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苦手な方はご注意ください。

カミの翼

作者: 水飴屋

図書館が好きで、司書の勉強をしたことがります。そのころ生まれていたファンタジーに、いろんな要素を入れてボイコネに応募します。

0:序アリエス(出演・アリエス、アグニ、館長、ラーマ)

(シーン1-1)

アリエス:…物が焼ける、異様な匂い。

アリエス:その匂いと、自分を遠巻きにじっと見ている、怯えた顔…

アリエス:そこで僕は、またやってしまったのだと気が付く。

アリエス:僕の中には、魔物が棲んでいる。

アリエス:アグニ…また、やったのか…

アグニ:…やらなければ、延々とやられ続ける…だから、これは正当防衛だ。

アリエス:…ああ、また、ここを去らなくちゃならない。

アリエス:僕に居場所はない。いつも、こうして失敗する。

アグニ:あいつら、俺たちを見下してやがった。

アグニ:嫌がらせをしたり、陰口や嫌味を言ったり。

アグニ:挙句の果てには、追い出そうとしてた。

アグニ:だから、思い知らせてやった。…それの何が悪い?

アリエス:僕らは、産まれてくるべきじゃなかった。

アグニ:でも、母親の産道を焼いて、その命と引き換えに、俺たちは、生まれてきてしまった。

アリエス:生まれたからには、ちゃんと生きなくちゃと思った。

アグニ:生まれてきたことを、俺は憎んでる。

アリエス:アグニ、お前はどうして子供みたいな態度を取るんだ?

アグニ:アリエス、お前は、なぜ傷付けられてヘラヘラしてられる?

0:(シーン1-2)

アリエス:中央図書館長直々に僕には話なんて、一体、なんだろう…

アリエス:リコルド図書館からの移動?多分、ロクな話じゃないな…

アグニ:どんな館長か、見てみようじゃねぇか…

アリエス:やめろ!これ以上暴れたら、間違いなくクビだ!あああ〜!

館長:よっ、元気?

アグニ:オラッ、喰らえ!

0:(アリエス、館長に殴りかかる)

館長:っ、ッ!

0:(館長、避ける)

アグニ:…避けやがった…。

アリエス:わぁあ!すみません、すみません!僕の仕業じゃないんです…!

館長:ン〜、…なんだろうな…君の第一印象は…キライだ!

アリエス:え〜!?そんなぁ!?

館長:大事なことなのでもう一度言う。僕は、君が、キライだ。

アリエス:…それを言うためだけに、僕を呼んだんですか…⁇

館長:違う違う、おぬし、ちとズレとるのう…君に、「フリューゲル」への移動を命令するためだよ。

アリエス:フリューゲル…?古代の言葉で、:翼ですか…?

館長:ああ。よく知ってるね。簡単に言えば、移動する図書館だ。

アリエス:ああ、…移動図書館…僕がおばあちゃんと暮らしてた頃、よく、村に来てたっけ。…知ってます。

アリエス:みんな、黒いコートみたいな制服を着てて…礼儀正しかった…

館長:君、中央図書館で急に暴れ出して、地方のリコルド図書館に移動になったんだって?

アリエス:はい…

館長:そこでも、また暴れたらしいね?

アリエス:僕じゃなくて…!いや、…はい、そうです。

館長:君、:呪いの子なんだって?

アリエス:…それを隠して書の司になったことは、謝ります。でも、そうしなければ、僕に書の司になれる可能性なんか、なかった…

館長:なるほどね…そこでだ、アリエス・オイリオン君、君が暴れたぐらいでは壊れない図書館に、移動してもらいたい!

アリエス:…もしかして、それが、フリューゲルですか?

アリエス:…あの〜、最初に入団した時、そんな移動図書館があるなんて聞いてないんですが…

館長:言ってないからね。フリューゲルは、…簡単に言えば、人材の墓場だ!

館長:どうしようもない書の司が、最後に行き着く、危険な図書館だ!

館長:連中が行く道は、狼の群れや盗賊、さらには魔物まで出る!

館長:そんな、帝国正規軍が行きそうもないような辺境の村や町に、本を届けるのが仕事だ。

館長:…任務を全うするには、命の危険すらある。…だが、意義のある仕事だ!

館長:…まぁ、つまりは左遷だけどネ。

アグニ:魔物と、闘えんのか!?

アリエス:わっ、アグニやめろって!

アグニ:やってやるよ…!人間相手はもう、飽き飽きしてたんだ。

アリエス:やりません!危ないこと、嫌いなんです!

アグニ:やる!

アリエス:やらない!

アグニ:やる!

アリエス:やらない!

館長:で、どっちなの?これを逃したら、もう君が書の司になれることはないと思うけど。

館長:…アリエス、君は、貴族の養子なんだろ?なぜ、書の司になることを選んだ?

館長:もっと楽な道もあったろうに…

館長:それは、君が図書館を愛しているからじゃないのか…?

アリエス:…確かに、おばあちゃんが亡くなってから、養子に出されて

アリエス:…両親が好きなだけ本を読ませてくれたことには、感謝してる。

アリエス:…呪いの子である僕にも、優しくしてくれた。

アリエス:…でも、僕は自分の力で生きていきたいんだ!

アリエス:もう、ケーキとぬいぐるみがいつも置いてある、あの部屋に戻りたくない!

館長:なら、わかってるんだろ。フリューゲルで、書の司を、やれるんだな?

アリエス:ッ!…やる。やります!

館長:…宜しい。明日、フィン・ナイチンゲール団長が、君を迎えにくる。

館長:…おめでとう!晴れて君もフリューゲルの一員だ!

アリエス:祝っていいんだか…フリューゲルって、人材の墓場なんでしょ?

館長:でも、僕は、フリューゲル出身の呪いの子が、中央図書館に返り咲いた例を知っているからね。館長:それに、君は、魔物なんか怖くないだろ?

アリエス:僕は、怖いんですよ!…いえ、そうですね。わかりました。

アリエス:祝って下さって、ありがとうございます。

0:(1-3)

館長:頑張れよ、アリエス、…

ラーマ:ジルバー、お前も呪いの子だと、言わなくてよかったのか?

ラーマ:お前こそが、(オレ)を御し、館長にまで上り詰めた呪いの子だと。

館長:ラーマ、それを言って何になる?障害を乗り越えるのは、僕じゃない。あの子だよ。


0:2アム(フィン、アリエス、シャーラ、サーレフ、アム)

フィン:お前がアリエス・オイリオンか?

アリエス:はい。…アリエスとお呼びください、団長。

フィン:そして、お前がシャーラ・ド・アンデルか?

シャーラ:はい。(わたくし)が、アンデル村の、シャーラです。

フィン:…お前たちを今からフリューゲルの(みな)に引き合わせる。

アリエス:承知しました。

0:間

サーレフ:戻ったのですか、団長。

フィン:ああ…みなを集めろ。新人二人のお出ました。

0:間

アム:貴方が、貴族様のアリエス様ですか?

アリエス:そうですけど。

アム:へぇ〜、すっごい〜!お気軽に、アムと読んでください、うふっ♡

フィン:アム、アリエスは、呪いの子だ。

アム:(さっきまでと態度を180度変えて)…ああ〜、貴族の養子か…家を継ぐ資格も、分けられた財産もない、ただのペットか…

アム:…アンタ、私に近寄らないでね、ウザイから。

アリエス:なんなんだ、この子。可愛いけど、話し方に全く可愛げがないぞ!


2サーレフ(サーレフ、アリエス、シャーラ、ポカラ、アグニ)

サーレフ:サーレフ・ラーゲルレーヴだ。

アリエス:サーレフ…あまり聞きなれないお名前ですね。それに、肌の色も、僕と違う

アリエス:…貴方は、外国の方ですか?

