鑑定した結果、規格外がバレました
今日は初日という事で構内案内から始まった。学園の校内はザ学校と言った感じ。4学年が使う座学用の教室がある棟。魔法や剣術などの体術の実技を行う棟。そして選択活動を行う棟だ。選択活動は所謂所の部活だ。そこでの結果が成績にも影響を及ぼすそうだ。食堂は校内にいる生徒と職員が全員で集まっても問題ない程広い。
食堂に入った所で昼休みとなった。食事が終わったら教室に戻るようにいい、先生はどこかに行ってしまった。私は列に並んで昼ごはんを確保する。バイキング形式でおかずが取り分けられた皿を取ってゆく。
「学園のご飯は美味しいと評判なんですよ」
私の後ろに並んだバルトは言う。
「そうなんですね」
「卒業して一番残念なのは食堂の食事が食べられない事と言われる程です」
「それは楽しみですね」
そんな話をしながら空いてる席を見つけて据わった。私は魚のムニエル、バルトはステーキの様だ。淡白な白身魚だが、香辛料も程よくて美味しい。領地の屋敷で料理長が作る料理も美味しいと思っていたが、これも確かに美味しい。
「美味しいですね」
「よかった。『高級な香辛料を大量に使えばいいと思ってる撃マズ料理』ではないでしょう?」
「あんなものとは比べ物になりませんよ」
「シェフが喜びますね」
バルトは笑う。『高級な香辛料を大量に使えばいいと思ってる撃マズ料理』と揶揄された料理は所謂貴族料理だ。そんなものを作れるのは貴族が足繁く通うレストランか王都の屋敷で貴族が抱えている料理人だ。そんな人たちの料理とは比べ物にならないくらい美味しいと言われたのだ。公爵家の御令嬢と言う事で挨拶に来ていた料理長が泣きそうになっていた。学園の食堂の料理長はかなりの腕がないと出来ないが、無料で提供されると言うのもありそんなに給料も高くない。貴族お抱えの料理長になったりレストランを開いたりする人よりは給料も安く、その業界では下に見られがちだ。結婚相手を探す女性陣にとっても同じ事で、料理長はモテるがそれが学園の食堂の料理長となると途端に見捨てられるそうだ。そんな学園の食堂の料理長が公爵令嬢に褒められたとなったら泣いて喜ぶに決まってる。『大袈裟だ』と泣いている料理長に苦笑いをする私を見てバルトはクスッと笑う。
王太子はリリア達から離れた席にいたが、食堂の料理を食べて『不味い』と言っていたらしい。しかしリリアの言う『高級な香辛料を大量に使えばいいと思ってる撃マズ料理』を毎日の様に食べているのでそうなるのだ。普段なら落ち込むかもしれないが、公爵令嬢の言葉があったからか料理長は何一つダメージを受けなかったのだった。
午後からは体力測定をかねた鑑定時間だ。鑑定はその人の名前や年齢、性別、種族、スキル、体力、そして魔法使いなら魔力もわかる。市民は10歳になると役所で市民証を発行してもらえる。またギルドに登録すると身分証がわりに所属員証明証を発行される。ギルドには冒険者ギルド、商業ギルド、医療ギルド、そして教育ギルドと食料品ギルドがある。前世でラノベ好きだった私としては冒険者ギルドと商業ギルド、医療ギルドはよくあった。聞き馴染みがないのは教育ギルドと食料品ギルドだろうか。教育ギルドは平民で学園に通うほどの財力のない家の子供達が最低限の読み書き算術ができる様にするギルドだそうだ。学園の初代学寮が創設したギルドで、全ての子供達が最低限の読み書き算術をできる事で騙されたりする事を防ぐためとの事。普通の家ならそれで十分なのだ。授業料は1日で銅貨1枚。先生は冒険者ギルドか商業ギルドから派遣されてくるそうだ。
食料品ギルドは地方や他国からの輸入食品を取り扱うギルドだ。少し高いが飲食店からは人気が高い。また食料の保存も行っており、飢饉が訪れた場合は食料品ギルドから各地に配られるそうだ。これは初代学長と仲の良かった国王肝煎で作られたシステムだ。
この世界の貨幣は小銅貨、銅貨、大銅貨、小銀貨、銀貨、大銀貨、小金貨、金貨、大金貨、小白金貨、白金貨、大白金貨だ。平民が暮らすのに1ヶ月平均大銅貨5枚。半分は住民税だ。田舎に行くと現物納税が多いらしいが、王都は貨幣で支払う。多くは所属しているギルドで支払い可能だそうだ。
学園の生徒は入学と同時に鑑定を行い、学生証に記入される。鑑定には専用の水晶が使われ、それに触れる事で鑑定が出来ると言うハイテク魔道具だ。ちなみにこの水晶も初代学園長の開発だそうだ。
「それでは鑑定を行うぞ!」
先生が言う。教卓には水晶が置かれている。
「まずは首席からいこう」
「はい」
席を立ち、水晶の前に立つ。透明で曇りないそれに触れると光を放つ。水晶の上には前世のゲームよろしくの液晶画面の様な表示が現れた。
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名前:リリア・フォン・エルドラン
年齢:10歳
体力:測定不能
魔力:測定不能
レベル:100
スキル:魔法使い・剣術・体術
ランク:SSS
称号:史上最強の魔法使い・聖女・神の矛・神の盾・世界の守護者・神の御使い
神の寵愛を受けし者
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いやぁ、レベル上げしすぎたね。
「……お前、俺に教わりたい事、あるか?」
先生はため息を吐く。いや、本当にごめんなさい。ぶっちゃけ、ないです。だって、歴史や算術、読み書きなどの教養は家庭教師と図書館で十分なんだもの。魔法はこの後に及んで基礎とか、ねぇ?
