1.威力半端ないですよね
「まさか……第二王子が聖女召喚を成功させるとは思ってもみなかった……。どうせ失敗するだろうと、好きにやらせていたが……。こうなったら手段は選んでおれぬ」
「そうですな。強硬手段を使ってでも……聖女を手に入れないと……」
人気のない王宮の片隅で、怪しげな密談が行われていた頃──。
私はオテダマンの玉投げを習得していた。
「スゴイ、ノルン、ジョウズ!」
「ありがとう、ゴンちゃんのおかげだよ!!」
手りゅう弾のような玉は、魔力で爆発する魔法石だった。かなりの重さがあり、トレーニングを積まないと、狙った所へ投げるのは難しい。練習を頑張って良かった。
初代聖女様は、自由自在にこのオテダマンを操り、曲芸師のように相手を翻弄して攻撃したとの記載があったと、リドディア様から教えてもらった。
初代聖女様はもしかしたら、ゴンちゃんのようにマッチョだったのだろうか。
その他にも、大きな魔魚をつかまえて、カラカラに干し、その身を削り巨釜で茹でて成敗したとか(そのだし汁は美味しかったらしい)、腐った豆も平気で食べていたとか、信じられない伝記が残っており、さすがは異なる世界から召喚された本物の聖女様だ。やることが奇天烈すぎる。
「ノルン様……よく頑張られました!オテダマンは必ず携帯してくださいね。最近は不穏な噂を聞きますから……念のため威力倍増型のオテダマンをお渡ししておきます」
リドディア様が心配そうに零し、私は受け取ったオテダマンを空間収納機能がついた魔法のポシェットに収納しながら、首を傾げた。
「不穏な噂……ですか?」
「ええ。第一王子派が聖女ポティを取り込もうと暗躍しているようなのです。取り込めなければ消されてしまう危険もあります。怪しい奴が接触しようとしてきたら、オテダマンを遠慮なく使うようアレクシス殿下より言付かっています」
「威力半端ないですよね」
「責任は取って下さるそうです」
かなりの爆発力を有するオテダマンを使う時が来ないことを祈るのみである。
第一王子派と、第二王子派の争いはやはり加熱しているようだ。聖女ポティは、第二王子派にとって切り札と言える。だから奪ってしまおうと考えるのも当然だ。
しかし、聖女の力を有しているのが、護衛に扮しているゴンちゃんだとは誰も思うまい。だから、私を手に入れても何も得るものはないから、万が一何かあってもゴンちゃんさえ無事なら大丈夫だろう。
そんな呑気なことをこの時には考えていた。
まさか……。
まさか自分が簡単に誘拐されてしまうなんて、思っても見なかったのだ──。
◆◆◆
「聖女様、こちらに新作の苺ケーキを準備しています。いかがですか?」
「苺ケーキですか!?」
聖女宮の庭を散歩していると、見かけないメイドに声をかけられた。聖女宮にいるメイドだから、怪しい人では無いだろうとまんまと着いて行ったら、急に目の前が真っ暗になった。
そして気が付いたら──。
「ようこそ、聖女ポティ様」
怪しい屋敷に監禁されていた。




