聖母VS魔王
リリアはあっという間に魔王のもとにたどり着いた。『病み』も落ち着いている。
「おまたせ」
「ホンマや!支援はするさかい、あとは頼むで!」
メイベルは言う。『エンシェント☆キラーズ』も全員聖騎士になっている。疲労も回復したのであろう。
『リリア・フォン・エルドラン……!』
魔王の顔が歪む。
「魔王リリア。もう1人の私。引導を渡してあげます」
『ふん。やれるものならやってみなさい!』
魔王が黒騎士になる。次の瞬間、2人の姿は消えキンキンと刃が交わる音に変わる。全く姿が追えない。
「……リリアって、魔法使いだったよな?」
「そのはずなんだけどねぇ」
剣を主軸に戦うレオールとレオンは、目の前で起こる戦いに苦笑いしかない。普通、魔法使いがここまで剣が使えるなんてないのだ。
「まあ、剣術のスキルがあるからな」
「これ援護出来へんのとちゃうん?」
「邪魔になるな」
せめてもの援護として、メイベルは薄暗くなってきた所に【ライト】で灯りをつくる。明かりに照らされて黒騎士と聖騎士が戦う。魔物達を討伐した騎士達が、上空で繰り広げられる戦闘を食い入るように見つめる。
『コイツ……!』
「魔王リリア。貴女の仲間はもう全員討伐されました。もう、やめましょう」
『……仲間?』
魔王は間合いをとって大きく笑う。
『仲間!?あんなワタシの力に頼ってばかりの脆弱共が仲間!?ふざけないで!』
魔王リリアは不気味な笑顔で言う。
『アイツらには騎士共の足止めをさせただけよ!流石に全員を一度に相手するのは骨が折れるものね!でも、結果は見て見なさい!主要なヤツらを足止め出来ないほど使えないヤツらばかり!ホント、笑えるわ!』
「彼らは道具でしかないと……」
『リリア、アンタもそうでしょう?ワタシはアンタだものね?アンタだって『あの男』の道具だったものねぇ?』
確かに、リリアは生まれてから10歳のお披露目まで父上の体裁を保つための『道具』にすぎなかった。ジェイコブもアメリアも、父上の体裁を保つには役不足だと判断された。リリアはSSSランクだったから……そうでなかったらどうなっていたか。
『この国の国王だって同じよ?国としてSSSランクの魔法使いを野放しにして敵国に奪われたら困るものねぇ?国を、己を守るための『道具』でしょう?』
「……私は初めて王都を巡った時に思ったの。王都の国民は笑顔が絶えず、自分の人生を楽しんでた」
屋台で初めてミノタウロスの串焼きを買い食いした時も、屋台のおじさんが『一番美味しいところをやろう』と言って笑顔で渡してくれた。妊娠中で体調が優れない母上にお土産として花束を買った時にも『お母さん、早く良くなるといいわね』と言って渡してくれた花屋のお姉さんの笑顔も輝いていた。領主になってからもスラムの子供達を教会で引き取った時も、勉強やお手伝いをして時には走り回って遊んでいる子供達の笑顔は励みにもなった。
「私はSSランクの陛下お抱えの冒険者になってエルドラン領の領主になった時に誓った。この国を守るための矛となり盾となることを。この世界を守るための『神の御使い』になることを。そのためなら……」
リリアは剣を握り直す。
「私は国王がこの国を守るための『道具』になってやる!『余を信じついて来てくれる民を守るは余の使命だ』と仰った陛下の矛となり盾となってこの国を守ってみせる!」
リリアは真っ直ぐに魔王の懐に入り、剣を心臓があるであろう位置に突き刺した。
『ガハッ!』
「喋っている間が隙だらけだね。……紗智。聞こえる?」
魔王の耳元に囁く。魔王の体がピクッと反応する。
「この剣、分かるでしょう?懐かしいわね。まさか『これ』が出てくるなんてね」
魔王の目から涙が溢れる。
「さあ、出ておいで。一緒に行こう」
リリアを中心に聖域が展開される。バルト達も聖域に取り込まれた。
結局、お飾りになるかどうかは自分次第という事でしょうね。
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