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3.じゃあ、前向きに考えるってことで



マネンディール公爵家……?ラスティーノ王国の三大公爵家のひとつであり、その家の令嬢は確か……アレクシス殿下の──



「……やはり、そうでしたか」


アレクシス殿下はエド様に頷き、想定内だったかのうように、驚くことはなかった。



「私が聖女と懇意にしているため、『聖女・ポティ』と第二王子が婚約するのではとの噂が広がっていると報告を受けた時から懸念していました。私の方もそれとなく探り、証拠までは掴めませんでしたが……」


「お前の婚約者に選定されるように、邪魔者は排除してやろうって魂胆だったのかもな」




『わたくしは未来の王太子妃ですのよ!?もっと傅きなさいっ!メイド風情がっ!!』



頭の天辺から発せられるような高らかな声が脳裏に蘇った。


マレンディール公爵家の令嬢であるキャスリーン嬢は、ピンクゴールドの美しい髪をクルクルと豪華に巻き上げ、濃い化粧に咽せかえすような香水の匂いをまき散らす……なんとも印象に残る方だった。


王宮に何度も足を運ぶ彼女は、アレクシス殿下の婚約者筆頭候補なのだけれども、その性格に癖がありすぎて、婚約者に確定せずに年月が経っているのではと先輩メイド達の噂にもよく上がるほど、かなり強烈なご令嬢である。


まさか、彼女が今回の誘拐事件に絡んでいるのだろうか。




「今回ノルンを攫ったヨシアの周辺も調べさせた。マネンディール公爵家と縁深い者が接触を図っており、誘拐の際にも手を貸していた。まあ、トカゲの尻尾切りのように実行犯だけ捕まり、マレンディール公爵家への追求はできないだろうけどね。十中八九、黒幕はマレンディール公爵令家だろう」


「……となると、今後も『聖女・ポティ』に危険が及びそうですね……」


アレクシス殿下は深いため息を吐いた。


キャスリーン嬢はアレクシス殿下を心から愛しており、愛故の暴走と言い張り今まで婚約者候補に上がった令嬢達は皆再起不能に追い込んでいるとも聞く。


今度の標的は『聖女・ポティ』になってしまったのかもしれない。


『聖女・ポティ』が誘拐事件に巻き込まれ、何らかの被害を受ければ、アレクシス殿下との婚約の話も無くなるという思惑があり、絶対に聖女が解決できないヨシアさんの件をぶつけてきたのだろうか。精神的に追い詰められたヨシアさんなら何かするかと思って──。


結果的にエド様に助けて貰ったからよかったけれども。

これが続くと思うと、少し恐ろしい気がした。



「厄介だね。三大公爵家のひとつである分、下手に動けないしね。もう、婚約してあげたら?長年アレクに片想いしているようだし……」


冗談ぽく言うエド様に、アレクシス殿下は絶望に近い表情で項垂れた。


「……それだけは……。彼女が妃になったらこの国が終わる未来しか見えません……」


「それも……そうだね。『聖女・ポティ』を彼女の家から守るには……。第一王子である俺と『聖女・ポティ』が婚約するっていう手もあるけど……」


「ええ!?」



突然こちらに矛先が向き驚きの声を上げてしまう。


エド様と……婚約!?

婚約って、結婚の約束をするってことだよね!?


エド様と……結婚……!?


真っ赤になってしまった私を見て、エド様はクスリと笑いを零し、アレクシス殿下は少し不機嫌そうな表情になる。



「あ、兄上にそこまでしていただくわけにはっ!」


「俺はノルンとは昔からの知り合いだし、構わないけど。ノルンはどう?」


「ええええええええええ!?こ、婚約は、私にはハードルが高いというか、不相応というか……。ゴ、ゴンちゃんも、ポティとして婚約なんてあれだよねぇ!?」


ゴンちゃんに助けを求めるが、『婚約』をあまり理解していなかったようで、



「ゴンザレスハ、サンセイヨ!」



とニコニコと言われてしまった。



「じゃあ、前向きに考えるってことで、一応対策案の一つとして考えておいて」



そう言って綺麗な顔で微笑むエド様は、善意で言ってくれているのだろうけど、私はキャパオーバーになり、そのまま話し合いは一旦終了になったのだった。




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