7.いいですか、食べられるときに食べないと、一生後悔します
「頼め」
「は、はいっ!」
おしゃれなカフェに、この国の第二王子という高貴な方と一緒に入るという信じられない状況ではあるが、美味しそうなメニューを見ると、緊張も吹き飛んでしまう。
「ケーキセットと、マカロンと苺のチョコレートの盛り合わせをお願いしますっ!」
ここぞと頼む私と、紅茶のみの殿下。
色とりどりのデザートがテーブルに並べられ、私は食べることに集中しようと決めた。
「バカみたいに食うな……」
「甘いものは無限に入ります」
「そうか……。見てるだけで胸やけしそうだ」
甘いものは苦手らしい。優雅な所作で紅茶に口を付ける殿下は、座っているだけで令嬢達の視線を集めている。
変装しても美形は美形なのだ。
「……なんだ?」
「いえ、パフェも追加してもいいかなぁ……と」
「……早くしろ」
実は斜め前の席の人たちが食べていたパフェが気になって居た。思い切って言ってみて良かった。パフェを追加注文し、ホクホクとしていると、アレクシス殿下は深いため息を吐いた。
「お前は……女として終わっている」
「失礼ですね。まだ始まってもいないのに、終わらせないでください」
「こんな美形が前に座っているのに、平気でバカスカ食いやがって」
「いいですか、食べられるときに食べないと、一生後悔します」
最近まで胃痛に苦しんでいた私は、食べられる幸せを学んだのだ。胃腸の調子がいい今、甘いデザートは至福の味である。それに、よく美形を前にすると胸がときめいて食欲も無くなるというが、殿下もリドディア様も見慣れてしまった。殿下においては、性格の悪さも熟知している。
ときめきなんて皆無だ。
「お前は光に群がる蛾ではないんだな……」
「は?」
「頬袋に詰め込めるだけ詰め込む小動物だ」
良くわからないが、誉め言葉ではないことだけは感じ取った。ただ、いつもの険しい視線が少し呆れた様に和らいでいて。
こんな顔をするんだな……と、珍しく思った。
カフェを堪能した後は、ブラブラと街を巡り時間となった。馬車でゴンちゃん達と合流すると馬車の中には溢れるほどのお土産が積まれていた。
「マチ、タノシカッタ!イロンナモノ、カッテモラッタ!」
「手あたり次第興味を示されて……。あの、これ経費で落ちますよね?」
上機嫌なゴンちゃんと疲れ切った様子のリドディア様に、二人がどのように街で過ごしたのかが想像できてしまった。こうならないようにアレクシス殿下は逃げたのだと悟る。
「楽しめたようで良かったな。明日からはまた粉になるまで働いてもらうからな。わかったな!」
「ウン、マカセテ!コナ、ナル!!」
「……粉っ!?」
やはりアレクシス殿下は横暴だ。明日からの日程を恐ろしく思いつつ、やはり久々に街を巡れて肩の力が抜けた気がした。
やはり気分転換って大切なのだ。
ゴンちゃんとお土産を見せ合っている中──。
「殿下、やはり動きがあったようです」
「そうか……」
リドディア様とアレクシス殿下が意味深に話していたことなど、知る由も無かった。




