伝えたい想い⑥
──翌朝、アルロはロマの覚醒魔法によって叩き起された。
「あー……まだ耳が変だ。もっとマシな起こし方あるだろ」
「それで起きないのが悪い」
「7時の鐘が鳴ってから何度か起こしましたが……今日こそ、昨日くらい早起きしていただければ良かったんですけど」
「2日連続で不運が続くことの方が、俺は嫌ですね」
ロマとミアノと軽口をたたいていたら、だんだんと頭が冴えてきた。
辺りを見回すと、どうやら全員朝食を取っているところのようだ。
「アルロ、早くご飯食べちゃって下さい。王宮の人たちがもう少ししたら来るので」
レイがアルロの分の朝食を準備しながら言う。
「……伝言鳥が返ってきたんですか?」
「えぇ、今朝方に返事があったと聞きました。了承いただけたようで、このあと森へ魔石探しに出かけますよ」
エドアルドの言葉に返事をしながら、アルロは急いで朝食をとる。
アルロが朝食を食べ終え、あらかた支度が整った頃、本日魔石探しに出向く面々が集まった。
──思ったより大所帯だ。
まず、エドワード王子の代理として事の顛末を見届ける側近、森の民とのコミュニケーションを取るための通訳者、それに魔石探しに特化している探掘者が2名と、鑑石課数名、その他諸々……アルロたち管理課からの同行者も含めると、実に20人近くとなる。
当然管理課の部屋にはそのうち半分以下がおり、残りは外で待機している状態だ。
「『森の民』の少女は今回案内人として同行すると聞いていますが……あなた方の内同行者はいますか?」
「うちからは……そうですね、ロマさんとアルロさんにお願いしましょう。いいですね?」
「はい」
なんとなくそうなるであろうと予測はしていたので、エドアルドの決定にアルロとロマは応と答える。
通訳者がユリにも今後の動きを伝えてくれたので、彼女も特に慌てることなくおとなしくしている。
ある程度の準備が整ったところで、アルロたち捜索隊は図書館を出発した。
今日はこれからの動きもかんがみて、箒で向かう者と乗り合い絨毯で向かう者とに分かれた。アルロとロマ、ユリは乗り合い絨毯のほうに座った。
ユリは道中、街の景色が珍しいのか、空を飛んでいることが珍しいのか、ひたすら目を輝かせながらあたりを見回していた。昨日は乗り合い絨毯に乗るのを怖がっている節があったが、今日は怖がることなく乗っているので、アルロは少し安心した。
昨日の森へは、さほど時間もかからず到着した。
「さて、ここからは許可証を持った私と彼女が先頭を歩きます。はぐれないよう、注意お願いします」
殿下の側近の指示で、簡単に隊列を組む。アルロとロマの目的は、魔石を回収することなので、非常事態があったとしても対応要員には当てはまらない。そのため、隊の中列あたり、周りを専門家に囲まれた位置に並ぶこととなった。
「それでは、行きます。日の高いうちに見つかることを祈って」
側近の声とともに、一行は森の中へと入っていった。