アリエス:私は、風の民の族長の息子だ。

シャーラ:ええ。古代ラフカディオ王国を築いた、勇敢な騎馬民族であると。

アリエス:伝説では、古代ラフカディオ・ハーン15世は、ある日、突然に国王をやめると宣言して、あなたたちは、ただ風の民と名乗り、色々な地に散ったと、本にありました。

サーレフ:よく調べている。…私は、ユグド共和国の近くに位置する部族の長の息子だ

サーレフ:…まぁ、体が弱く、馬にすら乗れない、風の民のできそこないさ。…

ポカラ:サーレフ様、できそこない、ない。

アグニ:気配がしなかった…!誰だ⁉

サーレフ:私の護衛のポカラだ。ラーダ、ポカラ(下がっていいぞ、ポカラ)

アリエス:消えた…

アグニ:消えたり現れたりするな!

サーレフ:あの子は、ユグド語はあまり上手くないんだが…戦の天才だ。

サーレフ:私は、あの子がいなかったら何回死んでも足りないくらいだ。

アリエス:サーレフさんは、この図書館で何をされているのですか。

サーレフ:システム魔法の整備だ。君は、魔法を見たことは?

アリエス:あまりありません。僕は、書の司の学校を出ただけですから。

サーレフ:では、今度見せてあげよう。…魔法は、なかなか面白いぞ。


3シャーラ(アリエス、オーガスタス、シャーラ、アグニ)

アリエス:初めまして…あの、貴方は?

オーガスタス:オーガスタス・ラーゲルレーヴだ。もう、書の司をやって二十年になる。

アリエス:ラーゲルレーヴさんってことは、サーレフさんと…

オーガスタス:親子だよ。義理の、だけれどな。私はかつて、共和国騎士団にいた。

オーガスタス:しかし、この通り。…こっちも、義理さ、右脚は。

アリエス:…義足ですか…

シャーラ:確か、騎士団は、退職年金で暮らしていけるはず…

オーガスタス:私は、図書が好きでな。騎士の一族でなかったら、書の司になりたかった

オーガスタス…それで志願して、老後の楽しみにやっとるわけさ。

オーガスタス:…書の司としては未熟だが…魔物討伐は任せろ。

シャーラ:オーガスタス・ラーゲルレーヴといえば、偉人伝にも載っている、あの…?

オーガスタス:流石は書の司の大学を主席で出たシャーラくんだな、世の中を知っている。

シャーラ:アンデル村のシャーラとお見知り置き下さい。…いずれ、図書館長となる者ですから…

アグニ:よくわかんねーけど、オーガスタスって強ぇ奴ってことか…?戦うぞ!アリエス!

アリエス:バカ!そんな真似すんなよ!

シャーラ:(勘違いして、突然訛りバリバリにキレ始める)はぁ!?なんですか?

シャーラ:オラはバカじゃね!この、スッダラケが!!

オーガスタス:シャーラくん、落ち着いて。アリエス君は、確か、呪いの子だね?

オーガスタス:シャーラ君も、呪いの子について本で読んだことはないかい?

シャーラ:ありますけど、…それが人を馬鹿呼ばわりしていい理由になりますか?

アリエス:ごめんなさい!シャーラさんに言った訳じゃなくて…

アグニ:なんなんだよ、この青二才は!叩きのめすぜ!

アリエス:やめろ!

シャーラ:なんだとぅ、このアンデル村のシャーラを怒らせて、覚悟はでぎでんだろぉな、スッダラケ!?

オーガスタス:あはは…なるほど、…

オーガスタス:図書館大学を主席で出たものの、周囲に馴染めずやってきたエリート、シャーラくんと、呪いの子アリエス君ね

オーガスタス:…全く、問題児ばかりだな、ウチの図書館は。…


4フィン(フィン、アリエス、サーレフ、アグニ、シャーラ)

0:(4-1)

フィン:おい、新人。本を汚したり破いたりするなよ。そうしたら、キサマの指を折る。

アリエス:え…!?ちょっと厳し過ぎるんじゃ…

サーレフ:団長のお考えだ。痛みによって、人は学ぶ

アリエス:とか言っても、厳し過ぎるんじゃ…

アグニ:アリエス、俺があいつをぶちのめしてやろうか?

アリエス:やめろ、アグニ!

フィン:新人、さっきから、ブツブツ小煩いぞ。

シャーラ:まぁ、要は、本を丁寧に扱えばいいということでしょう?私には簡単ですね。

シャーラ:なんと言っても、私は、アンデル村の秀才、シャーラですから!

アリエス:アグニ!絶対本を破るなよ!?

アグニ:破ってみようぜ!で、あいつと戦うんだ!多分、つえーぞ!

アリエス:やめっ!…やばい、乗っ取られる…!

アグニ:オラッ!戦うぞ

サーレフ:やめろっ!死ぬぞ!

シャーラ:ああっ、本が…

アグニ:ははは…!破ってやった…どうだ?人間。今どんな気持ちなんだ?

アグニ:…ん?どういう表情だ?それは。

フィン:…お前はアリエスではないな?アリエスに免じて…折るのは足の指にしておいてやる。

サーレフ:団長、どうか、抑えて…

フィン:一番効く躾は、痛みだ。新人の「中」の奴には、そいつが必要らしい。

サーレフ:(止められないと悟り、絶望して)…ああ…

アグニ:行くぞ!

フィン:…

0:(間)

アグニ:くそ…ッ

フィン:…

アグニ:調子に乗るなよぉ!人間!アリエスが止めなければ、俺はもっと…うぐぅ!

フィン:うるさいガキだ。…ただ、手筋は、悪くなかった。…

アグニ:…クソ野郎が…ギャッ!

フィン:団長。

アグニ:クソ…ぎゃあっ!!

フィン:だ・ん・ちょ・う。

アグニ:…だん、ちょう…

フィン:お前、名は?

アグニ:…。…アグニ。アリエスにはそう呼ばれてる…古き悪魔の名前らしい。

フィン:アグニ。お前も、オレたちは受け入れる。

フィン:フリューゲルの一員として、魔物討伐の稽古を付けてやる。

シャーラ:えっ?団長直々にですか?くそ!なんでアリエスばっかり!キーッ!

アグニ:…俺に仲間である魔物を討伐しろと…?

フィン:そもそも、仲間意識が魔物にあるのか?

アグニ:いや、ぶっちゃけねぇよ。だが、お前に従うのは(イヤに決まってんだろ)

フィン:(被せて)…次は左足行くか?

アグニ:…わかったよ。わーりました!

フィン:…それでいい。アグニ、普段は、アリエスに体を返しておけ。

アグニ:わかった…だが、覚えておけ。俺は、お前をいつか必ず倒す。隙を見つけたら、必ずな…

アリエス:ん…ぎゃあああ⁉痛い!?右足が?痛い!なんで…!?

フィン:すまないな、アリエス。…お前も、痛みで魔物の操り方を覚えろ。

フィン:…さっきのはまだ替えの効く本だったからこの程度だったが…

フィン:今度あの魔物を好きにさせたら、歯がなくなると思え。

アリエス:はいぃ!?歯?歯って、あの、歯ですか?

アリエス:…お願いだからやめてください!アグニは、僕の手に負えないんです!

フィン:できないとか仕方ないとか抜かすな。そういう奴は、フリューゲルにいたら死ぬぞ

サーレフ:…団長は厳し過ぎるとは思うが、…団長のおっしゃることも一理ある

サーレフ:…フリューゲルは、絶えず魔物や盗賊、自然の脅威と戦い続ける組織だ。

サーレフ:…アリエス、出来るだけ自分を管理できるように。

アリエス:それがムリだから、そう言ってるのに…

フィン:…自分の中の魔物と、対話しろ。オレは、お前意外にも呪いの子を見たことがある。あいつは、そうしていた。…

アリエス:対話?…お言葉ですが、ムリです、団長。アグニは、…ヤツは、僕の話なんか聴きません!

フィン:お前が話すのじゃない。お前は、聴くんだ。…いざとなれば、俺がヤツとは話を付ける。

アリエス:…(半信半疑で)わかりました。

アリエス:でも、出来るだけ、僕の体を虐待するのは、やめてくださいね?

フィン:…善処しよう。

0:(4-2)

サーレフ:アリエス、足の痛みを治してあげよう

アリエス:…ありがとうございます、サーレフさん。

サーレフ:(呪文)ノィンツェル・ラーダ・パレガ・カーム(痛みよ、去れ、平穏よ、来い)。

アリエス:痛く…ない?

