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魔王交代

お腹も大きくなり動きを取るにも大変になってきた頃、大きな問題が発生した。


「魔王の交代?」


陛下に呼び出されたリリア達は思わぬ話を聞いた。魔王は国王の切り離された闇であり『病み』なのだ。その存在は国王が崩御した時に消滅する。逆に言えば、国王が崩御しなければ交代することはないはずなのだ。


「どうやら何年か前から裏の世界においてクーデターがあった様なのだ。その時に我が分身である魔王が敗れ、一族全てが消滅したらしい」

「そして新たな魔王が誕生した、と」


問題はその時に消滅したであろう魔族王国軍だ。向こうで消滅すると、また表の世界にいる本体に戻ってしまう。魔族は表の存在の『病み』から作られ、それは生まれた時から存在し、懺悔の度に裏の世界に『病み』は送られるのだ。しかし、消滅してしまうとそれが出来なくなってしまう。つまり表の世界にいる存在が『病んで』しまうのだ。


「表の世界と裏の世界でねじれが起きたなど聞いた事がない。どんな影響が起きるかななど、想像も出来ない」

「新たな魔王の情報は?」

「女性だということは聞いている」

「初の女性魔王ですね」

「うむ。裏の世界は悲惨以外の何物でもないそうだ。魔王は己の軍に入らぬ者は全て虐殺している」

「よくそこまで情報が入りましたね」


リリアは驚いて言う。


「虐殺された中に教会の者も含まれている」

「『病み』との会話も可能だという事ですか。なるほど」


『聖職者』のスキルを持ち弛まぬ信仰心を持っていると、己の『病み』とコミュニケーションを取ることも可能になると聞く。


「お主達の魔族がどうなったかは分からぬそうだ。しかし、『エンシェント☆キラーズ』を知らぬそうだからな」

「結成前だったという事ですか」

「もしくは結成してすぐだったかだな」

「俺達は無事ではなさそうだな」

「……」


バルトはリリアを見ながら言う。リリアは何かを考えている様だ。


「……何かあるか?」

「いえ……もしかしたら、その魔王って私なのではないかと……」

「何故そう思う?」


陛下は静かに問いかけてくる。その声は穏やかで、しかし強ばっていた。


「あの時点で、私に勝てる存在があったと思いますか?ライオネル先生率いる『黒炎』も学園の先生方も王国軍も……あの当時は誰も抑え込めなかったのでは?こっちの世界でも」

「……」


陛下はリリアをじっと見つめる。確かにその通りだ。故に貴族達の中にはリリアを脅威と感じ恐れ、襲撃を企てている者も少なくない。その勢力はドミニクの一件でなお勢いを増したのだ。陛下お抱えでなければ、襲撃はとっくに起きていただろう。それは事実なのだが、リリアの感情が冷え切っている様な気がするのが気になるのだ。まるで『それがどうした』とでもいう様に。


「……リリア。そなたは、王国に反旗を翻す気はあるのか?」

「その必要があるのですか?」

「さて」


空気がピリピリする。誰も何も言えない。


「……陛下は王国民をどう思っていますか?」

「我が国の民は余が守るべき宝だ。余を信じついて来てくれる民を守るは余の使命だ」

「ならば、そんな陛下に私もついて行くだけです。この身を盾とし陛下を守り、この身を矛とし振るいましょう」


この世界には私の大切なものがたくさんあるのだから。


「そうか。頼りにしているぞ、リリア公爵」

「はい」


領地に戻る道すがら、馬車の中は静かだった。リリアは黙って外を見ているし、そんなリリアに誰も声をかけられないし。魔王がもしリリアだったら……。その強さは計り知れない。正直言ってその他の魔族は何とかなると思う。しかし、魔王1人で下手したら全滅する可能性がある。リリアは今妊娠中だ。出産して少しするまでは戦えない。つまり最悪、リリアが戦える様になるまで魔王を押え込まないといけないのだ。いくらバルト達でもリリアを相手にすると言うのは現実的ではない。


「……メイベル」

「うん?」

「領地に戻ったら『例の実験』するから一緒に来て」

「ええよ」


『例の実験』と言うのがどんな実験なのかは気になるが、メイベルが一緒にいるなら大丈夫だろう。バルトはそう考えながら、戻ったら鍛錬をしないとなと思うのだった。倒せないまでも魔王リリアを押さえ込める様に。


最終決戦は自分と、という事ですね。



予約投稿です。誤字脱字がありましたら連絡お願いします

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