石鹸作り
ひょんな事から石鹸づくりをする事になった。
灰はこの時期暖炉を使えばいくらでも手に入る。油は植物性のものを用意した。水も用意して、あとは……
「錬金術?」
「そう。ここに入れてあとはお任せ!」
この世界の錬金術、思いの外便利なのだ。魔法陣の中に置いて魔力を通すと、スキル鑑定の時の様に壁に作れるものが映写されるのだ。そしてその中から作りたいものを選ぶと一瞬で作ってくれるのだ。今回は布に書かれた魔法陣を使う。
「あ、出たね」
「ホンマや!石鹸って出とる!」
「へぇ。本当に作れるんだねぇ」
石鹸を選ぶと材料が光に包まれ、消えるといくつかの四角い固形物が出来ていた。それは懐かしの石鹸だった。
「はい、完成」
「ホンマ、石鹸になっとる……」
本当はハンドソープを作りたかったけど、あれってポンプ必要なんだよね。流石に流通させちゃいけない気がする。
「これならコストも安いから平民でも使えるでしょ?」
「これ、革命やで!すぐにおとんに言うて作らせるわ!」
「それがいいね。バルト、手紙と一緒にこれをいくつかロベルト領に送って」
「分かった。ザック商会で売り出す計画を立てている事も言っておく」
急ピッチで作業は進む。ロベルト侯爵は感動していたし、ザック会頭はメイベルと同じ様に『これは革命やぁ!』と叫んでいた。結局、商会から材料を送ってもらい大量生産し、その製作料として売り上げの一部をいただく事にした。寄子の領地にも輸出し、安価に石鹸が手に入ることから領民からの人気が爆発。石鹸の材料を無料公開し、形を改良したり油を変えてみたりしながら多くの石鹸が流通し始めた。本当はレシピも有料にしようと言う話があったが、それでは多くの人達に広まらないと言うことで無料にした。素材にこだわらなければ平民も使えると言うのは国の衛生管理において非常に有用だ。特に学園の手洗い場など数を仕入れなければならない場合は一番安いもので構わないわけだし、元々あった薬用石鹸は香油などを使って付加価値もつければ貴族が求めるだろう。
「スティーブからセバス経由で陛下に流行病の予防策を提示しておきました。今後国内に広く伝えられるでしょう」
ガッツは執務室で仕事中のリリアに言う。今季の感染性胃腸炎の感染率が減っているそうだ。肉にはしっかり火を通す。大事だね。
それでもインフルエンザと思しき症例は出ている。これは飛沫感染だったはずだ。手洗いうがいだけでは防ぎきれない事もある。
「あとはマスクかな」
「マスク、ですか?」
「外出して感染者の唾とかの飛沫で感染する流行病はマスクをした方が防げるからね」
「なるほど。しかしマスクと言うと……」
「分かってる。流石にフルフェイスマスクは流行らないし流行らせるわけにはいかないよ」
リリアがそう言って笑うとガッツは少しほっとした様に笑った。まさか闇ギルドの人間と区別がつかないのは困る。そこで用意したのは前世でも主流だった鼻と口だけを隠すマスクだ。布に殺菌効果のある薬草を染み込ませ、ウイルスが入り込まない様にしてある。それで蛇腹マスクを作ったのだ。ちなみに、これも錬金術で作れた。錬金術マジ便利。
「リリアはなんでも出来るんだな」
「これなら各家庭で作る事も可能だからねぇ」
「布も薬草を煮出して、そこに布を入れて染み込ませれば良いからな」
「その薬草も安価で手に入るし、冒険者やっとったら採取依頼をこなせるさかい、冒険者も喜ぶわ」
「これもレシピは無料にするのか?」
「いや、これは有料にする。そして材料をうちの領地からザック商会に納品して、それを買ってもらって作ったものを販売出来れば誰でも収入になるでしょ?」
材料は商会で仕入れて、それでマスクを作る。家族の分は取り置いて、残りはザック商会で買い取ってもらう。教会で保護されている子供達にも作ることが出来る。洋裁の苦手な人も一定数いるし、需要は絶対にある。あとはザック商会で販売したら国民に広く行き渡るだろう。
「ホンマ、ウチはもうかってありがたいんやけどな」
「リリアは本当に……」
「よく思いつくよな」
「薬草はこの領地でも採取出来るし、それで布を生産してザック商会に下ろせば領地の収入にもなる」
「これから領地の開拓に金もかかるからねぇ。この収入はありがたいよね」
その通りだ。この収入で雪解けと同時に一気に改革が進んでいく。そのために少しでも収入は多い方がいい。
異世界転生モノ名物石鹸造り!
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