サーレフ:治ったわけではない。痛みを取っただけだ。…添え木をしてやるから、じっとしていなさい。

アリエス:はい。

サーレフ:…酷いと思うか?団長のこと。

アリエス:…どうでしょう。鉄拳制裁は野蛮かなと思います。けれど

アリエス:…あの人は…僕の中のアグニを、認めてくれた。

アリエス:…今まであった人は、アグニと話してなんかくれなかった…

サーレフ:…お前も、そうだったのではないか?呪いの子は、魔物とヒトの魂を持つ

サーレフ:…お前は、魔物と話したのか…?

アリエス:…ヤツに話が通じるわけ、ありませんよ。僕を馬鹿にしてるんだ

アリエス:…ただ、本を読むときだけは、大人しくしていてくれる。だから、僕は本が好きなんです。

サーレフ:そうか…お前も、私と同じか…本に救われている。…

アリエス:サーレフさんもなんですか?

サーレフ:私は、風の民に生まれながら、馬にも乗れない。族長の息子だというのにな。

サーレフ:ユグドに来たのは、人質としてだ。

アリエス:ああ、二十年前の内乱で…。…

サーレフ:私は、弟に、族長の権利を譲った。…私は…生まれつきの、…外れ者だ。

サーレフ:読書をし、ユグドについて学ぶ…それしか、私が厄介者扱いされずに生きる(すべ)は、なかった。

サーレフ:…私は、フリューゲル行きを自ら志願した。

アリエス:…

サーレフ:強き者がこの世を制するのは道理。だが、言葉は弱き者の武器になる。

サーレフ:風の民が生き残るには、本が必要だと思う。風の民にも、図書を広めたい。

サーレフ:…それが族長の息子としてできる、最善のことだと、私は思う。


0:5ディック(ディック・アム、フィン)

ディック:ねぇ

アム:はいはい、どうしましたか

ディック:これ、どう思う…?

アム:なに…?

0:(ディック、男性器を描いた絵をアムに見せる)

アム:きゃー!

ディック:キミ、可愛いね。オデ、キミ、すき。

アム:なに…!?なんなん、ですか!?

ディック:(名札を読みながら)キミ、アム・スト、リンド、ベリっていうの?…オデ、アム、すき。

フィン:おい!うちの図書館員に手を出すなら、オレは容赦せんぞ…?

ディック:ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!

アム:アタシの時と、態度が全然ちがう!団長、コイツ、やっちゃってください!

フィン:…こういう奴に、狙われる側にもスキがある、と、オレは思うぞ…

アム:そう、ですか…?

ディック:ゴメンナサイ!ゴメンナサイ!オデ、アムがキレイだったから

ディック:、…家族に言わないで!また、殴られる。…

フィン(ディックに):…お前、いつもは何をしている?

ディック:オデ、本を読みます。本の中、全部キレイ。

ディック:本の中、全部優しい。本の中、オデは騎士様。本の中の姫様、オデに優しくしてくれる。

フィン:そうではなくて、…仕事は?

ディック:オデ、仕事できない。オデ、家族のお荷物。だから、家族、オデ殴る。

フィン:学校は行ったことがあるか?

ディック:学校のみんな、オデを気持ち悪いって言う。オデ、学校はキライです。

フィン:…お前、本は好きか?

ディック:オデ、本すき。女の子は、もっとすき。

フィン:…

フィン:…お前をここで雇うと言ったら、嬉しいか?

アム:団長!何言ってるんですか⁉︎コイツはヘンタイですよ⁉︎

ディック:…オデ、働いたこと、ない。…こんなオデでも、働かせてくれる…?

フィン:…掃除を任せようか。やれそうか?

ディック:掃除?オデ、掃除すき!家族の中で、掃除、オデの仕事!

ディック:掃除、スッキリする!掃除、ココロのよごれ、消してくれる。…

フィン:…お前は、はっきり言って頭が悪いし、衝動がすぐ出てしまうが、…多分、悪いやつではないと思う。

フィン:…お前の名前は?

ディック:オデ、ディックと言います。

フィン:わかった、ディック。…一つだけ約束しろ。アムにかまうな。

ディック:え〜。…ショボンヌ…わかりました。オデ、アムにかまわない。

フィン:お前を雇う手続きをしてやろう。

フィン:ただし、ちょっとでもアムにちょっかいをかけたら、お前を雇うのはやめる。

ディック:オデ、働いたことない!働くと、オンナのハダカの絵とか、すきなもの買える!

ディック:オデ、働くの嬉しいです、ありがとう!

アム:ちょっと!団長とは言え、許せません。アタシは、アイツにイヤな思いをさせられたんですよ!?

アム:なんで、あんな奴、団に入れるんですか⁇

フィン:あんな奴だからだ。いいか、オレ達は、みんなが外れ者だ。そこに階級はない。

フィン:…オレだって、館長にあの都市の地下から連れ出してもらわなければ、多分ロクでもない人生を送っていたろう。

フィン:…オレはな、アム、ディックの可能性を信じたい。

アム:…わ・か・り・ま・し・た!

フィン:…でも、ディックに私と一緒の仕事をさせないで下さいね!ぜっっったいですよ!


0:6ジャスパー(ジャスパ、ーシータ)

ジャスパー:何故(なにゆえ)に、この世に悪は栄えるのか?答えは、ヒトがいるからだ!

ジャスパー::聴き給え、女神よ!ワタシは、かつては敬虔な聖教徒だった!

ジャスパー:貧しき者に施しを与え、病に侵された人に手当てをした。

ジャスパー:しかし、ヒトはヒトと殺し合い、奪い合い、貶め合う!ワタシは、ヒトに絶望した!

ジャスパー:ジャスパー・ターラスの名に於いて、黒の女神を、召喚する!

ジャスパー:千人の幼児の生き血、百万人の処女(おとめ)の心臓、そうして、四万の青年の目玉を供物として、今、この世界に、黒の女神を呼び寄せん!

シータ:…ワラワを呼んだのは、貴様か?虫ケラ

ジャスパー:左様にございます、闇の女王よ。

シータ:大儀なことよ。妾を、殺すつもりか?虫ケラ。

ジャスパー:とんでもございません。…ワタシは、元ユグド帝国の聖騎士団長でございます。

ジャスパー:しかし、革命に敗れたユグド帝国は破壊され、ワタシの家族は…!

ジャスパー:泥を啜り、地を這って帰った我が家は、燃やされておりました。

ジャスパー:ワタシは思いました。身を挺して!人民を守ってきた報いが、これなのかと!

ジャスパー:ならば、ワタシは何のために戦ってきた…美しい妻、可愛かった子供たち

ジャスパー:…一番幼かったターシャは、まだ5歳だった…

ジャスパー:家族は、惨たらしく殺された…ワタシが護っていたはずの、その人民によって!

ジャスパー:…ワタシは、死のうと思った。しかし、不公平だと思った。

ジャスパー:…ワタシが、ワタシたちだけが、不幸を被るとは…

ジャスパー:聞こえているか!白の女神よ!

ジャスパー:お前の作った世界は、欺瞞と、不平等に溢れた、醜い世の中だ!

ジャスパー:今から、ワタシが平等にしてやる!

ジャスパー:皆が平等に魔物を恐れ、滅んでゆく、そんな地獄をワタシがくれてやる!

ジャスパー:そのために、あらゆる書物を調べ、禁忌の術を知った。そのためだけに生きてきた!

ジャスパー:そのためだけに、ワタシは書の司となり、夜な夜な人を殺したのだ!

シータ:…五月蝿うるさい虫ケラだな。御託はもういい。…最後の捧げ物を、寄越せ。

ジャスパー:最後の捧げ物は…絶望しきった人間の、命でございます。

ジャスパー:…どうか、私めの命を受け取り、我が野望、叶えて下さいませ

ジャスパー:…この世に滅亡と恐怖を、ワタシが体験したものと同じ…絶望を…

シータ:…受け取ってやろう…

ジャスパー:あ、なた、の…お名前、は、シータ、で、す…

ジャスパー:風、の、民が、…げふ、…信仰、していた、と、いう…破壊の、女神…

シータ:…ほう…虫ケラにしては気が利くではないか。よかろう。

シータ:…虫ケラとは言え、この世界の民。その願いを聴き入れるが、神の在り方。

シータ:…我が名はシータ。闇の女神の化身にして、魔物たちの女王!