「むしろリリアに学びたいくらいだぞ……」
「神の矛て何やねん?」
「神の盾も初めて見たっす」
「って言うか神の御使いって何でしょう?」
「神の寵愛を受けし者、ですか。SSSだからですかね?」
「いや、聞いた事がない」
先生、メイベル、フィアン、レオン、バルトが口々に言う。うん、神様、ハッチャケ過ぎじゃない?これ、問題になるでしょ。というか、みんな意外と冷静な様な?
「レベルに99以上なんてあったんですね」
バルトは少し考えて言う。
「あ、それは限界突破したので」
「……は?」
「カンストして困ってたら図書館の本の中にレベルの限界突破の方法があったんで試したら出来ました」
「ちなみに、その方法は?」
「古代上位魔獣5種の討伐です」
「古代上位魔獣」
「はい。エンシェントドラゴン、エンシェントスネーク、エンシェントプラント、エンシェントウルフ、エンシェントシャークですね」
エンシェントとは古代魔獣の愛称で、研究資料によると古代からその姿を変えずに生き残っている、所謂生きた化石だ。その中でも特に上位種と言われている5種の魔獣であるドラゴン、スネーク、プラント、ウルフ、シャークを討伐すると言うボーナスミッションが発生するのだ。探すとなるとかなり難しく当然だが我が家の領地では発見出来ないので、5日ほど旅に出て索敵魔法で探し回ったのだ。最も難しかったのはエンシェントシャークで、海の中の何処にいるのかなんて分からないので、5日のうちの4日はシャーク探しの旅だった。
全員呆然。『ナニイッテルノコノコ?』と思考停止状態。その後大パニック。
「そ、素材は?」
「アイテムボックスの中に」
「それを誰かに言ったか?」
「どうせ誰も話す相手なんていないから言ってません」
「国王には?」
「言ってません」
「どうして!?」
「聞かれませんでしたから」
先生、脱力である。いや、知ってますよ?エンシェント種の魔石や素材、骨やツノ、牙、内臓に至るまで、全てが高値で取引されており、その強さから入手も困難なのだ。Aランクの冒険者がパーティーを組んで倒す存在をたった1人で討伐したなんて前代未聞だ。でも、その事は父上には言ってなかった。だって、言ったら考えなしに売ってお金に変えて豪遊するに決まってる。もしくはそれが国王にバレて大目玉を食らっただろう。単純に迷惑を被るのは勘弁して欲しかったのだ。
「リリア嬢といると常識が常に壊れて行きますね」
「全くだな」
「普通、『エンシェント素材あるか?』なんて聞く人おらんやろ。アホちゃうか?」
「あははは。常識に囚われないからここまで強くなれたのかな?」
「いや、レオン。そう言う問題とちゃう。単純にこのご令嬢が常識ないだけや」
「メイベルさん、それは酷くありません?」
「ああ、メイベルでええで。いや、アンタの非常識な強さ見てみーな」
「父の非常識教育の副産物ですよ」
「どんな教育したらそうなんねんな」
ああ、詳しくは公開されてないんだっけ。
「簡単ですよ。5歳になって魔法解禁されてから毎日森に入って魔獣狩り。1年後には上級魔獣を討伐して素材を持ち帰るまで帰って来るな。ただし、宿泊所を使うな。野宿限定と言われて、野宿しながら1人で魔獣狩りしてたらこうなりましたよ?」
ね?簡単でしょ?と首を傾げたらハリセンで突っ込まれた。
「何処が簡単や!学園でもそないなことせーへんで!」
「と言うか、よく生きてたよね。娘に対して死んでこいって言ってるようなもんだよ?」
レオンがまあまあとメイベルを宥めながらいう。
「ええ、でもひとつ大きな収穫がありましたよ」
「何ですか?」
「人はそんな簡単には死なない!死ぬこと以外はかすり傷!」
「「「「「……」」」」」
前世で何処からか聞いた標語だ。『死ぬこと以外はかすり傷』まさか、それを自分の身で体験する事になるとは思わなかったけどね。
誰もが呆れ顔になったところで先生はため息をついた。
「とりあえず、リリアが規格外なのは分かった。ではドミニク」
ドミニクは慌てて水晶に向かった。
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名前:ドミニク・フォン・アトラス
年齢:10歳
体力:5000
魔力:7000
レベル:12
スキル:魔法使い
ランク:SS
称号:アトラス王国の王太子
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名前:バルト・フォン・ロベルト
年齢:10歳
体力:5500
魔力:6000
レベル:10
スキル:魔法使い
ランク:SS
称号:ロベルト侯爵家長男・リリアのブレーキ
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名前:メイベル
年齢:10歳
体力:4000
魔力:5000
レベル:10
スキル:魔法使い
ランク:S
称号:ザック商会長女・リリアのツッコミ・ハリセンのプロ
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名前:レオン・フォン・ノルン
