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神獣 サラマンダー

サラマンダー。初代国王イニティウムの神獣。帝国で噴火が起きた時、自ら足を運び神獣サラマンダーを召喚して鎮めた事から、帝国でイニティウム国王を神の様に思っている者も多い。現在はサラマンダーを御伽噺に出てくる空想上の生き物だと思う者が多く、噴火のたびに姿が見えるという話も眉唾物と言われている。……いや、言われていた。今までは。


「さ、サラマンダー……」

「本当にいたなんて……!」


帝国民達は唖然としている。ステラ皇女も騎士達も驚きで何も言えなくなっている。一方、リリア達は少々焦っていた。


「……なあ、リリア?」

「何?」

「このサラマンダー、主人のおらん神獣やんな?」

「そうだね」

「マズない?」

「マズいね」


そう、問題なのは主人であったイニティウムがいないという事だ。召喚獣は主人が死ねば野生に戻る。もちろん主人の意思により召喚獣を遺産として第三者に譲渡する事は可能だが、それは『一般的な』召喚獣に限る。神獣は『一般的な』召喚獣とは言えず、当然ながら誰でも契約できる存在ではない。それを受け入れられる主人と言うのはそう簡単には現れない。故に神獣は主人が死ぬと野生に戻るのだ。

もちろんそれだけならなんら問題はない。神獣は基本的に穏やかで、余程の事がない限りは誰かを襲う事はないため、主人が存在しなくても共存はできる。しかし、このサラマンダーに関しては話しが違う。


「どう見ても暴れてるんだよねー……」

「しかも理性ないよな」

「怒ってんのか、パニックになってんのか……どっちにしても我を忘れて暴れてる感じだよなぁ」


そう、このサラマンダーは明らかに我を失って暴れているのだ。噴火もそのせいだと思われる。どうしてこんな事になってしまったのだろう。


「とりあえず、あの山に行ってみようか。バルト、一緒に来て。メイベル、レオン、フィアンは城に行って状況を報告。レオールは騎士さん達と一緒に帝国民の避難を」

「「「「「おう!」」」」」


リリアはバルトと共に火山の方に向かった。噴火を続ける火山は近づくにつれて暑さを感じる。リリアが作った『パーフェクトガード』の魔道具が役に立つ。これは火山から噴き出す有毒ガスや熱からも身を守ってくれる。

もうすぐ山の中腹にある洞窟の入り口に差し掛かろうとした所で、数人の人間が倒れているのが見えた。火山の噴火で出た有毒ガスで倒れたか。


【ポイズンリセット】


体内に入った有毒なものを排除する魔法だ。これは毒には効果はあるが、帝国内で流通していた薬物には効かないのだ。なぜだかは分かっていないが、リリアとしては “毒” ではないからではないかと思っている。前世で言う麻薬の類はあくまでドラッグという総称通り “薬” という扱いなのだろう。


「大丈夫ですか?」


反応はないが、彼らにも【パーフェクトガード】をかけたので問題はないだろう。荷物を確認すると、中にはガジャの葉が大量に入っていた。ガジャの葉を擦り込んでいると思しき生肉も入っている。


「もしかして、この肉をサラマンダーにあげてないよな……」

「可能性はあるし、どっちにしてもガジャの葉を持ってるから犯罪者だから拘束しようか」


毎度お馴染みの半裸亀甲縛りをして近くに転がし、2人は洞窟に向かう。山の中腹には洞窟に入ると、通路は軽く整備されていてさながらダンジョンの様だ。奥に進むと不自然に岩肌が抉れ、マグマが剥き出しになっていた。その近くには荷物や衣装が散乱している。……肉片も。