シータ:我が小賢(こざか)しき妹が作りし、この世界、我が手で滅ぼしてくれようぞ!


7アリエスとシャーラ(アリエス、アグニ、シャーラ、フィン、サーレフ)

0:(7-1)

フィン:…今から、お前の強化を始めるが…覚悟はいいな?

アリエス:…はい。

アグニ:…どさくさに紛れてぶっ倒してやる!

シャーラ:団長、まずは、アリエスは私に勝てるようにしないと、団長に勝てるはずもないと思います。…

シャーラ:まず、アリエスは私にお任せ下さい。

フィン:…そうだな。では、任せたぞ、シャーラ。

シャーラ:…ふっふっふ。…これでオラとお前だけだなぁ!?アリエス。

シャーラ:ズーっとお前は、気に入らなかったんだべ!

シャーラ:フリューゲルに居られなくなるくらい痛め付けてやる!このスッダラケが!

アリエス:ま、待ってください!僕、あなたと仲良くしたいです。

アリエス:…同期なんて、今までいなかったから…

アグニ:言ってる場合か!来るぞ…!

シャーラ: 蒼氷剣そうひょうけん・キルヒアイス・解放!

アリエス:(剣で受け止めながら)レイピア…?

シャーラ:ええ、私が開発した魔法剣、キルヒアイス…

シャーラ:この剣は、氷の魔法を込めた、私の大切な相棒…

アグニ:アリエス、当たるな!当たったら凍るぞ。

アグニ:人間にしちゃ、とんでもねぇ魔力だ…

シャーラ:魔物から剥ぎ取った素材で強化してますからねぇ!…

シャーラ:この、アンデル村のシャーラをバカ呼ばわりしたこと、後悔させてやりますよ!

アリエス:…すごい…!

アリエス:わかりました。こちら全力でお相手します。

アグニ: ハッ!アリエス、お前も割と戦闘狂じゃねぇか!俺の力、貸してやる!

アリエス:はっ!

シャーラ:(飛び退って)おっ、と…突っ込んでくる戦闘スタイルでしたか。

シャーラ:…しかも、辺りを炎で薙ぎ払いながら…ねぇ。

シャーラ:やっぱり、お前は魔物だ。

アリエス:ち、違う!僕はただ、あなたに認めてほしくて…!

アグニ:来るぞ!

シャーラ:…その魔力、惜しいくらいですが…

シャーラ:こちらも、伊達にアンデル村の看板を背負ってるわけじゃないのでねッ!

アリエス:(攻撃を受け)アッ!

アリエス:まずい…突かれたところから、麻痺が広がる…右腿が痺れて動かない。

アリエス:レイピアは僕と同じ突っ込んでくるスタイル…

アリエス:足が動かないのではどうしようも…

シャーラ:…本気で来い、スッダラケ。

アリエス:…

シャーラ:お前は何なんだ?またもや私をバカにするのか?

シャーラ:呪いの子は、半分は魔物だろう?ならばなぜ、その力を使わない。

アリエス:シャーラさんを、傷付けたくはない。

シャーラ:その目だ!それが、気にいらない!上手うわてから私を見るな!

シャーラ:私はアンデル村のシャーラ!魔物なんかに、遅れは取らない!

シャーラ:本気で掛かってこい!対等に戦え!魔物であることすら、利用しろ!

シャーラ:私に認めて欲しければ、私を殺すつもりで来い!

アリエス:…わかりました…

アリエス:僕は、対魔物式の攻撃しか知りません。

アリエス:それをぶつけることであなたに認めてもらえるなら、…

アリエス:行きますよ!

アリエス:対魔剣術・焔の角:(フォーティア・ケーロス)!

0:(7-2)

アグニ:待て!魔物だ!

アリエス:え?

シャーラ:ぐあっ!

アリエス:シャーラさん?

アグニ:アリエス逃げろ!この辺じゃ見かけない魔物だ!今の俺たちじゃ勝てない!

アリエス:シャーラさんはどうするんだよ!?

アグニ:しょうがない。…アイツはもう、ダメだ。

シャーラ:キルヒアイス…!くそ、目が見えねぇ!

アリエス:…

アリエス:(カサルティリオ・ケーロス)!

アリエス:シャーラさん!今のうちに逃げて!

アグニ:お、おい!?何やってんだよ!?

シャーラ:アリエス…?

アグニ:今の俺たちじゃかかなうわけねぇだろ!?さっき、右腿をやられてる!

アグニ:動けなくなるんだぞ⁉分かってんのか?

アリエス:うるせぇぇ!喋る暇があったら、頭使わせろ!

シャーラ:…あった…キルヒアイス…!

アグニ:オイ、シャーラが逃げてくぞ!

アリエス:…えっ

アグニ:だから言ったろ!人間なんか信頼しても、裏切られて終わりだって。

アグニ:あーあ、バカだな。俺たち。

アリエス:ぐああっ!!

アグニ:もうダメだ…死んだな…

アリエス: 対魔剣術…煉獄の角(カサルティリオ、…・ケーロス)

アリエス:死ぬまで闘う!だって、生まれちゃったんだから!死ぬまでは生きる!

アグニ:…お前らしいな…

アグニ:おっ?凍り状態を解除出来そうだぞ?

アリエス:でも、逃げるしかないな。

アリエス:皆のところまで、逃げるぞ!

シャーラ:間に合った!

フィン:アリエス、よく闘った!後は任せろ。

アリエス:団、長…

サーレフ:さ、手当てを…キ・パーダ(血よ止まれ)パレガ・カーム

サーレフ:酷い…魔物を半分宿した呪いの子でなければ、喋ることもできないだろう。

シャーラ:でも、コイツには、わたしたちじゃ敵わないのはわかっていたので…

サーレフ:シャーラ君は、アリエスが呪いの子だと分かっていたから、置き去りにして助けを呼びにきたんだね…?

シャーラ:(図星である)…ち、ッ、…違いますよ!私は、別にアリエスがどうなったっていいんです。

シャーラ:ただ、私のせいで死んだら、寝覚めが悪いですからね…!

アリエス:シャーラさん、…ありがとう。

アリエス:シャーラさんの機転がなかったら、二人とも死んでたかも知れない…

シャーラ:…お前のさん付けはきもちわるいんですよ。

アリエス:アンデル村の、シャーラ…?

シャーラ:ただのシャーラでいいですよ。…

サーレフ:それにしても、最近、魔物の様子がおかしい…ひどく、嫌な予感がする…

フィン:ああ。…お前たち、あと四刻、オレと訓練だ…急いでお前たちを強くしなければならない。

アリエス:4刻ッ!?

アグニ:こいつ、頭狂ってる!

シャーラ:承知しましたッ!

アグニ:マジかよ


0:8シータ(シータ、ベンジャー、カラメリ、ガラゴ)

シータ:我が闇の女王の名のもとに命ずる。ベンジャー、カラメリ、ガラゴ。

シータ:お前たちは、これよりこの魔物の地から、人間の地を侵略し、恐怖を知らしめよ。

ベンジャー:はっ、愚かしい人間どもに、恐怖を。

ベンジャー:だが、俺は優しい。上手くできるだろうか。

カラメリ:わかったよ、ママ。いっぱい壊して遊べばいいんでしょう?

カラメリ:ボク、それぐらい簡単にできるよ!

ガラゴ:女王よ、あなたは強い。故に、美しい。

ガラゴ:俺はあなたに従うのみだ。


0:9ディックとアム(ディック、アム)

ディック:オデ…アムすきだ。

アム:話しかけないでよ…!団長に言うわよ

ディック:やめて!オデ、ふりゅーげる、いなくなったら、居場所、ない。

アム:…

アム:…すきって言われてもねぇ…アンタの言ってるすきって、もっと言うと、つまりどういうこと?

ディック:オデ、…アムと、…したい!草むらで!

