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洗礼

半年後。怒涛の結婚式ラッシュは終了し、リリア達はエルドラン領の発展に追われていた。領主館が改築され、豪華な屋敷が完成したのだ。デザインはリリアがやった。実は前世での職業は建築関係を受注する会社だったのだ。紗智は建築大学を首席で卒業できるほど優秀だったのだが、就職先が悪かった。紗智がデザインした建築は全て先輩達に搾取され、その功績はカケラも配分されなかった。地味な見た目が災いしたのだ。

しかし今世では違う。もう自重なんてしない。思う存分デザインしてはっちゃけた結果、この世界にはなかったデザインで完成した。いや、一応この世界は中世ヨーロッパ的な雰囲気なのでそこには合わせたよ?モチーフにしたのはゴシック建築。円形の天井と尖塔のアーチ、外壁を支える飛梁など。屋敷なので基本的には左右対称で塔などは控え目。階層は2階建。塔は3階建てで『エンシェント☆キラーズ』の活動拠点と演練場。当主の書斎などが入っている。その出来は国王に『今度改築する時にアドバイスを頼めるか?』と言われるほどだった。

城だったらロココの方がそれっぽいかな?でも今の城はバロック的だし、いいとこ取りしたら良いかな?ロシアにあるバロック建築をモデルにしたら内装がロココでも違和感ないかな?簡単なデザインをおこして見せたら国王より王妃の方が気に入ってしまった。聞けば現在の城も以前のエルドラン領主館の様な隙間風が入り込み始めたのだとか。なんとかごまかしてはいるが、そろそろ建て替え時期に来ているのだとか。あ、これってすぐにやらないと駄目な感じ?という訳で、不用意にデザインを描いてしまったがために色々とバタバタになってしまった。城自体は建築を生業としている人達にお願いし、家具はリリアが作った。ワー、魔法陣ッテ便利ダネー!

領地の安寧は冒険者のグランに任せた。グランはスタンピードの時にバルトの大怪我の原因を作った男だ。あれからエルドラン領でこき使われている。もちろんその分ちゃんと給料が支払われている。やはりそこはAランクの冒険者なのだ。厳つい見た目だが根は優しく、教会の子供達にも懐かれている。

教会では元スラムの子供達が日々勉強とお手伝いに勤しんでいる。お手伝いとは教会の掃除や食事作りだけではなく、マスクなどの生産のお手伝いもするのだ。その分の配当もちゃんとお小遣いとして配られており、子供達は嬉々として手伝ってくれる。この方法は王都でも行われ、スラムの子供達が格段に減った。


城の建築も終わり、新しい家具も運び込み、ようやく一息ついたある日。リリア達は教会にいた。『エンシェント☆キラーズ』全員で成人を迎え、晴れて洗礼を受けるためだ。この世界では成人して初めて洗礼を受けるそうだ。


「それでは我らが『エンシェント☆キラーズ』の洗礼を行います」


教皇様が王都から来てくださっての洗礼だった。それぞれ洗礼を受けた証であるエンブレムを受け取る。首からかけられたエンブレムは胸のあたりで収まる。


「それでは皆様に神の御加護を!」


正面の創造神の像が光を放ち包まれる。最敬礼の状態で少しすると周囲が静かなのに気がついた。目を開けると真っ白な所にいる。頭を上げると、そこには1人の青年がいた。


「やあ。やっと会えたね」

「……創造神様?」

「ああ、そうだよ。僕が創造神のスグル」


いや、像と違いすぎるでしょ。威厳がどこにもないのでは?


「いやぁ、この方が話しやすいし。何しろあの像は空想なんだよ」

「空想」

「うん。イニティウムに像を作りたいって言われてね。彼にも僕の姿は見せてなかったから、少し威厳を保つためにね。君がこっちに来る時も一応威厳は見せたつもりなんだけど?」


