1話:僕は気持を隠して
不快だった・・・。大好きなガーネットクロウを聞いてるのに落ち着かない。
行きたかった学校はさっきの駅で降りなきゃいけないのに僕は降りることは出来ない。
負けたのか?夢すら持ってない僕には人生はこんなもんでいいってことか?
僕 立川奏はアイポッドを片手に小刻みに貧乏ゆすりをしていた。
この世の大人をすべて殺してやりたい・・・それが出来ない・・そんなのわかってる。
人生を代償に落ち着きを取り戻すなんてバカのやること いやバカもしない・・・
このまま生まれてこなかったことになって誰の記憶に残らずフッと消えてなくなれないものか
と何時も思う。こんな僕は頭がおかしいのかと不安が漠然と湧いてきた。
だめだ・・我に帰れない クソッ
誰かが肩に手をおいた。尾宮だ。
「おいイヤホンはずせって。呼んだのに聞こえてないから無視されたみたいで恥ずいだろが」
「ああ・・ごめんごめん・・・で何?」
僕は軽く微笑んで訪ねた。
「これを見ろ!最高傑作だ」
なにが?と思ったがよく見ると手のひらに銀紙で作った折り紙のカエルが乗っていた。
器用なもんだと関心した。ずっと隣で作っていたらしいのに僕はまったく気付かなかった・・
僕はそんなにも殻にこもってたのかとあらためて気付いた。
ピンピンと小さなカエルを指で弾く尾宮が無邪気に見えて・・・
僕は少し笑った。さっきの微笑みとは別物の・・・素の・・
浅くない友達はもしかしたら不安も作り笑いも見抜いてるのかもしれない。
そしてそんなことを思っていると僕らの乗った電車は駅に滑り込んだのだった。