アム:はぁ!?いきなりそんなこと言わないでよ、なんか気持ち悪いんですけど。

アム:しかも草むらとか!自分の都合しか考えてない感じとかが、マジでムリ。一昨日おいで!

ディック:ショボンヌ…

アム:もっと本読みなさいよ。で、女心をわかりなさい。

ディック:おんなごころ?

アム:アンタはねぇ、自分が他人にどう見えてるか、もっと知るべきだと思うわ!


0:10ポカラ(アリエス、サーレフ、ポカラ、フィン、アグニ)

アリエス:ポカラさん、何をしているの?

ポカラ:カミノミ(お祈り)していた。マモノのルゥやツァオ、テイネポクナシリ(地獄)行かず、アペフチ(火のカミ)にミマモラレテ、今度はニンゲンやドーブツにアクシュ(生まれ変わる)するように。

アリエス:よく分からないけれど、魔物にも手を合わせるなんて、ポカラさんは優しい人だね。

サーレフ:ポカラは良い子なんだ…本当に。…ところで、手に持っているもの、それは、何だい?

アリエス:これは、紙と言います。仔羊や子牛の皮を透かして、その上に文字を書いています。本の材料です。

サーレフ:カミ..我々の言葉では、ソレは、不思議な力という意味だ..

ポカラ:ワタシタチ、カミニ、イキル、アタエラレテ、イル。カミ、ワタシタチ二、チカラ、クレル。カミ、イロンナトコロニ、イル。

アリエス:そうなんだ。..紙は確かに、いろんなものを書いておけるし、いろんな記憶を、僕たちにくれる。..紙は神なんだね!

アリエス:…でも、クルゲって、ポカラさんの馬だよね?神って、馬にも入ってるの?

フィン:話はそこまでだ。アリエス!お前の呪いを、解放しろ。魔物共が、オレたちの匂いを嗅ぎ付けて、追ってきやがった。

フィン:アグニ、聞こえるか…?今こそ、オレとの訓練の成果を見せる時だ。…フォーメーションゼータを組め!

アグニ:聞こえてるに決まってんだろうが!…おお、結構多くねーか?暴れ甲斐がありそうだぜ!

サーレフ:最近、魔物が増えている…なぜだろうか…。アジス、ラーダ、シッテ、ポカラ!(行くぞ、頼んだ、ポカラ!)

ポカラ:ガー!・シサム・サーレフ!(仰せのままに、サレフ様!)


0:11オーガスタス(アグニ、アリエス、フィン、オーガスタス、ポカラ)

0:(10―1)

アリエス:対魔剣術・焔の(フォーティア・ケーロス)‼…くっ、キリがない…

オーガスタス:騎士団メイス術・シェイク・ザ・テラ‼

アグニ:すげぇ、ほとんど敵が吹っ飛んだぞ!

オーガスタス:いや、まだだ、まだ来る!

フィン:おかしい。こんな量の魔物、見たことがない…

ポカラ:テキのチュウイ、ワタシタチニない…マモノガメザスノ…ミヤコ…?

フィン:本当にそのようだな…敵は、メルロ市へ向かって進攻しているようだ。…とにかく、この場をしのぎ切るぞ!周辺の村の者が避難するまで、戦い続けろ!

ポカラとサーレフは、避難指示を出しに行け!

ポカラ:ガー!シサム・フィン!(承知しました、フィン団長)

ポカラ:ミンナ、シラッチセ(岩屋)ヘニガス!

フィン:王都メルロへの伝令は…アリエス、お前が頼む!

アリエス:僕…?一人でですか…?

オーガスタス:単騎ならば、敵を掻い潜りやすかろう

オーガスタス:…呪いの子ならば、魂の在り方が魔物と似ているから、魔物にも勘付かれない。

フィン:行って、この現状を伝え、援軍を頼め!オレたちのいる場で防ぎきれれば、王都は守れる!

アリエス:わかりました!

0:(10-2)

アグニ:…もういいだろう。

アリエス:はぁ、はぁ…何がさ。

アグニ:さっきから魔物に襲われてる。もう囲まれてる。

アグニ:ここで、死のう。大暴れして。

アリエス:…何言ってるんだよ。そうしたら、伝令できなくなっちゃうだろ?

アグニ:最初から、無理だったんだよ。

アグニ:俺たちは、フリューゲルを裏切って中から崩すと思われたから、追い払われたんだ。

アリエス:違う!…違うはずだ…

アグニ:…もう嫌なんだよ!

アグニ:なんで俺たちばっかり、辛い思いしなくちゃならねぇんだよ!

アグニ:俺はな、こんな世界、キライだ!消えたいんだ!

アグニ:こんなガラクタみたいな世界なら、滅べばいい!俺は、さっさと死にたいんだよ!

アリエス:…嘘だよ…アグニは、本当は生きていたいんだよ。

アリエス:…ごめんね、僕の辛いところばかり背負わせて。

アグニ:この偽善者!俺は…お前が、一番嫌いだ…!

アリエス:…僕らは、生まれてきた。母親の死と引き換えに。

アリエス:僕らは、生きなくちゃいけない。

アリエス:…生きていたいから、認められたいから、僕らは今、こうしてるんだろ?

アリエス:それに、僕らだけが辛いと思うのか?

アリエス:汚れた民に産まれたアムは?生まれつき頭が悪いディックは?

アグニ:生まれつき体の弱いサーレフさんは?女を捨てないと生きられなかった団長は…?

アグニ:みんな、それぞれ何か背負ってるんだろ?

アグニ:辛いのは、僕らが知らないだけで、みんな同じだろ。

アグニ:僕にみんなの辛さはわかんないよ、アグニ、お前のもな。

アグニ:…だけど、僕は、みんなと助け合いながら、生きていきたいんだ!

アグニ:もっかい言っとく。俺は、お前がキライだ。うだうだ考えやがって。

アグニ:でも、…お前が消えたら俺が困る。だから、手伝ってやるよ。

アリエス:…力を、貸してくれ。生きるために。

アグニ:ああ。…お前と俺は、分かり合えない。だが、…。


0:12シャーラとベンジャー(シャーラ、ベンジャー)

シャーラ:な、何故ッ⁉何故わたしの攻撃が通じない⁇

ベンジャー:簡単な事だ、お前たちは、俺達には勝てない。

シャーラ:私は、貧しい村に生まれた。

シャーラ:凡庸な私の才能を信じて、村のみんなが寄付してくれたお金で、私は図書館大学に入ったのです…

シャーラ:だからっ、私は、あなた方などに、負けない!

シャーラ:私は、故郷に図書館を作り、貧しい村を変えるんだ!

ベンジャー:…何を言っているのか分からないが…獲物にして不覚はないな。

シャーラ:…オラは、アンデル村のシャーラ。

シャーラ:オメェらなんかに、おぐれはどらね。

シャーラ:こっがらは、礼儀作法はなしだ。

シャーラ:いぐぞ、スッダラケ共‼

ベンジャー:来い!お前たちは、勇ましい。だからこそ、一片の無駄もなくすべて使ってやる…


0:13館長とシータ(館長、ラーマ、シータ)

館長:(ボソっと)美しい…

シータ:なんだ?虫ケラ。命乞いは聞かぬぞ。

館長:美しい!何という醜さ!何という暴力に特化した造形!美しい!美しすぎる!

ラーマ:そうだな、ジルバー。…しかし、どこか(おか)し難い。

ラーマ:…なぜだ?(オレ)に、組み敷けぬ女性(にょしょう)など、おらぬというのに…

シータ:…ほう、お前、混ざり物か?ヒトと我が子の魂が混ざっておる…!

シータ:妾は黒の女神の化身。…ヒトの脆き身でここまで来たことは、褒めて遣わす。…

シータ:妾の名はシータ。幸福に思え、虫ケラよ。

シータ:褒美に、その魂、妾自ら、その醜き肉体から解放してやろう!

館長:冗談か悪夢だ…こんな美人をやらねば僕がやられるなんて…そんなの僕の趣味じゃないんだが館長:…ここは館長として、やるしかないか…

ラーマ:気を付けろ、この方は、我が母。容易には倒せぬと思え。…

館長:…わかった。まぁ僕も、伊達にフリューゲルやってないからね。

館長:昔ヤンチャした時でも思い出しますかっと!!

