ひつじがしひき
誰が歩かせた?
あはは、本当ごめん、想像を絶するかわいそさだから、僕には、発情するしかなくて……おかずにしてもいいかな。ここまできたらもう、おかずにされるくらい、どうってことないでしょ?……それともそういうのが一番嫌?私はこんな目にあってるのに、って、悔しい?言葉の響きとしても、おなにーってなんか可愛い気がするんだけどな。……あ、それとも単に、不細工なのが嫌かな、僕がこんななのが。それとも……寧ろ犯してほしい?その方が、もうどうでもいいって気がする?それともその方が、恨む相手がはっきりして楽になる?……どの道それは、言葉にできないよね。
どうにもならないって、悔しくて、腹立たしくて、怖いよね。……ごめんね、僕はそうならないようしてに生きてきたから……そうだね、君は生まれた時から、そうだったね。外を知ってしまって、可哀想。
本当にごめんね。……あはは……笑ってごめん、笑いたくはなかったんだけど、やっぱり誤魔化す癖が抜けない。……可哀想とは言いたくないし、だけどなんか謝るのも違うし……こんな時ばかりは英語が羨ましくなるね。Sorryって。
なんで僕はいつも、何もしてほしくないとは、考えられないんだろう。……それは、僕が寂しいから?
纏まらないのは君の素敵さに動揺してるからだね、あはは。支離滅裂で矛盾に塗れてるね。……でも、そのくらい、許してくれるよね?
彼を見捨てて軽やぐ足に、彼女は何を乗せるのだろう。
「何してるの?」
「いつ死のうか考えてる」
「あはは、それはまた、難しい問題だね」
白みがかった黒髪の、未だ幼さ残す可憐の君。従う彼女はその背中を、睡魔に似た誘いで包み、君より小さな背中を大人びて、いつも通りに抱かせてる。
「貴方はいつがいい?」
「私は君と違って乙女だから、待っているのがいんだ」
ある日彼女は子犬を拾った。君との楽しみを邪魔しない、ただ可愛がられて喜ぶだけの、酷く汚れた男の子を。
「何のために?」
「私に虐めてほしんだって。……可哀想でしょ?」
もう、捨てられない。初めから、誰が何故捨てたかなんて、考えなかった彼女には。
彼のお話を、彼のためにしてあげる。旅の途中の、彼のお話を。また、今度ね。
じゃあ僕が好かれたら?考えた事がありませんでした。そんな筈ないからって。だけど更に幼い頃は、多くに死を惜しまれたいと思って関わりを広げてました。だからそうなったら死ねるのかな。生きてって言われたら死にたくなるしね、あはは。
僕は偏屈者だから、世間の逆を行きたくなる。一人歩く僕を皆が避けて、それで其儘陽気に歩く幼い僕を想像して笑ってる。
殺したい、生かしたい、全部逆。だけど先生に言わせればそれが普通らしいです。じゃあなんで僕の隣りには誰もいないの?誰の隣りにも誰かなんて居ないのかもしれません。
死ぬのは迚も怖いです。嫌で嫌で、夜も眠れません。それはきっと僕が僕の死を惜しむから。僕だけは僕と同じ方を向いていたいんですね。
反対に進み続ければ真に一人になれると信じてるんでしょうか。それとも円の上を行って、何時か先頭が見えた頃、踵を返して僕が一番って顔をしたいんでしょうか。反対に流れるから速く感じる、そんな錯覚が欲しいだけかもしれませんね。
人は先を行こうとします。追い越す為?追い付かれない為?確かにそれも楽しいです。わくわくどきどきです。だけど皆がずっと先の方をより速く走ってたら?皆がずっと後ろの方でこっちなんて見もせずに立ち止まってたら?それでも陽気に歩いていられる貴方は誰よりも遠くにいるように感じます。迚も素敵です。貴方は一体何を見て何処を目指しているのでしょう。貴方に見蕩れる私は何時の間にか一人でした。