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若気の至り?

救護室から簡易のベッドを運び込み、リリアを寝かせることが出来た。別に魔力切れではない。体力も問題はない。ただ、身体強化を体が許す限界まで行使しクロックアップという思考加速の魔法も使い自身を極限まで高めた結果、肉体がもたなかったのだ。脳みそも強制終了がかかった状態だった。意識は夜には戻ったものの、筋肉疲労も激しくまともには動けなかった。幸い回復薬が薬品棚にあったため助かった。


「バルトから話は聞いた。全く、無茶苦茶だな、お前も」

「すいません……」


様子を見に来たライオネル先生に言われ、流石のリリアも少し反省した。


「まさか動けなくなるとは思ってなかった……」

「ホンマや。バルトと一緒に行っとって良かったなぁ」

「明日はゆっくり休め」

「小屋の片付け以外は僕達でやっておくよ」

「ありがとう」


まあ、リリアが無茶したかいもあったか、ゴブリンの国は滅びた。キングを倒したおかげで倒しやすくなったゴブリンは先生達の力でねじ伏せることに成功したのだ。逃げたのもいただろうがそれはギルドに報告して冒険者達で討伐するらしい。先生達の勇姿を見て、生徒達は思うところもあった様だ。


「フェルデールからも話は少し聞けた。ブレスレットの件は陛下とも話して色々考える」

「お願いします。……あの、フェルデールとレオールは?」

「フェルデールは骨折をしてた。回復魔法で治したが、一晩は救護室で様子を見る。レオールは手首から下を失った。現場を見に行った医師団が奴の切り落とされた腕を発見してビックリしてたぞ。アイツ、肩から切断されてたんだな」


そう、レオールはドミニクを庇い、右肩から腕を切断してしまったのだ。それを見たリリアは回復魔法をかけたのだが……


「いつもだったら再生出来たんですけどね…再生し切る前に意識を失ってしまって……」

「まあ、普通は不可能なんだからな。あそこまで再生させたのは奇跡だ」

「でも、もう剣は握れません。切断直後なら回復魔法で再生出来たんですがね」

「……若さ故に馬鹿をするのは誰にでもあるが、取り返しのつかない代償を負ったな」

「……」


空気が重たくなった。ドミニクを守るために存在している様なものだ。存在意義を失ったレオールは果してどうするのだろうか。


「明後日、戻ったらそこから一ヶ月は夏休みだ。お前もゆっくり休め」

「はい。そうします」

「ではな」


ライオネル先生はリリアの頭をポンと撫でて小屋を出ていった。


「……はぁ。とりあえず、夕飯食べよか?」


メイベルは立ち上がってキッチンに向かう。フィアンが手伝うと言って一緒に行った。


「しかし、流石に疲れたねぇ」

「ゴブリンとはいえ、数が数だったからな」

「でも、どうしてドミニク達はあんな所にいたんだろう」


彼らはSクラスとはいえゴブリンキングはまだ倒せないはず。そんなのは自分たちが一番わかっていたはずだ。ただのゴブリンでも数が揃えば騎士団でさえも押し負けてしまう。


「何か特殊な素材はあったかい?」

「いや、なかったと思うが……」

「ゴブリンが貴重な素材を持っていたとは思えないし……」


ゴブリンは単体であればGランクだ。魔石も価値はなく、売れる素材もない。


「ゴブリンやからって舐めとったんちゃうん?あの規模ならゴブリンロードかゴブリンナイトはいるって誰でも想像つくやろ?」

「確かに、キングは無理でも運が良ければナイトは行けるかもとは思ったかもなぁ」


メイベルとフィアンは食器と大きな鍋を持ってくる。


「今日はちょっと狡やったかもしれんけど、パントリーから肉を拝借したわ」

「狩り出来なかったからな」

「そっか。ありがとう」


ボアの肉を使った鍋だった。ボアは栄養価も高く、疲れた体によく効くという。ゴブリン討伐にほぼ一日を要したため、どこの班も狩りができていないそうだ。そういう班は先生達がフォローしたらしい。


「意識ない間で悪いとは思ったんだけどな。どうしてもどうにもならなかった班にパントリーから配ったんだ」


申し訳なかったとバルトは頭を下げる。謝る事なんてないのに。


「そういう時のための備蓄だから、問題ないでしょ」

「そうか」


とりあえず食べないと体も治らないしね。ベッドから足を下ろす。


「そこに座って食べ。今よそうさかいな」

「ありがとう」


メイベルがよそってくれた鍋はボアの肉が多く入っていた。体のことを考えてくれたのだろう。臭みけしのハーブも具として生かされている。シンプルだが美味しい。


「これ食べて早よねぇや?」

「そうだな。明日はゴブリン討伐の後始末だけだからな。あと色々と調査は俺達でやっておくし」

「ドミニクとレオールの事で先生と話さないといけないだろう。それは俺が付き添う。ゴブリンの処理はメイベル、森の調査はフィアンとレオンに頼んで良いか?」

「任された」

「構わないよ」


こういう時にパーティはありがたい。食べ終わるとすぐにベッドに潜らされたが、そうでなくてもポーションで落ち着かせただけの体は休みたがっていてすぐに睡魔が襲って来る。ベッドに寝袋という少し違和感のある状態で、リリアはあっという間に眠りについたのだった。


若気の至りとはいえ、後戻りの出来ない怪我は厳しいですよね。


予約投稿です。誤字脱字がありましたら連絡お願いします。

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