表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

55/64

聖歌

半年が経過した。リリアは地獄の悪阻期間を乗り越え、安定期に入った。初産だから覚悟はしていたのだが、水も受け付けなくなるとは思わなかった。料理を作るガッツが大変だった。

つわりの間は教会で子供達とのコミュニケーションに専念した。教会では子供達と聖歌を歌う。元はスラムの子だ。警戒心も強く、時々奇襲をかけてくる子もいた。今では一緒に本を読んだりご飯を食べたりもしている。


体調が安定したのもあってリリアはメイベルを連れて城に向かう。目的は書庫での調べ物。例の『聖女』について調べていた。

聖女の伝説は伝承や、子供の御伽噺によく出てくる。はるか昔、魔王率いる魔人達がアトラント王国を襲った。魔王軍の強さに次々と落とされていく騎士達。絶望に包まれる中、1人の聖女が立ち上がった。聖女の癒しの力は騎士達を聖騎士にし奮い立たせ、魔物達は弱っていった。魔王は聖女を滅ぼさんと襲って来たが、聖女の力により聖騎士となった王太子により滅ぼされた。


「うーん……」

「新しい情報はあらへんなぁ」

「いや……」

「なんや?」

「本当に回復魔法だったのかな」


リリアは伝書の1ページを開いてテーブルに置く。


「伝承には騎士は聖騎士になり、魔物達は弱体化したって書かれてる」

「せやな」

「なんで?」

「へ?」

「回復魔法だったら聖騎士にならないし、魔物を弱体化するなんて聞いたことがない。たとえ回復魔法で弱体化するにしても、効果範囲に魔物がいるなんて危険すぎるよ」

「この時の聖女はんは戦えへんかったやんな。そない危険な場所にはおらへんな」

「そしてこの本には最後に『聖歌』が書かれてる」


この本の最後には楽譜が書かれていた。聞いた事はないような譜面だ。


「弾いてみよか?」

「弾けるの?」

「商人の娘には基本教養や」


城の書庫にはピアノが置かれている。本を読みながらピアノを聞く時間が国王陛下の癒しになるそうだ。メイベルは椅子に座り、譜面を見ながら演奏する。ゆったりとした曲。優しく小鳥のさえずりの様な。リリアも鼻歌で合わせる。これは癒される。


「素晴らしい」


いつの間にか陛下と王妃が来ていた。


「もったいないお言葉です」


メイベルは立ち上がって頭を下げる。


「聞いた事のない音楽ね」

「先ほど読んでいた本の中に書かれていたのです」

「ほぉ」


リリアは思い立って今の聖歌を歌ってみた。今度は魔力を通して。


「……これは……!」

「どうした?」

「ずっとあった腰痛が治まったわ……!」


王妃は常に誰かに見られているのもあり、毎日緊張状態で立っている。そうすると腰痛も酷くなるものだ。リリアも回復魔法をかけることはあった。それでも治ることはなかった。疲労による痛みは疲労が抜けなければすぐに再発してしまう。回復魔法で疲労回復というのは、初期なら可能だが心労や蓄積した疲労は抜けないのだ。


「……なるほどね……」


リリアは少し考える。前世でも美しい歌に癒されることは多かった。だとしたら……


「メイベル」

「うん?」

「この書庫にある聖歌の楽譜、全部調べるよ」

「……なるほど。実験やな?」

「聖女様の回復魔法が広範囲に及んだ理由が分かるかもしれない」

「ほな、調べよか」


リリアの暴走は止める。しかし、これに関しては回復魔法をよく使うメイベルにとっても実に興味深い。この2人の中には既に『自重』はなかったのだ。


リリアは母になっても自重はしない、絶対



予約投稿です。誤字脱字がありましたら連絡お願いします

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