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1.なぜノルンが『聖女・ポティ』として巻き込まれているのかな?



まさか。まさかである。

未だに信じられないまま、転移門を潜らずエド様の秘密の隠れ家に案内され、五人でお茶を啜っている。


ここでは全ての会話は外部に漏れないよう色々な魔法がかけられているため、秘密をおしゃべりするには最適らしい。



「さて、突然の招待になってしまってすまなかったね。でも我々は色々と話さなければいけないみたいだ」


「そうですね……兄上。まず何故ノルンと一緒に居たのか教えていただきたい。ノルンの失踪に、兄上が……関わっていたのでしょうか」



張り詰めた空気を醸し出すアレクシス殿下に、エド様は首を横に振る。



「いいや。ノルンとは縁があってね、かなり前に出会っては居るけれども、この街で会ったのは偶然だ」


「そそそ、そうです!エド様は攫われた私が窓から飛び降りて逃げようとしたところを助けてくださったんです!!」


「はぁ!?窓から飛び降りるって、どーいう……!?ああ、尋ねたいことが山ほどあって何から訊けばいいのか……」


アレクシス殿下は疲れたような長いため息を吐いた。そんな姿を見てエド様は面白そうに笑いを零した。


「お前が感情を露わにするのは久しいな。兄として何だか嬉しく思うよ」


兄として──。


その言葉にやはり、エド様はアレクシス殿下のお兄さんで。ということは──


私の視線にエド様は頷いた。


「言い遅れて悪かったね、俺はエドワルド・ラスティーノ、この国の第一王子だ。訳あって身分を隠して冒険者として活動している。ノルン、今まで隠していてごめんね」


「もももも申し訳ありませんでした、殿下。知らなかったといえ、とんだ無礼を……っ!!」


かなり気安く接してしまっていたことに青ざめる。私の英雄はこの国の第一王子殿下だったという事実に、幼い頃からを含めとんでもなく不敬を働いてしまったのではと背中に嫌な汗が流れおちた。


「殿下だなんて、今まで通りにエドって呼んで。アレクが王位を継ぐまではスペアとして王籍に入ってはいるけど、実質は王位継承権は放棄しているようなもんだから。自由気ままな冒険者だと思ってて」


あっけらかんと言うエド様に私はポカンと口を開けてしまった。

私の命の恩人が、第一王子殿下だった。アレクシス殿下と王太子の座を巡って争っているはずなのに、王太子になるつもりはないとのニュアンスの言葉に驚きすぎて何も言葉が紡げない。



「っ……!!」



それに何故かアレクシス殿下が傷ついたような表情でエド様を見つめている。王太子になりたいのなら、エド様が王位継承権に興味がないことは良いことではないのだろうか。よくわからない関係性に更に頭が混乱していく。


「ああ、ノルンと俺の関係性も気になっているんだっけ?ノルンとは縁があってね、複雑な事情を持つ彼女を、乳母であるミーティル家に預け、ミーティルの名を名乗ってもらいながらメイドとして匿ってたんだけど、アレク。なぜノルンが『聖女・ポティ』として巻き込まれているのかな?」



そう。幼い頃にエド様に助けられた後、エド様の知り合いというミーティル家に預けられ、私はそこで教養を身につけさせてもらい、メイドとして王宮で働けるまでになった。本当にエド様には感謝しかない。


だから、そんなに怖い顔でアレクシス殿下を見つめなくても……。



「ノルンダケジャナイヨ!ノルント、ゴンザレスデ、ポティダヨ!!」



張り詰めた空気の中、ゴンちゃんが爆弾を投下する。

アレクシス殿下が隠したかったかもしれない、私とゴンちゃんで二人で一人で演じている『聖女・ポティ』のからくりがゴンちゃんによってバラされた瞬間だった。



「へぇ、そうなんだね。ね?アレク?」



ニッコリと微笑むエド様に、アレクシス殿下はきつく唇を結ぶ。頑なに話そうとしない殿下に、エド様は仕方ないね、と色つき眼鏡を外した。



「俺の能力は知っているだろう?隠しても無駄だ」


「…………っ」



エド様の能力……?

聞いたこともない情報にポカンとしていると、アレクシス殿下は観念したように短く息を吐いた。



「聖女召喚をしたら、隣の部屋に居たノルンが召喚されました。恐らく聖女の遺物である眼鏡に反応して召喚されたのだと思います。ノルンは聖女ではなかったので、再度召喚をさせたところ、聖女の力を持ったゴンザレスが召喚された。瘴気を浄化できるのはゴンザレスだけですが、『聖女』信仰が強い民が受け入れられるよう……ノルンを表に立たせ、ゴンザレスに力を使わせ、二人で一人の『聖女・ポティ』を作り出しました」


簡潔に今までの経緯を説明するアレクシス殿下にエド様は眉根を寄せた。



「聖女召喚は危険だと言ったはずだ。それなのに強行した挙げ句、我が国に関係の無い者を巻き込んで、危険な目に遭わせているという自覚はあるのか?」


「……はい。国民の為には、仕方が無い決断だったと、そう思っています。全ての責任は……私にあります」


今までの優しくて頼れる冒険者のエド様とは違って、第一王子としての厳しい表情をみせるエド様に少し背筋が寒くなる。それでも、全部自分が悪いという態度をとるアレクシス殿下を見ると体が勝手に動いていた。


「エド様……、私は巻き込まれて、危険な目にも遭いましたけど、それでも、今までよくしてくれたこの国の人達に、瘴気で苦しんでほしくない。私のこの忌み嫌われた容姿でも、役に立てるのならば……構わないと、そう思う心境くらいにはなってます!」



「ノルン……」


「ゴンザレスモ、マイニチ、タノシイヨ!!」



アレクシス殿下を庇うようにゴンちゃんと前に立つと、エド様が目を丸くした。


「まあ、私も乗りかかった船ですし、異論はありません」


シレッとリドディア様もこちら側についてくれた。三人とも、『聖女・ポティ』として、瘴気をどうにかしたいという思いは一緒だ。



「君たちの思いはわかった。ではアレク。この思いに応えられ覚悟はあるのか?」


「──はい。勿論です」



真剣な表情でそう言い切ったアレクシス殿下に、エド様は長いため息を吐いた。





「ならば、俺は『聖女・ポティ』を護る盾になる」







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