表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

おまじない ーTNstory

作者: 伊原みい

久しぶりに会った、馴染みの顔ぶれに、なんだか気が抜けた。日々の仕事が忙しすぎてなかなか集まることができないメンバー。新年に集まるはずが、もう半年以上過ぎてようやくだ。貴重な時間だなと意気込んだものの、4人で会ってしまえば、昔と何も変わっていない。たぶん俺も。


集まってしまえば、ただ飲んで食べてバカな話で笑っているだけ。テーブルの対角に座るネオが、緩んだ顔でお酒を口にしているのを見て、俺は思わず口角が上がった。それを誰かに見られるのが恥ずかしくて、飲むピッチをあげた。


「おいタア、ペース早すぎないか? 面倒だからほどほどにしろよ」

と、隣からオーの手が伸びてきて俺のグラスは取り上げられた。

「またかよ。この前、飲みすぎるなっていったばかりだろ」

ネオが呆れた風の大袈裟な顔芸つきで、俺を非難する。


いや。ネオ、お前のせいだからな。忙しくて忙しくて。俺もオーも忙しいが、特にお前は2か月以上休みなしだろう。毎日朝早くから働いているはず。そんなお前がふにゃふにゃの顔で、食べたり飲んだりしているから、 俺もついつい飲む量が増えるってもんだろ。


お前のせいだ、ともいえず。俺は場の空気を変えるために、用意したものを取り出した。

「なんだ、それ?」

とみんなが笑うそれは、トラのぬいぐるみ。寅年の新年のお祝いに、全員分のプレゼント。


本当は。中国ではトラグッズを厄除けとして持つんだと聞いたから。どう考えても忙しすぎる上に、足を怪我した状態で無理を押して仕事をするネオへ。この1年が良い年になりますように。これ以上辛いことが起こらず、たくさんの幸福が訪れますように。


当の本人は「あのドラマみたいに、録音できるぬいぐるみじゃないよね?  ぬいぐるみのプレゼントとか怖いんだけど」とかなんとかぼやいていて、無事に持って帰ってくれるのか、不安しかない。自由人め、そこらへんに置いていくなよ。

視線を感じて横を見ると、オーが何か言いたげだ。オーのことだ、意味は知らなくても、俺の気持ちは気づいているんだろう。


じっとぬいぐるみを見ていたネオが急にキョトン顔。

「そもそもさ。これってさ。なんの動物?」

イヤイヤわかるだろ

「トラだろ。今年は寅年!」

そう答えたのに、

「これ……模様から考えると、ユキヒョウだよね?」

「え?…」

そうなのか? 確かによく見ると、確かに模様が少しずつ違う…。俺としたことが、トラを4種類買ったつもりだったのに!

トラに願いを込めるなんてまどろっこしいことをしないで、むしろ録音できるぬいぐるみに、俺の願いをしゃべって入れといたらよかったのか。ああ。俺はいつもそうだ。大事なところで、外してしまう。


「まあ、でもこの子、僕ぽいよね」

とふふと笑ってまんざらでもないネオを見て、俺は何もいえなくなった。確かに色白のぬいぐるみはネオっぽいと言えなくもない。この様子だと、きっと持ち帰ってくれるのだろう。なあ、ネオ似の白いトラもどき。俺はあまりネオの近くにはいられないから。お前がネオを守ってくれよ。ピンチのときは俺に……は無理なら、俺のトラにでいいから、念を送ってこいよ! とさらに願をかけた。


「何、また変な顔してるの?」怪訝な顔のネオに覗き込まれて、

「いや確かに、ネオに似てるなって思っただけ……」

俺はそっぽを向いた。


08.05.2022

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