館長:ラーマ、その神名に於いて命ずる、我が武器となれ!

館長:いでよ、闇の戦斧(せんぷ)、ラーマ・ヤナ!

シータ:フッ、愚かな我が子だ、ラーマとやら。虫ケラに味方するか。

ラーマ:(オレ)は、この肉体の居心地を気に入っていてな!母よ、悪いが、倒させてもらう!

シータ:フフフ…他愛もない…子は親に勝てぬ!



0:14サーレフとポカラ(サーレフ、ポカラ、ガラゴ)

0:(14-1)

サーレフ:ポカラ、お前を解放する…好きなところへお逃げ…お前だけならば、どこででも生きていける。…

ポカラ:ワタシ、ワカラナイ。ナゼ、ワタシ、ニゲル?ワタシ、サーレフ様、守る。

サーレフ:今、私は族長の息子でも、なんでもない!ポカラ、…頼むから、逃げてくれ。生き延びてくれ。サーレフ:…私は、…!…私は、お前に生きていて欲しいんだ!

ポカラ:…イヤ!ワタシ、サーレフ様マモル!…ゾクチョウ、カンケイナイ!サーレフ様、マモル!

サーレフ:ポカラ…

ポカラ:ポカラのルゥ、サーレフ様ノモノ。…トウサマ、言ッタ。ポカラのルゥ、大切ナモノヲ、マモルタメニアルト。

ポカラ:ポカラノ大切ナモノ、…サーレフ様。

0:(二人、見つめ合う)

サーレフ:…わかった。お前の気持ち、しかと受け取った。…生き延びるぞ!ポカラ!

0:(14-2)

ガラゴ:気に入ったぞう、女。貴様は、実に強い。

ガラゴ:我が妻として迎えよう、女。貴様の産む子は、さぞかし強き戦士となるであろう。

ガラゴ:あの方には、人間は皆殺しにせよと言われたがな。

ガラゴ:…我が妻となるのであれば、貴様の命だけは見逃してやろう。

ポカラ:ラーダ・テイネポクナシリ!(地獄へ堕ちろ!)ワタシのルゥ、サーレフさまのモノ!お前などにやらぬ!

ガラゴ:フフフ…ますます気に入ったぞ!ならば絶望を教えてやろう、女!いくぞぅ!

0:(14-3)

ガラゴ:女!徹底的に打ちのめしてくれようぞ!

サーレフ:ポカラッ!

ポカラ:ヘイーヤ!

ガラゴ:くっ!…やはり、強いな、女。

ポカラ:こいつ、…サーレフ様を!!

ガラゴ:戦場いくさばでは弱き者から手に掛けるが必定!

サーレフ:くっ!

ポカラ:サーレフ様!

ポカラ:あ…サーレフさま…わかるの…ポカラのルゥ、もう、カラダ、離れる…

サーレフ:嘘だ!嘘だ!嘘だ!ポカラぁあアッ!…今、回復魔法を…

ポカラ:サーレフさま、逃げて…生きて…

サーレフ:無理だ!…お前がいない世界で、生きていくなど…

ポカラ:サーレフ、さ、ま…あなたは、死んでいけないひと。…

サーレフ:ポカラ…

サーレフ:タワ・トワム・アシ

ポカラ:タ、ワ・トワ…ム、…アシ…

ガラゴ:女ァ!死んでしまうとは勿体ない!そのような男を庇って死ぬとは!

サーレフ:…ポカラが時間を稼いでくれたおかげで、この魔法陣を創ることができた。

サーレフ:…愛の分からぬお前には、永遠にわかるまい…

サーレフ:いでよ!ラーヤ・ハヌマーン!!


0:15フィン(フィン、オーガスタス、サーレフ)

フィン:酷く…疲れた…村にいた人間は皆無事か?

オーガスタス:無事だが…皆、寒くて震えている…

フィン:…仕方ない…本を燃やせ。

オーガスタス:…本は、高価なものだ。確かに、薪の代わりにはなるだろうが…

フィン…いい。オレが許す。

フィン:サーレフ、村の者たちにわかるよう、オレの言葉を風の民の言葉に直せ。

サーレフ:…

フィン:…聞こえないのか?サーレフ!

オーガスタス:やめてやってくれ、団長。

オーガスタス:皆、満身創痍だ。

オーガスタス:しかも、いつやってくるかわからぬ魔物に、怯えている。

オーガスタス:サーレフは、心に深い傷を負った。

オーガスタス:サーレフ、…

フィン:…そうだが、…逆に言うならば、今こそフリューゲルの真価が問われる時だ。

サーレフ:…わかった。すまない。…団長、皆に話してくれ。

フィン:皆、落ち着いてくれ。

フィン:今、急な魔物の襲撃で、皆戸惑い、明日の生活すら見えない中、不安に駆られているだろう。

フィン:だが!フリューゲルは、ここを護る。

フィン:本を焚き火にしてかまわない!どんどん燃やせ!村に降りられない今、我々には、二つのことしか出来ない。

フィン:一つは、不安を和らげること。もう一つは、襲い来る魔物から、皆を護ることだ。

フィン:それだけは、なんとしてもやる!以上だ。

サーレフ:…長が聞いている。「なぜ異民族である我々に、そこまでするのか。本は、異民族より大切ではないのか?」と。

フィン:人間より大事な書物など、ない!

フィン:人間がある限り、書物は作り直せる。

フィン:だが、…失った命、損なわれた心は、戻らない。

フィン:…その代わり、こちらにも協力してほしい。村々に伝令をよこし、魔物と闘えるものは、こちらに来るように言ってくれ。

フィン:恐らくは、ここを守れば、風の民への被害は少なくなるだろう。首都メルロへの魔物の流入も防げる。

フィン:メルロへは、伝令を出した。応援が来るまで、闘える者は、頑張ってくれ!

サーレフ:…団長、今の話で、皆の流れが変わった。

サーレフ:皆、自分のすべきことがわかった。

サーレフ…ありがとうございます。…

フィン:お前も、変わるといいのだが…

サーレフ:わかっています…何を失おうと、勝たなくては。

サーレフ:嘆くのは、その後でいい。


0:16エルロイン(アリエス、オーガスタス、エルロイン、ディック)

アリエス:はあっ、はぁっ、…ただいま戻りました!

オーガスタス:アリエス…ご苦労だった。

オーガスタス:お前に、言っておかねばならぬことがある。

オーガスタス:ついに語るのですか…?エルロイン。

エルロイン:ええ。時は満ちました。

アリエス:オーガスタスさん…?どうしたのですか?その声…まるで…

エルロイン:混ざり子よ…そなたがヒトの子と魔物二つの魂を持つように、オーガスタスも、神とヒトの子の、一人と一柱(いっちゅう)の魂を持つのです…

オーガスタス:我が母、レダは、白の女神の父上と交わり、そうして、私たちは生まれた

オーガスタス:…私は、不義の末、成された子だ…

エルロイン:あるいは、この時を、私たちの父上は、見越して我々を造られたのかも知れない

エルロイン:…今は、ジルバーが食い止めていますが、闇の女王シータは、人間の造った武器では倒せません。

アリエス:そんな…

エルロイン:私たちに三日、猶予をおくれなさい。

エルロイン:神が造った(つるぎ)でなくては、闇の女神の化身であるシータの心臓は砕けぬ。

オーガスタス:それから、…神殺しの剣を作るには、純粋な人間の助けが必要だ。

エルロイン:常識に囚われぬ純粋な人間…あなたのことですよ、ディック・ノヴォー

ディック:オデ…!?


0:17ディック・ノヴォー

ディック:アム…

アム:聞いた。全部聞いた。アンタ、死ぬかもしれないんでしょう?

ディック:うん、だから、言いに来た

ディック:オデ、アムが好きだよ。アムが死なないために、オデが死んでもいいよ。

ディック:オデ、アムが好きだよ。

アム:ディック…ありがとう。その気持ちが、嬉しいわ。

ディック:アム、俺が生きて帰ってきたら…オデ…

0:(二人、見つめ合う)

アム:ごめんなさい!出会い方が悪かったと思うの!

