凶暴化に関する仮説と暗躍
「人為的に上位種になる方法を知った者がいる可能性がある、か」
陛下は唸るように言う。
「正確にはそれを実行に移した者がいる、ですね。推測だけなら私もしてますから」
「……その正確さはどのくらいだ?」
「実験をしてません。だから五分五分ですね」
「そうか。この場にはそなた達と余しかおらん。……その方法とは?」
「……魔石ですね」
「魔石?」
昔、森で狩りをした時に不用意にゴブリンの魔石に触れたフォレストウルフが巨体化したのを見た事がある。その時は魔石の魔力を吸収して、それに合うだけの器になったのだと思っていた。しかし、書庫で例の記述を見て『もしかして……』とは思っている。
「フォレストウルフは上位種がありませんから、巨体化しただけなのかもしれません。それも討伐されたゴブリンの魔石に触れていました。普通のゴブリンならそこまでにはならなかったでしょうけど、ゴブリンメイジの魔石でしたからね。元々その個体に見合わない魔力が流れ込むと人間でも魔力酔いしますし、魔獣なら凶暴化することもあるのかもしれません」
「そのフォレストウルフは?」
「私の従魔として領地の森を見回ってますよ。強いですし、群れのボスになってます」
「凶暴化はしてないと」
「言ってもゴブリンですからね。下級魔獣の魔石で凶暴化はしないでしょうね」
「つまり、己より上級の魔獣の魔石であれば……」
「可能性はある、という事ですね」
陛下はぐったりしている。本当は可能性がないであって欲しかったのだ。その願いは儚くも崩れ去ってしまったが。
「……公表できん内容だな」
「当然です。だから騎士団長の前では誤魔化したんです」
「……そうか。たまたま知ったのがリリア嬢で良かった」
流石に言わなかった『城の人間なら読んだかもしれませんよ?』という言葉は、紅茶と共に飲み込まれた。
その日の夜。王城の一室でドミニクは苛立っていた。
「どうしてこうなるのだ!」
「申し訳ありません。しかし、実験は成功と言えます。これで次の段階に進めます」
そう言った男はフード付きのマントを羽織っていて顔は見えない。
「本当だろうな」
「はい。ダンジョンでの実験をすぐにでも始めようと思います」
「さっさとしろ。そしてあの忌々しい『エンシェント☆キラーズ』を全滅させるんだ」
「御意のままに」
男はそう言って姿を消した。ドミニクはニヤニヤしながら紅茶をグイッと飲み切った。
「楽しみだ……今に見ていろよ、リリア・フォン・エルドラン公爵……」
異世界ものでは、その身に合わない魔力を注ぐと凶暴化するか肉体が保たないかですよね。この世界では凶暴化します。そして懲りない王子だなぁ……
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