2.ノルン、落ち込んでいるのか?
─00………?
「あ、あの……」
「ゼロ……。幼児でも10はあるが……」
しかもゼロの横に「-(マイナス)」の棒線があるような。
実質ゼロ以下ってことだろうか……。
微量の魔力は全員が持っていて、貴族や王族になると60から80は魔力数値があり、上限は100だと聞いたことがある。マイナスゼロの私は、幼児以下……。
「い、いや、おかしいですよねっ、だって私魔道具使えますもん。魔力が無いと使えないはず」
「……水晶の故障か?」
「まさかの100だったりして……」
「…………」
辺りがシーンと静まりかえった。何だか可哀想なものをみるような視線を感じるのは気のせいだろうか。
「まあ、もっと大きな水晶がある神殿でもう一度測定すればわかるかもしれない」
「はい……」
この水晶は王族専用だったらしい。ちなみにゴンちゃんは75で良い値が出た。私だけ何度手をかざしても……ゼロ。
こうして私の魔力測定は残念な結果に終わり、念のためまた神殿でもう一度測定してもらう予定となったのだった。
◆◆◆
「ノルン、落ち込んでいるのか?」
「い、いえ。聖女の力もなくって、魔力もゼロかもしれない私の良いところはなんでしょう……」
魔力測定後に項垂れる私を見て、アレクシス殿下は気遣うような視線を向ける。
「お前の良いところは──」
「ノルン!ミーコノマイ、オドル!?」
「い、今はちょっと踊れる元気がわかないの。ごめんね、ゴンちゃん。すみません、殿下、なにか言いかけました?」
「なんでもない!俺は水晶を返してくる!」
アレクシス殿下は足早に部屋から出て行ってしまった。なにか怒らせてしまったのだろうか!?それともポンコツな私に呆れてる……!?
はぁっとため息を吐くと、入れ替わりにエド様が部屋に入ってきた。
「どうしたの、ノルン。疲れた顔してるよ」
「エド様……実は……」
魔力測定の結果を話すと、エド様は考え込むように顎に手を当てる。考え込むような酷いポンコツなの!?私──!!
「早めに神殿で測定して貰ったほうがいいかもね。ノルンの魔力がゼロってことは有り得ない。オテダマンの爆発をこの目で見たからね。あの爆発の源がノルンの魔力ならば、かなりの魔力値のはず」
そうだ。魔力に反応して爆発するはずのオテダマンを使ったとき。
空一面を照らすほどの大爆発だったことを思い出す。
「希望は捨てないでノルン。大丈夫、万が一ノルンに魔力がなくても、ノルンはノルンだ。変わらないさ」
「……エド様の優しさが胸にしみます」
エド様は幼い頃と同じように私の頭を撫でてくれた。その手の温かさに、やさぐれていた心が丸くなっていく気がする。
そうだ。
まだ魔力がゼロって決まったわけじゃない。
落ち込むのは神殿で測定しても駄目だったときにしよう。
今できることをやるんだ。
「エド様っ、ミーコの舞、見てくださいっ!!ゴンちゃん、ごめんねっ、私も踊らせてっ!!」
「ワーイ!ノルン、イッショ、オドルっ!!」
私は青々と茂った葉っぱに手を伸ばした。
私たちのミーコの舞を見て、エド様はアレクシス殿下と同じように遠い目をしていたけれども、きっと気のせいだろう。
◆◆◆
ミーコの舞を極めきった頃。
『聖女・ポティ』へお茶会の招待状が届いた。
差出人を見て、アレクシス殿下とエド様は眉をひそめる。
その差出人は──
『キャスリーン・マレンディール』
と記載されていた。