ディック:…ショボンヌ…

フィン:ディック、その辺にしとけ。生きて帰ったら、とか、思うな。そういう奴から死んでいく、そういうものだ。

フィン:前だけ見ろ。オレ達は、お前の味方だ。

ディック:団長…、ありがとう、ございます…。(アムに、優しく)オデは、アムのために、命、掛けるよ。…ディック:行ってくるね。

アム:ええ。…

アム:(激しく怒りながら、段々涙声になる)アイツ、バッカじゃないの!アタシのために、…

アム:アタシなんかのために、命を掛けようだなんて!…絶対、バカだよ…!…

アム:ディック…!ありがとう…頑張って…!



0:18ベンジャー

アリエス:そのレイピアは…

ベンジャー:…人間どもから、奪ったものだ。…苦しませずに殺してやった。

ベンジャー:その肉を喰らい、皮を剥いで手袋にした

ベンジャー:…骨で作ったナイフは、先刻お前が打ち砕いたものだ。足の腱は、弓の(つる)にした…

ベンジャー:ああ、心配するな。お前たち残酷な人間と違い、俺は、殺した生き物は最後まで使い切る。

ベンジャー:肉、骨、皮、腱…そのどれもを有効活用するのだ。

ベンジャー:さぁ、降伏せよ、人間、さすれば、苦しませずに殺してやろう。

ベンジャー:お前の死も、無駄にはしないさ。

アリエス:シャーラ…!そんな…!…クソ!…お前は、僕が殺す!

ベンジャー:ほう、面白い。…我が名はベンジャー!来い、人間!

アリエス:アグニ!力を貸してくれ!

アグニ:おう!いくぞ!

アリエス:焔の(フォーティア・ケーロス)

ベンジャー:やるな、人間!だが、これはどうかな…!

アリエス:ぐ…ッ!

アグニ:アリエス、怒りを適切に使え。冷静になれば、俺たちの敵じゃない。

アリエス:ずっと、名前を付け損ねていた技があるんだ。…今、やっとわかった。…

アリエス:焼かれろ!煉獄の(カサルティリオ・ケーロス)

ベンジャー:ぐわぁああ!

アリエス:シャーラ!シャーラ…!こんな変わり果てた姿に…!

シャーラ:…アリエス?何、手袋を抱きしめて泣いてるんですか?

アリエス:シャーラが死んじゃったから…

シャーラ:はぁ!?お前、バカですか?私は生きてますけどぉ!?

シャーラ:…てか、戦場で手袋抱き締めてるなんて、お前、死にたいんですか!?

アリエス:シャーラ…?なんで生きてるの?

シャーラ:そいつはヤバいので戦わなかったんですよ…逃げるは恥だが役に立つ、ともいいますしね…

アリエス:(シャーラに抱きつく)シャーラ!

シャーラ:アリエス!重いですよ!うざいです!

アリエス:シャーラ!シャーラ!

シャーラ:アリエス…まだ、戦いは終わっでねぇですよ、スッダラケが

シャーラ:…でも、お互い、生きててよかった…

アグニ:オイ!ベンジャーがまだ生きてるぞ!

アリエス:シャーラ!

シャーラ:いきますよ!

アリエス:あああぁぁあああ!!

シャーラ:アンデル村秘奥義・目潰し拳!

ベンジャー:ぐぁああああッ!!


0:19カラメリ(フィン、カラメリ、シャーラ)

カラメリ:へぇ、フィンって言うの…?うふふ…可愛いね…しかも、強い!

カラメリ:…強くて可愛いお姉さん、ボク大好きだな〜…そうだ!手足を捥いで、飼ってあげるね

カラメリ:…そんな顔しなくても、ボク動物飼うの上手いから、心配しないで!じゃあ、いくよ、お姉さん!

カラメリ:カヌレ、ヌガー、その他のザコは、やっちゃって!

フィン:人!?来るぞ!みな、フォーメーションアルファを組め!

カラメリ:やっちゃえ!

シャーラ:そうはいきませんよ!

カラメリ:何!?このメガネ?

シャーラ:団長、助太刀致します。

フィン:…ありがたい。…お前は、獣を頼む。オレは、ヒトガタをやる…

シャーラ:承知しました。行くぞキルヒアイス!

0:カラメリとフィン、打ち合っている

カラメリ:…お姉さん、手と足、どっちから捥がれたい?

フィン:…お前は、魔物だな。

カラメリ:そうだよ。お姉さんは、ニンゲンだ。だから、ボクらには、勝てない。

フィン:…確実なことなど、ありはしない。…

カラメリ:いや、あるよ。お姉さんは部下をボクのペットに殺される。

カラメリ:それから、お姉さんはボクのお人形になるんだ。

フィン:なるほど、やはり、お前は魔物だ。

フィン:悪いが、オレはお前のモノになる気などない。

フィン:オレが心臓を捧げる相手は、ただ一人…

カラメリ:なら、そいつも殺すね!


0:20アリエスとアム(アリエス、アム、フィン)

0:(アム、フライパンを持って、逃げ切れなかった避難民たちに寄り添っている)

アム:どうしよう…ここまで魔物が…

アム:みんな、安心して。…アタシ、実は強いんだから!

アム:来たっ!えーい!

アリエス:痛ッ!

アム:アリエス!?

アリエス:アム!助けに来た!

アム:よかった…怖かった…!

アリエス:ちょ…抱きつくのは、やめて!

アム:怖かった…でも、みんな怖いのは一緒だから、強がってたの!

アリエス:アム…もう大丈夫だよ…僕の後ろをついてきて。

アム:でも、ここの人達は怪我したりしていて、動けないの…

フィン:待たせたな、アム。オレもいる。

アム:(アリエスから離れて)あっ、団長

フィン:怪我人や老人は、馬車に乗せる。殿しんがりは俺が務める。

フィン:手強い魔物だった…人間らしき姿をしていた…

アム:団長、怪我を…?

フィン:ああ。当分は、前線では戦えないだろう。

フィン:突破口はアリエスが開く。大丈夫だ。

アリエス:あのさ…さっき気づいたんだけど…

アリエス:アムも、女の子なんだね。

アム:そうに決まってんでしょ?

アリエス:うん…そうだね…

アリエス:アムがいつも強気だから…僕、ちょっとびっくりした。

アム:…私だって、泣きたいときぐらい、あるわよ。

アリエス:…そういう時、傍にいてもいい?

アム:…なんで。

アリエス:なんだか、そうしないとアムは消えちゃいそうだから。

アリエス:じゃあ、行くね。付いてきて。

アム:…


0:21フリューゲル(エルロイン、ディック、サーレフ、アリエス)

エルロイン:できました、ディック。剣に名付けを。

ディック(痩せ細り、声がイケメンに変わっている):オデ、三日眠らず、食わず、働いた

ディック:…オデ、ヘトヘト…

エルロイン:…よいから、名付けよ。ヒトの子

ディック:…ふりゅーげる。…

エルロイン:…その名は?どのように?

ディック:オデ、ふりゅーげる、好きだ。だから、同じ名前、付ける。

エルロイン:わかりました。「フリューゲル」、汝を作りし者の願いを果たせ。

ディック:オデの作ったツルギ、光ってる⁉

エルロイン:これで、我が存在の意義は果たされた。…

サーレフ:待ってくれ!オーガスタスは、…?義父上(ちちうえ)は…?

エルロイン:あの剣には、生贄が必要だったのです…高潔な心の持ち主が

エルロイン:…オーガスタスは、自ら望んで、犠牲となりました。

サーレフ:…ははははは!はぁっ!!…なぜ!、なぜ、私の大切な者ばかり…!どうして…ッ…

エルロイン:ヒトの子よ、オーガスタスからあなたに言伝(ことづて)があります。

エルロイン(オーガスタスが「を読んでもいい」):「お前は良き息子だった。」

エルロイン(オーガスタス):「お前が私の子ならば、己の責務を忘れるな」と。

サーレフ:…。ありがとうございます。神よ。

サーレフ:…しかし、運命とは、残酷ですね…私は、何もかもを無くしてしまった…。

アリエス:サーレフさん、クルゲが!クルゲが、帰ってきました!怪我をしています!手当てを!