確かに話し方は威厳があった。だから老人だと思ってたけど。


「ところで、そろそろ彼らに状況を説明してあげた方がいいんじゃない?」

「え?」


振り返ると呆然としているバルト達がいた。


「……連れてきたの?」

「いや、半分は君のせいだからね?本当にこんなに人外を作っちゃって……」

「もしかしてSSSにしちゃったから?」

「そう。こんなにSSSが生まれたらそりゃあ連れてこない訳にはいかないよね」


だってできちゃったんだもん。仕方がないよね。それよりも、そうか。前世の事、話さないと駄目だよね。説明が大変だよ、本当。


「……異世界転生……」

「まあ、平たく言えばそうなるよね」


バルト達に前世の話をした。思った以上に素直に受け入れられた。なんかもっと化け物扱いされるかと思ったけど。


「SSSの時点で既に化け物やわ」

「酷い理由だった!?」

「まあ、僕達がここまで強くなれたのはリリアのおかげだからねぇ」

「なんだかんだで感謝してるからな」

「今更な気もするな」

「むしろ神系の称号があるのも納得出来るな」


つまりリリアが規格外な理由が分かってすっきりしたと。拍子抜けだが、まあいいか。


「じゃあ、先に進んでいいか?」

「あ、お願いします」


スグルは優雅にコーヒーを飲んでいう。説明するのに場所を変えようという事でスグルの家にお邪魔した。ここはスグルが作った世界アトランティス。だが、リリア達がいる場所とは少し時空を歪めた場所。説明をしていたが、いまいち理解が出来なかったので『鏡に映った世界の様なものだ』という認識となった。リリア達が住んでいる世界は人間の力によって発展しているが、ここはスグルしかいないので草木の生茂る楽園の様な状態。その真ん中に前世にもあった様な一軒家があるだけだ。そこでコーヒーを頂きながら話をしていた。結局、どうしてここに連れてきたのだろう。


「実は、今後の事を話そうと思って」

「今後ですか?」

「ああ。君達はこのまま生きていって、まあいずれは死ぬだろう?」

「随分ザックリやな」


メイベルは呆れて言う。


「でも実際そうだろう?」

「まあ、そうですね。いろんな事をしながら年取って死にますよね」

「問題はそのあとなんだ。リリアは前世がこの世界とは違う。しかし、元の世界には戻してやれないんだ。こっちの世界に連れてきた理由も理由だったからな」

「と言うと?」

「お前はギリシャ神話のゼウスって知ってるか?」

「全知全能の神ですよね?あの稀代の女たらしで有名な」


美しい女がいると知ったら黙ってはいられない男として有名だった。妻のヘラも愛の女神だが、ゼウスの不倫相手に対する天罰がえげつなかったと記憶している。内容までは詳しくはないけど。


「そこまで知ってたら十分だ。何しろこっちに連れて来た理由が『それ』だからな」

「……まさか……」

「うん。そのまさか」

「他国なのに良いんですか?」

「加護だけだからな。加護が届くということは天罰も届いちゃうんだ」

「……あーのーねー……」

「おっと!ここでキレるなよ?」

「キレないですけど、呆れてはいますね」

「殺気出しながら言うセリフじゃないな」


スグルは笑う。バルト達はわかっていないので説明する。つまりゼウスが前世の紗智に惚れて、でも他国の子だから手はだせないけど加護は与えていたと。そのおかげで学生の頃までは順風満帆だったと。でもそれに気がついたヘラが天罰を加えたと。その結果がブラック企業就職と交通事故死だったと。


「んで、お前、家系的に神道だっただろう?その時に信仰していた神様が俺に救助を依頼して来たんだ。地球から離さないと転生後も天罰が続いちまうし、そんなの許す訳にいかないからってさ」

「他国の神に出張られて悪影響を及ぼされたらそりゃあね」

「今向こうは大変な国際問題になっちまってるんだとさ。その八つ当たりにヘラ様はお前を探してるらしい。見つかったとしてもこっちにまで天罰はこないから安心しろ」

「助けていただいて感謝します」

「で、だ。こっちの人間じゃないお前を実はこっちで転生に乗せられないんだ。そう言う決まりでな」


異世界から招くことは出来る、しかし、その魂をそのままこの世界で回し続ける事はできないと。だからこっちで人生を送った転生者は地球に戻されているのだとか。


「加えて、お前と関わったこの5人はかなり影響を受けている。特に旦那はな」

「おいそれと転生させられなくなっちゃったと」

「しかもこの世界の魔力が急激に増えちまってな。お前を受け入れる時に地球からの慰謝料として魔力を譲ってもらったんだ」

「魔力を?」

「おう。この世界は魔力が枯渇しかけてたからな。お前が転生した時から魔法使いが増えただろう?それが理由なんだ」

「なんで枯渇しかけたんですか?」

「それが、お前らをここに呼んだ理由だ」


スグルは真剣な顔になる。


「僕はな、もうそろそろ限界なんだ。消滅が近いんだよ」


カミングアウト回です。悩みましたけど、のちのことを考えたらカミングアウトしたほうがいいかと思いました。そしてゼウス!



予約投稿です。誤字脱字がありましたら連絡お願いします

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