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聖母リリア

無事に子供は産まれた。元気な男の子だった。フィン様の手から産まれたばかりの我が子を受け取り、その小ささに驚く。その時、胸の奥で何かが弾けた。魔力が溢れてくる。感じる。自分の分身でもある魔王が苦しんでいる。……助けに行かないと。

リリアは子供をフィン様に預けて立ち上がった。誰も何も言わない。いや、むしろ何も言えない。そのあまりの美しさと神々しさに、言葉が見つからないのだ。セバスは黙ってドアを開けた。

玄関前のホールでは怪我をした騎士達が治療を受けている。回復魔法師達も集まってる。その中にはアメリアもいた。一様にリリアを見て言葉を失っている。腰まで伸びた黄金色の髪。深海のような蒼色の瞳からは深い愛を感じる。白いワンピース姿は伝書の挿絵からそのまま飛び出して来たかの様だ。誰かが『聖母様……』と言った。そう、リリアは『聖女』から『聖母』になっていた。

疲労困憊の面々を見て、リリアは歌を歌う。書庫で見つけた本に書いてあった聖歌。あれからメイベルと色々調べて分かったこと。それは『聖女』の歌う聖歌には様々な効果があることだ。その聖歌によって効果は異なり、この聖歌は傷を癒し疲労を回復する効果がある様だ。騎士達も回復魔法師達も、皆その効果には気が付いたようで、今まで御伽噺だと思っていた事が目の前で起きている。全員リリアに祈りを捧げている。


「お姉さま……」


アメリアが声をかけると、リリアは微笑んでアメリアを抱きしめる。枯渇しかけていた魔力が回復する。


「……おい、あの回復魔法師って……」

「お前、知らないのか?アメリア・フォン・エルドラン。リリア公爵の妹で、今は学園の剣術教師である剣士トウヤの妻だ」

「「「「「え!?」」」」」


意外とアメリアの存在は知っていても顔を知らない人も多いのだ。


「さて……」


外では喚き声が聞こえる。玄関のドアを大きく開け放つ。外にいた騎士達から『おぉ』という感嘆の声が聞こえる。ジョルジュ騎士団長はリリアを見て敬礼をする。


「聖母様。お子様のご出産、おめでとうございます」

「ありがとうございます、騎士団長。あとは私が……」


『殺してやる……!滅ぼしてやる……!この世界ごと全て!』と言う声が聞こえた。空を見上げると魔王と闘うバルト達が見えた。リリアはスゥと息を吸う。歌うのは癒しの聖歌。毎週末、教会で行われる聖歌隊の歌う定番だ。疲れが見えていた騎士も回復し、今まで心の中を蝕んでいた『病み』も浄化されていく。逆に魔物には攻撃になるらしい。魔物達はもがき苦しみ、空から次々に落ちてくる。リリアは両手を前に出す。そこには黄金に輝く剣が現れた。豪華な装飾も施されている。国の宝剣だと言われたら信じてしまいそうな程だ。鞘から剣を抜く。すると、リリアの衣装は聖母の白いワンピースから騎士の姿になる。その防具は白銀で出来ていて、騎士達もいつの間にか白銀の防具になっていた。


「これが聖騎士……」


城の上から見ていたゴードンもその美しさに見惚れていた。


「ゴードン様。私達も……」


魔法師に言われて見ると、確かに自分達の衣装も白い聖服に変わっていた。


「聖騎士達よ!抜剣!我々には創造神様がついています!アトラント王国を守る矛となり盾となりなさい!アルベルト・フォン・アトラス国王に勝利を!」


地響きの様な騎士達の雄叫びと共に地上に落ちて来た魔物を討伐する。


「ジョルジュ騎士団長。ゴードン魔法師団長。あとはお願いします」


リリアはそう言って魔王に向かって飛んで行った。その後ろ姿を見送ったジョルジュはふっと笑う。


「……だそうだ、ゴードン」

「聖母リリア様の仰せのままに」


ゴードンもふっと笑って答えた。聖騎士達に『病み』はもう通用しなかった。

☆聖母爆誕☆



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