまった。




その後、王都へ戻ってきたところで、部屋一個分が埋もれてしまうほどの土産を渡し、アレクは目を丸くしていた。



「ごめんね、アレク。いらないものは捨ててしまって構わないから」


「……ありがとうございます」



異国の地で買った、変な顔の人形や、貝殻で出来た飾り。色とりどりの布でできたお守りなど……。現地で売られているときには、アレクが喜ぶに違いないと買ったものでも、冷静になって見ればかなりアレなものが多い。きっといらない物ばかりで困らせてしまっただろう。


申し訳ない気持ちでその場を後にしたのだけど──



「アレクシス殿下……趣味がかわったのかしら」


「今日は腰に怪しげな人形をぶら下げていましたね、あの人形は一体……」



メイド達がこそこそと話しているのが耳に入り、まさかっ!と息を呑む。


慌ててアレクの元へ向かうと──



アレクの腰には、異国で買った変な顔のぶら下げ人形がつけられていた。



「あ……アレク、その人形は……」


「……別に、兄上からのお土産だからつけているわけじゃ……、その、気に入ったので……」



照れくさそうに横を向くアレクに、何だか泣きそうになる。



『兄上っ、だいすきです、ずーっと一緒がいいですっ』



満面の笑みで抱きついてきたアレクの姿が脳裏で蘇り、ああ、自分はなんて幸せ者の兄なんだと心が温かくなった。



「そうか。それは……良かった」


「あ、兄上……涙ぐんでます……?」


「気のせいだ!さあ、行こう、アレク」



もう随分背丈の大きくなったアレクと肩を並べ、聖女宮へ向かうのだった──。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