国王との約束を果たすために
「何でやねん!!!」
メイベル渾身のツッコミが入る。それは謁見からの帰路の途中、馬車の中での事だった。
「仕方がないよ、メイベル。頑張ろう」
「せやかて!」
「大丈夫。メイベルは出来る子」
「そうゆー事ちゃう!」
「陛下の前で宣言しちまったからなぁ、リリアが」
「確かにレベル上げは必要だもんねぇ」
メイベルは頭を抱えている。リリアとて無計画でそんな事考えた訳ではない。
「大丈夫。ちゃんと作戦は立ててある」
「ホンマか?」
「ええ、任せて!」
「……なんや、不安になる笑顔やなぁ」
「イタズラを企てている子供の様だね」
「失礼な」
全員無事じゃないと意味がないんだからそこまでじゃないよ。……多分ね。そんなこんなで到着したのは冒険者ギルドだった。
「おはようございます。報酬を受け取りに来ました」
「お待ちしておりました。ギルドマスターがお待ちです」
すぐに執務室に案内された。
「よぉ、来たか」
「おはようございます」
「おはようさん。まあ座れよ」
紅茶がすぐに出てきて、報酬の入った袋が5個置かれた。
「5等分に分けておいた。これがブラックウルフの討伐報酬だ」
「ありがとうございます」
「何、いいさ」
かなりの報酬だ。どのくらい入ってるのだろう。メイベルとフィアンはドキドキしている様だ。
「では、安心して本編に入れますね」
「本編?」
「レベル上げの話です」
「おう、それか」
ギルマスはワクワクしている。いくつになっても強くなりたい欲はある様だ。
「まずはこれを」
そう言って渡したのはネックレスだった。
「これは?」
「『パーティーの輪』です」
「え“!?」
「これを使ってレベル上げしましょう。全員分ありますから」
「こんな高価なものを人数分!?」
「買ったの!?」
「いえ、作りました」
「「「「「作った!?」」」」」
普通、学園1年生で作れる代物ではないのだ。だがしかし、リリアに普通は通用しない。まるで前世の鬱憤をはらすかの様に自重せずに暴走している。
「これを装備して私とギルマスでダンジョンを攻略します」
「……おう」
「ギルマス……」
「で、バルトとメイベル、レオン、フィアンが30までレベルが上がり次第、彼らも討伐に参加してもらいます」
「30レベルまで行かないと討伐できないダンジョン……」
「はい。“深淵の森” です」
全員ため息を吐いた。“深淵の森” とは、冒険者がこぞってチャレンジして脱落者が多発するダンジョン。そこを攻略出来れば羨望の眼差しを浴びる場所だ。
「とりあえず、バルト達は透明化の魔道具も装備して魔獣達に気がつかれない様にしようね」
「「「「「……」」」」」
「で、ギルマスと私はひたすらダンジョンを周回。これでギルマスのレベル上げも出来ます」
「……期間は?」
「とりあえず今日と明日の2日でバルト達を30にします。運が良ければ明日にはダンジョン攻略出来るかな。ギルマスも70にはなるんでは?」
「……そうか」
ギルマスは色々諦めた様な表情になる。
「では早速行きましょうか」
「ちょい待ちーな!アタシらなんも装備してへんで!」
「どうせ攻略するのは私とギルマスだけだよ?透明化の魔道具装備するんだし、大丈夫だよ」
あなた達には指一本触れさせない、と言ってやると何とも微妙そうな顔をされた。
「嬉しいんやけどな……」
「状況がねぇ……」
「ギルマス、がんばれ……」
「ギルドマスター、リリアをお願いします……」
「おう、任された……」
こうして自重を忘れたリーダーに引きずられる形でダンジョン攻略に向かったのだ。
自重?何それ美味しいの?
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