「どう見ても魔獣の肉じゃないな」

「ええ、人間の肉片だよね」


何者かが噴火時にここにいたと言う事だ。マグマの上を見上げるとボッカリと開いた穴が見える。外は見えないが何かがいる気配はする。


「あの上にサラマンダーがいるね」

「まっすぐ突き抜けたのか」

「そういうことだろうね。過去の噴火も、ここから天辺に顔を少し出していたんでしょうね」

「どうする?」

「……こうするしかないでしょ」


リリアはそう言ってマグマに魔力を込めて思い切り上の穴に向かってマグマを吹き上げさせた。少しして上から何かがズルズルと降りて来るのが分かった。


「……おかえり、サラマンダー」


ドブンと音を立ててマグマに落ちる塊。そしてマグマの中から前世のサンショウウオの様な顔がリリアの方を睨み付ける。


「手荒でごめんなさいね。でもね、こっちに戻ってくれないとお話しできないからね」

『グギャァァァァァ!!』

「おお、怒ってるなぁ」


ツッコミ担当のメイベルがいないせいで、誰も突っ込まないこの状況。誰でもいいから突っ込んで欲しい。


「……ふぅん。やっぱりガジャを食べさせられたのね。それで苦しんでるのか」

「幻覚症状か?」

「いや、この子は解毒が自分で出来るからそういう症状はでてないね。ただ……」

「ただ?」

「すっっっっっっっっっっごい、不味かったんだって」

「……は?」


まだ従魔にしていないのもあり正確に会話はできないが、サラマンダーの感情を読み取るにそんな感じがする。要するに、珍しく人間がやってきて食べ物を分けてくれて喜んで食べたらとても不味いもので怒っている様だ。


「ほら、口直しにどうぞ」


そう言ってリリアがアイテムボックスから取り出したのは帝国産のキングフロッグの肉だ。肉質が硬く人間には好まれないが、獣魔には好まれリリアもガーディアンホースとフェンリルにあげるために大量に購入していた。

サラマンダーはモグモグしている。気に入った様で催促する様にリリア達の所に近寄って口を大きく開ける。


「気に入ったみたいだな」

「そうみたいだね。ほら!」


口に向かっていくつか放り投げる。バクンッという効果音が合いそうな感じで口を閉じてモグモグする姿はなんとも可愛い。なんだか飼育員の様だ。しばらく続け、流石にもう在庫はなくなってしまった。


「もうないわよ!貴方の体には少なかったかもしれないけど、ごめんなさいね」

「また持って来てもらおう」


サラマンダーは少し残念そうだが、リリアの伸ばした手に鼻先を擦り付ける。


「ふふふ、可愛い!」

「なんだか気に入られたみたいだな」

「そうだね。……契約する?」

『ギャァァ』

「じゃあ、契約しましょう」


リリアはサラマンダーの額に魔法陣を浮かべる。魔法陣は光を放ち、サラマンダーに吸い込まれて行く。


「……うん。大丈夫だね」

『ギャァァァァ《感謝する、聖女よ》』


契約した事でコミュニケーションが取れる様になった。リリアは犯人の情報を聞く事にする。


「ここに来たのはどういう奴だった?」

『グギャァァァ《ここには元々人間が来ない。しかし、食い物をくれるというなら拒む理由はないだろう?》』

「誰かまではわからないか……」

「ギュゥゥゥ……《匂いがわからんからな。他の神獣の様に匂いで区別がつけば良いのだが……》」

「まあ、わからないものはしょうがないわね。犯人さんは自滅したし、皇帝陛下に報告に行こうか」

『ギャァァ《皇帝に伝えて欲しい。迷惑をかけた、と》』

「分かったわ」


リリアとバルトは来た道を戻って、残っている犯人のものと思しき荷物を回収し拘束した犯人も拾いながら下山した。その後、皇帝と非公式の謁見でサラマンダーの伝言は無事に伝えられ、捕縛した犯人達の証言や回収した荷物の中に貴族の当主である事を示す短刀がでて来たため帝国が調べ上げ、いくつかの貴族の家門がお取り潰しになりそれを主導したハーン元宰相の次男を含め多くの貴族が処刑された事を後日レオールの定期報告で知る事になる。


毒扱いじゃないので【ポイズンリセット】は効きませんが、その副作用は毒そのものですから毒耐性などは効きます。



予約投稿です。誤字脱字がありましたら連絡お願いします

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