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7.では、アレク、頼んだよ



「わ、私ですか……?兄上──」


「マレンディール公爵令嬢はアレクへ熱を上げている。お前が適任だ。彼女の元へ通い、情報を集めて欲しい。そして、期を見て、『聖女・ポティ』の一行をマレンディール公爵家へと招くよう、マレンディール公爵令嬢に進言してほしい」


エド様の言葉に、アレクシス殿下は心底嫌そうな表情になる。それほどキャスリーン嬢のことが苦手なのだろう。


「わ、わかりました……」


「頼んだよ。マレンディール公爵家が闇に墜ちたとしたら、この国はかなり危ない状況になってしまうからね」


「闇に……墜ちる!?」


瘴気の中に家ごと落っこちてしまうのだろうか!?

それはかなり危険……。


「瘴気はなぜ発生すると思う?……瘴気は竜の体が腐敗したところから発生する。かの昔、竜と人が争いになり、人が勝った。竜の死体は散り散りになり、瘴気が発生した。それは歴史書にも記載されている。しかし人々を恐怖に落とさないために王族にしか、伝えられていない真実があるんだ。竜は死なない。体が腐っても復活する。人々の心の闇から力を得て、竜は復活する。復活しないように鎮めるのが浄化だ」



エド様の突拍子も無い言葉に、私はポカンとした。

竜……。

伝説の生き物だ。

竜を聖女と勇者一行が倒したのは絵本とか昔話で語られているからなんとなく知っては居たけど。


作り話かと思っていた。

まさか……。



「俺は国内の瘴気を調べてから、色々な国を旅して、いつかは復活するであろう竜を討伐する方法や瘴気を浄化する術を探していた。他国の歴史書や伝承を調べ、竜が復活するには人の心の闇が関わっていると導き出した。瘴気は人を闇へ導き、闇は竜を復活させる」


「心の闇……。マレンディール公爵家は……」


「闇に呑まれていなければいいのだけどね。令嬢の暴走ならまだ間に合うかもしれない。ゴンザレスくんに公爵家の聖物を浄化してもらえば、瘴気は抑えられるはずだ」


この国の三大公爵家のマレンディール公爵家も闇に呑まれ掛けているかも知れないなんて……。ゴクリと喉が鳴ってしまう。


こんなに重大な話を、メイドだった私が知って良かったのだろうか。もしも、本当に竜が復活してしまうのなら、国どころかこの世界が破滅してしまう大変なことだ。



「ダイジョーブ!ゴンザレス、ガンバルヨ!」



暗い雰囲気を払拭するようにゴンちゃんがニッコリと笑う。

そうだ。

私たちにはゴンちゃんがいる。

明るくて、頼もしくて、太陽みたいなゴンちゃん。



「うんっ!ゴンちゃん、私も一生懸命ゴンちゃんの力になるっ」


「ノルン、イッショニ、ガンバル!」


なんだか本当に大丈夫な気がしてきた。

『聖女・ポティ』として、出来ることをやるしかない。


「ありがとう。ゴンザレスくん、ノルン。リドディア殿にも感謝する。では、アレク、頼んだよ」


「はい。兄上」


こうして、私たちはもう一度マレンディール公爵家と対峙することとなったのだった。




◆◆◆



「ア、アレクシス殿下がわたくしに会いたいとっ……!もももちろん、喜んで了承いたしますわぁぁぁ!!!!」



キャスリーン嬢へ面会を申し込み、即刻了諾を得たアレクシス殿下は、毎日のようにマレンディール公爵家へ通うこととなった。


帰ってくる度にゲッソリしているけど。



「大丈夫ですか……?殿下」


「香水の匂いが鼻から離れん……。くそっ、なんであんなに強烈なんだ……」



疲れているらしい。


アレクシス殿下の尊い犠牲の上で、『聖女・ポティ』への嫌がらせはぴったりと静まった。地味に、不幸の手紙やら、不穏な噂を流されたりと、嫌がらせを受けていたけれども、犯人はやはり彼女だったのだろう。



王都では、ついにアレクシス殿下が婚約者をキャスリーン嬢に決めたのではないかと噂が広がっているみたいだ。



「お疲れ様、アレク。どうかな、マレンディール公爵家は」


「……手強いです。全く隙が無い。けれども、不思議なほどご当主を見かけませんね。そこが怪しいかと……。調べたいのに、明日は観劇に付き合わされる予定に……っ」


アレクシス殿下は力尽きたように項垂れた。あのキラキラオーラを出し続けるのはかなり疲れるのかも知れない。


「殿下……」


「お前は……眼が疲れなくていい……。変な匂いもしない……」



アレクシス殿下は私を見てそうポツリと言った。



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