第4話:僕は部室に向かう。
授業がすべて終わった。僕は防具を取りに講堂の前にいた。
剣道部の先輩、後輩そして同級生・・・・みんないいやつばっかりだったな・・・
さっきまで防具がおいてあった棚の立川というシールははがされてしまった。
未練はない。後戻りはできない。これからは同じ部員ではなく普通の同級生として接すればいいのだ。そう僕、立川奏は剣道部だった。
退部届はもうにぎられていない。しかたないのだ俺は剣道は大嫌いだ。剣道部の顧問が嫌いだ。やつのことを考えると吐き気と頭痛がおこる。
そして・・・こんこんと湧きあがる殺意が僕を【変える】のでは無いのかと怖かった。
瞳孔が開く・・・にやりと口が勝手にほくそ笑む。
ウヒヒヒヒヒヒヒ・・・・・・・・
片目から涙がこぼれる。
このままではいけない。抑えなくては。
背中に背負った木刀を迷うことなく引き抜きそうで・・・・
クハ・・・ククク・・・クヒヒヒヒ・・・・・・・・
理性が飛んだ『覚醒』
口が勝手にそう唱えた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
クハッ・・・ウフフフフフ・・・・・・。
渉先生だ〜。
クフッ。
木刀が青く怪しく光る。綺麗だ。ウフッ。
「もうすこし待ってね。俺が君に御馳走してあげるから。ウフッ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「渉先生の腐った・・・・タマシイを。クフッ。」
抜刀。中段の構え。青白い光が消える。
目の色が真っ黒く沈んでいくのを見たのは。
いまから死ぬ人。
剣道部顧問渉先生。
でも、ただそれだけのこと。
「立川何の真似だ?」
平静を装ったセリフとは裏腹に確かにそして急速に恐怖で顔はゆがみ始めている。
「先生。おっさんなのにそんな顔すんなよ。クヒッ。
・・・・・・・・・・・・・・。ヤリタクなちゃうじゃんか。クフフ。」
叫ぶ間は与えない。
最高速度を維持し。
頸動脈を。
・・・・・・・・・・。
裂く!!!!
ブツリッ なにかが千切れる。いつの間にか鉄の味がして俺は笑った。
「食べなよ・・・・。怨。渉の死体とこいつに関するものすべてを消せ」
「わかったよ。さようなら。渉せんせっ」
俺の木刀はかわいい女の子の声でそういった。
怨は木刀から離れた。
後ろに髪の毛を藍色のゴムで束ねている。静かな落ち着いた雰囲気で少し冷たい目をしている。
まつ毛が長く目が大きい。スタイルはいいのではないか?
ウエストが細くお尻が小さい。胸はB〜Cはあるのではないか?
かわいい系というよりクールなお姉さん系といったところか。深い藍色の制服を着ている。
しかし、怨は悪霊である。俺の世界への憎しみを気に入り。【変わった】時にだけ木刀に憑依し・・・・普段は後ろについて離れない。
正直、がちのタイプではあるが相手が悪霊なので手の付けようがない。
怨の説明はこれでいいだろうか?
怨は手を前に翳す。
「いただきまーす。」
あっという間にすべてが消えた。
風穴が怨の手から開いたのだ。そこにはもう何も残ってない。
血も肉も・・・・証拠も。
怒りが冷める。いつもの俺に戻る。
瞳孔が閉じる。100%以上の力を出したからか。尋常じゃない疲労感が襲う。
呼吸は浅い、過呼吸になりそうだ・・・
フグゥ〜グフッ・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
目の前が暗い。僕はまた発動してしまったのか。
思い出す鮮明に。瞼の裏側にこびりついている。
噴き出す鮮血。嬉しそうな「あいつ」
思い出して少し吐いた。お昼のグリンピースが混じっている。
豆はきらいだ。
幸い誰も通らなかったようだ。
いや、通らないのは知っていた。ここは今の時間渉が車を動かしに来るだけの寂しい場所だから。
楠が風でゆれている。
振り向くと怨がいた。
「虚ろな目をしちゃってかわいいわね。クスッ・・・早くいくんでしょ。生物部に」
「今日はめんどくさいよ。それに疲れた。」
「あら?知らないの生物部はみんなサイキッカーなのよ。機嫌を損ねさせて殺されちゃったらどうするの?」
誰も僕が【変わった】時には殺せやしないのに・・・
とか思ったが。
怨はどんな能力者がいるか興味津津のようだ。
別に逆らっても損なだけだろう。
僕は少し遅れたが、部室のある校舎に歩きだしたのだった。