サーレフ:クルゲ…主を見失って、フリューゲルに戻ってきたのか…?

サーレフ:そうか…お前も、寂しかろうな…。…?乗れというのか?よせ、手当をしてやる。

アリエス:サーレフさん…あなたの手当てを、みんなが待ってます。

アリエス:…お願いです…どうか、絶望しないで下さい…僕ら、みんな、あなたのことを好きです。

サーレフ:…わかった。…ありがとう、アリエス。…エルロイン、父さんの言葉、しかと受け取りました。…サーレフ:私は、まずクルゲの手当てをして、それから、クルゲに乗って、人々を癒しに参ります。

ディック:サーレフさん、オデの手当て、して…しにそう。

サーレフ:大丈夫だ。君は食べ物を食べてよく寝れば、治るぞ。…では、救護班を指揮しに、行ってくる。

エルロイン:私は、もはや役目を終えた。…私は、半身を失い、もはや長くないでしょう。

エルロイン:魔法は、生命力をある者からある者へ移す(すべ)

エルロイン:私の残りの命は、サーレフ、あなたが他のヒトの子へ移せばいい。

サーレフ:エルロイン…わかりました。エルロインもこちらへ。

アリエス:…サーレフさん。…どうかご無事で…



0:22アリエスと女王(シータ、アリエス、アグニ、館長、サーレフ)

シータ:…お前は、何だ?混ざり子よ。その気配は…何を隠し持っている…?

アリエス:お前の心臓を砕く、武器だ…!行くぞ、アグニ!

アグニ:お前は我が母…しかし、俺は、母や一族に叛逆する道を選ぶ!

シータ:虫ケラ共が…いくら来ようと、何を持って来ようと、関係ない。

シータ:妾は最強の魔物だ!お前たちは、消える寸前の(ともしび)よ!

シータ:せいぜい瞬き、妾を楽しませるが良い!

アグニ:(襲い掛かりながら)我が母よ!あなたも、(いくさ)は好きか!

シータ:(受け流しながら)好きに決まっている!血湧き、肉踊るこの戦こそ、我が在るべき場所よ!

アリエス:ユグドを平らげて、どうするつもりだ、答えろ、女王!

シータ:簡単なこと。他の国をも、我が手中に納める。

シータ:全ての人間を滅ぼし、魔物たちが思うままに喰らい合い、強き者のみが生きる理想の世界を作るのだ。

サーレフ:馬鹿なことを!我が一族は、力を求め、禁忌の、闇の女神を兵器として使う方法を求めた。サーレフ:…しかし、それは世界をも滅ぼしかねない方法だったゆえに禁忌を封じ、世界に散ったと伝わっている。

サーレフ:…お前の下らぬ理想のせいで、どれだけの命が奪われたと思っているのだ⁉

サーレフ:私は、決してお前を許さない…

アリエス:おおおおッ!貫け!

アリエス: 神殺しの角(デイシーア・ケ―ロス)!

シータ:クッ…なぜ動けぬ…⁉

サーレフ:天網恢々(てんもうかいかい)、インドラ・ネット!…お前の動きを封じた!

サーレフ:私の寿命と引き換えにな!

シータ:うあああッ!

シータ:…これが…痛み…まるで、焼けるようだ…

ジルバー:黒の女王よ…出来ることならば、僕が愛を教えて差し上げたかった…

シータ:妾は滅びぬ…すでに冥界は妾の領域…

シータ:そこで妾は…待っておろう、…虫ケラ…ジルバーとやら…


0:23アリエスとアグニ(サーレフ、アリエス、館長、フィン、アグニ)

0:(23ー1)

サーレフ:魔物が退却していく…

アリエス:勝った…勝ったんだ…!

館長:喜んでられないぞ。…首都は、ボロボロ。

館長:…暫くは、復旧作業の方が図書館に優先する…

フィン:ああ…オレたちもまばらになって、僻地の村へ支援に行かねばな…

アリエス:でも、勝ったんでしょう?

フィン:…嬉しいのか…?

アリエス:…嬉しいです!

フィン:…そうだな。…アグニ、お前は?

アグニ:これから、魔物はゆっくり消えていくだろう

アグニ:…俺も多分、アリエスの中で、眠る…

アグニ:ずっと、こうしたかった。アリエスの邪魔に、なりたくなどなかった。

アリエス:…それが、本音か…

アグニ:アリエス、俺がいなくなるのは、淋しいか?

アリエス:…淋しくないよ…

アリエス:本当に出会った者同士は決して離れないと、古い詩にあるから。

アグニ:アリエス…


0:24それぞれの結末

0:(24ー1)

アム:ディック!大丈夫だった?

ディック:(もとの声に戻っている)ダイジョーブ!

ディック:少し寝て、食べたら、オデ、元気。

ディック:みんながオデを、すごいすごいって言う。

ディック:女の子たちも、オデのこと、可愛いって!

ディック:アム…ちょっとオデ、こわいな…

アム:…大丈夫。アンタは、ディックのままでしょ。

ディック:うん。

アム:アタシ思うんだけど…大事なのは、アンタが、アンタが誰なのかわかってることだと思うよ。

ディック:…そうだね。

アム:アタシ達、フリューゲルの一員だよ。これからもね。

ディック:…うん。

0:(24ー2)

サーレフ:ポカラのルゥを、私は見ることができない…残念だ。…私は、生涯、結婚をしないだろう…。

サーレフ:私のツァオは、ポカラのものだから…

サーレフ::私は、各国を巡り、風の民のために尽くそう。

フィン:オレが同行しよう。…用心棒は、必要だろう?

サーレフ:ありがとうございます…団長…

フィン:フィン、でいい。

フィン:…オレは、民のためとは言え、本を焼いた。

フィン:もはや、書の司をやる資格はない。

サーレフ:フィン、…ありがとう…


0:終カミの翼(アリエス、アム、フィン、サーレフ白の女神)

アリエス:後日譚

アリエス:アリエス・オイリオン

アリエス:紆余曲折あり、フリューゲルの団長となる。

アリエス:アグニは次第に消えたが、アリエスはアグニを生涯忘れず、晩年にはアグニを我が友と読んでいた。

アリエス:シャーラ・ド・アンデル

アリエス:アンデル村の発展に尽くし、アンデル村に図書館を築いた。

アリエス:アリエスとは、常に手紙をやりとりしていた

アム:アム・ストリンドベリ

アム:アリエスと結婚し、二児をもうける。

アム:呪いの子の子供が生まれることは初めてだったため、皆に色々言われたが、本人は子供を一番に考えた。

アム:ディック・ノヴォー

アム:一躍ヒーローとなり、伝記などが出版された。

アム:体重は元に戻ったが、皆の人気者として一生を終えた。

アム:後の歴史家には、ディック・ノヴォーこそが頭の良くない人を世間が見る時の目を変えた、と評されている。

フィン:フィン・ナイチンゲール

フィン:サーレフの用心棒として、陰から彼を支えた。

フィン:サーレフとの間に子供がいたという話は、ない。

フィン:ただ、お互い、心の中に想う人がいる者同士、仲は良かったようだ。

フィン:サーレフが亡くなった後は、メルロ市の地下街や、汚れた民を救う運動に一生を捧げたという。

フィン:ジルバー・スタティオン

フィン:フィンの想いには薄々気付いてはいたが、シータを忘れられず、一生を独身で貫いた。

フィン:なぜか、ラーマは魔物であるにも関わらず、ジルバーが死ぬまでその身に宿っていたという。

サーレフ:サーレフ・ラーゲルレーヴ

サーレフ:34歳で短い命を終えた。

サーレフ:しかし、その姿は、多くの人に親しまれ、各地に、赤馬に乗った賢者の逸話が残る。

白の女神:人々は、神々の争いに巻き込まれながらも、愛し、時に憎しみ、生きた。

白の女神:ディックが打った名剣フリューゲルは、長くユグド共和国で、自由と知恵の象徴として語り継がれることとなる…

0:Fin



個人的にディック・ノヴォーが一番好きなキャラクターです。皆さんの好きなキャラクターも、この作品にいるといいと思います。

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