年齢:10歳
体力:8000
レベル:10
スキル:剣士
ランク:SS
称号:ノルン伯爵家次男・騎士団長の息子・仲裁役
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名前:フィアン
年齢:10歳
体力:7000
魔力:5000
レベル:10
スキル:魔法使い
ランク:S
称号:肉屋の息子・メイベルの幼馴染・メイベルのブレーキ
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名前:フェルデール・フォン・ドリュー
年齢:10歳
体力:9000
レベル:11
スキル:体術
ランク:SS
称号:ドリュー子爵家長女・道場の最終兵器
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名前:ポール・フォン・ダンベル
年齢:10歳
体力:5000
魔力:6000
レベル:10
スキル:魔法使い
ランク:S
称号:ダンベル男爵家長男
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名前:ツェルン・フォン・ジュール
年齢:10歳
体力:4000
魔力:6500
レベル:10
スキル:魔法使い
ランク:S
称号:ジュール男爵家長男
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名前:レオール・フォン・ドール
年齢:10歳
体力:8000
レベル:10
スキル:剣術
ランク:SS
称号:ドール伯爵家長男・ドミニクの護衛
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「何やねん!この『リリアのツッコミ』って!『ハリセンのプロ』って!」
「僕も『リリアのブレーキ』に認定されちゃってますね」
「こ、この一瞬のやりとりで『仲裁役』に……」
「『メイベルのブレーキ』って何だよ。自分でブレーキかけろよ」
私と関わった人間に称号が入っていた。そんな簡単に称号が手に入って良いのだろうか。
「そんなにすぐすぐ称号がつくわけがない。恐らく、リリアが神に関係する称号を持っているからだろう」
先生に言われて納得する。称号とは神から与えられるご褒美のようなものだ。そんな簡単に手に入るわけではない。しかし、一連の会話で神から気に入られたのかこんな事になったのだろう。若干願いもある気がするが。
「いやいや、ちゃうやろ?もっと称号ってこう……」
「メイベルちゃん。世の中、諦めという事も肝心なんですよ?」
「はぁ?」
「そうだね。ここまで規格外だとこんな事なんてきっとしょっちゅうだよ?」
「身がもたんやろ!」
「しかし、現実だ」
「受け入れすぎや!フィアン!」
「受け入れようぜ。その方が楽だ」
「んなアホな!」
もはやぐちゃぐちゃだ。ドミニク達は鬼か何かを見る様な目で私をみる。そんな目で見なくたって良いのに……
「まあ、俺ももう諦めた。リリアには常識が通用しない」
「先生!?」
「どう抗おうがこれが現実だ、メイベル。諦めろ」
先生の言葉にメイベルは頭を抱えた。先生に諦められてしまった。
「とりあえず、今日の鑑定結果は学生証に記載されている。家に帰ったら家族と確認しておく事だ。それでは今日はこれで終わりとする。それとリリア」
「はい」
「君は早速、冒険者ギルドに登録に行きなさい」
「と言うと?」
「恐らく、素材はアイテムボックスに入っているのだろう?父親の目を盗んで、父親に渡していない物も多いだろう。学園では買い取れない素材もあるからな。冒険者ギルドに登録して素材を買い取ってもらえ」
なるほど、お見通しという訳だ。確かに父上に言われたノルマ以上に素材を確保してアイテムボックスに収納してある。金遣いの荒い父上に必要以上に金が行かない様にしていた。その素材を売れば、領地の運営に回せる。
「ありがとうございます。早速、帰りに寄ります」
「そこでバルト、メイベル、レオン、フィアン。お前達、一緒に行け」
「何でや!」
「いや、どう見ても称号のせいだろ」
「アンタは何もないやろ」
「パーティーは5人くらいが一番良い。実力やバランスを考えて適任だね」
「確かに、スキルを見るとなぜかリリア嬢は剣術も出来ますから。近接戦をリリア嬢とレオンに任せる場合は、魔法使いを補填する必要もありますね」
「それで俺か」
「実際、バランスはいいと思うよ?メイベルのブレーキも必要でしょ?」
「はぁ……分かった分かった。もう諦めるさかい、帰りに寄ろか」
「「「「「ようこそ」」」」」
「何がようこそや!先生まで!」
先生もさらっと混ざって仲間を受け入れる同志たち。メイベルはまだ納得し切れていない様だが、とりあえず仲間が出来た。学園生活においてボッチを避ける事が出来て良かった。それにしても……そんなに規格外かなぁ。
はい、規格外ですよ。自覚してください!
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