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5.兄上が好きなのか?



ピチャリ、ピチャリと顔に水滴が落ちてきて、ハッと目を開けた。


薄暗く、辺りを見渡すと岩肌が見え、天井は目視できないほど高く、湧き水があるのか水滴が上から落ちてきている。


遺跡に足を踏み入れたら、地割れに巻き込まれ、地下洞窟のような場所に落ちてしまったようだ。


ボーッとしながら手を挙げると、問題なく動かせた。あんなに落ちたのに、痛いところや怪我もなさそうだった。ゆっくりと身を起こすと、



「起きたか。よくもまあ寝ていられたな」


「きゃぁぁぁぁ!!!!」



すぐ近くで声がして、まさか人がいるとは思ってもみなかったので思いっきり吃驚してしまった。



「うるさい。全く、命の恩人を見て叫ぶなど、無礼者めっ」


「あああああアレクシス殿下!?」


「俺が咄嗟に抱きかかえて、魔法で衝撃を減らしながら落ちなかったら即死だっただろうな。心の底から感謝しろ」


エド様と一緒にいると猫を被ったように大人しかったアレクシス殿下の、いつもの口調を懐かしく思いながら、身を挺して守ってくれた事実を未だに処理できなかった。


危険を冒してアレクシス殿下が、私を助けてくれた?


落ちる瞬間のあの温かさは、アレクシス殿下の体温だったの?


「ええ?ああああああありがとうございます!!」


とにかく勢いで感謝の気持ちを伝えておいた。



「お前と居ると……緊張感がなくなる」


「そ、それは褒め言葉ですか?」


「そう聞こえたのか。ったく、その様子だと怪我は無いみたいだな」


なんと、心配までしてくれているようだ。

珍しいことが続きすぎて、実は目の前の殿下は偽物なのか説まで出てきてしまう。


「はい。怪我はないです。殿下は……?」


「この俺が魔法を使ったんだ!無事に決まっているだろう。……しかし、魔力切れだ。当分上までは上がれない」


この偉そうな感じ。本物のアレクシス殿下だ!と嬉しく思ったのも束の間で、やっぱり危機的状況らしい。



「水分が上から落ちてくるだけ……幸いだったでしょうか」


「飲めるか分からないがな。地下だから何か有毒な物質が含まれているかもしれん。おい、お前が先に毒味してみろ」


「うん。本物の殿下ですね。えー、さっき目覚めたときに口に入って飲んじゃいました。今特に何も起きてないので大丈夫ってことですね」


危機感なく上から降ってきた地下水をすでに口に入れていた私を、アレクシス殿下は呆れたように見つめていた。


「まー、動かないのが定石だろうな。兄上なら落ちた場所を把握して救出に向かってくれているはずだ」


「そうですね。待つしかなさそうですね。幸い瘴気も地下まで汚染していないようですし。エド様たちを信じましょう。エド様なら凄腕冒険者だし……大丈夫ですよ!」



うんうんと納得していると、アレクシス殿下は黙り込んでしまった。



「心配なんですか?大丈夫ですよ。昔一緒に旅をしていたときだって、どんな山でも谷でも乗り越えてましたから、エド様は!!すごく格好良かったんですよ」


幼い頃、ここよりも深い谷底に捨てられそうになった時。

エド様に助けて貰ったことを思い出す。

いつまで経っても忘れることができない。

大切な思い出だ。



思いを馳せていると、アレクシス殿下は私から視線を逸らした。



「お前は……兄上を慕っているのか……?」


「…………は?」


「婚約の話だって満更じゃなさそうだった。兄上が好きなのか?」




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