第2話:僕らは学校へ急ぐ
さて・・今日も学校行くかっ・・
朝ごはんのウィダーを口にくわえて自転車に飛び乗る。今日も赤い俺の愛車(競輪チャリ)は機嫌がいいな。学校までのみちのりは峠をこえないといけない。ギアの油もよく注いで昨日みたいにキリキリ悲鳴はあげてはいない。
ウォークマンからはナイトメアがギンギン響いてる。ハードロックは俺を奮い立たせる。
気分がよくてゾクッと背筋がしている。でも・・あんまり調子に乗ってはいけない。
能力を抑えられなくなるから。うふふっ。
俺、竹地優はそうやって妙なテンションで峠を登っていた。
沢山の学生を追いぬかしながら涼しい向かい風を浴びるのはこの上ない優越感を感じて快感だ。うふふっ。
しかし、学生と書いてごみと読んでるもののこの俺も高校1年生だ。
やはり俺は自己中でSいやつなのだろうか。
まっそこにはあえて目を向けまい。
踏切が降りた。電車が来るのだろう。これは尾宮と里広と比良島が乗ってくる電車だな〜 と眺めた。ゴーっという電車の音がナイトメアを少しかき消した。
いつの間にか俺の後ろに 色黒ガリと眼鏡偽ハーフがチャリに乗って待っていた。
羽鳥涼平と丈田圭弌だ。
まっ、ガラじゃないが友達ってやつか?
「ごきげんよう、なめくじやろうども。」
ヘッドホンをはずしていつもどおりのあいさつをした。周囲の目は気にしない。
どうせむさい男か熟女世代のババァばっかだから。
「おおっ よぉ・・・って朝からどぎついな〜もっとヤワっこくしろよ。」
しっかり丈田はつっこんでくれた。まじめだからチャリの上では音楽聴いてないみたいだ。
まっ、俺らのメンバーで唯一の常識人ってやつか?
一方、羽鳥のバカは聞いてすらない。音漏れから聞こえるのはUVERの曲か。
目が死んでる、大きなあくびをしてアリを見つけたような目で俺をいま確認した。
ガリガリフラフラ寝不足バカだ。
しかし、俺としてはうれしいバカだ。これで【飛ぶ】ことができる。
ここからチャリをこぐのはだるい。
「トリ・・・メキシコ・・・いっしょに公園のトイレいくぜ」
トリは羽鳥、メキシコは丈田なのは言うまでもあるまい。
「あ?いいけど・・・トリの気分によるぜ。【飛ぶ】のは・・・おい、聞いた通りだ。おい、
イヤホンはずせ聞いてすらねーのかよ。」
クァッ〜
小さなあくびをひとつして死んだ目のまま
「は?アレしたらウーヴァゆっくり聴けねーだろーが。」
やる気のなさが滲んでいる。
きっとトリは生きるのすらめんどくさいのだろう。うん過言じゃないな・・・
「バーカ 無力な蟲に拒否権なんかねーんだよ。」
「はいはい・・・わかった、わかった・・・・クァッ〜。・・・・・・・・・・・・・・。
でもさ〜今ここ人いなくなったからここで【飛ぶ】よ。トイレまで行くのめんどい。」
そういえばみんな渡りきってしまって元の寂しい踏切に戻っている。
しっかりトリの肩につかまる。
「じゃ、学校のチャリ置き場に行きまーす」
口を開いた唱える!
『飛行!』
トリはぼそっと呟くように唱えた。
これで学校に瞬間移動だ!そんなことを思っていたのはもう駐輪場でのこと。