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夢幻の住人  作者: 昼行灯
41/43

41:呪い

 柔らかかったな、という思いとともに目を覚ます。

 「ん? なんか夢を見ていたような気が、、、ま、いいか」

 フジワラ、適当な男である。

 「お、なんだ、スキルが変化してるぜ、魔槍技(まそうぎ)か、ラッキー!」

 フジワラ、軽い男である。



 ぶつかった壁にもたれたままリン達を見る。


 部屋の中央に横たわるリン。

 所々引き裂かれた真っ白なローブから覗く透き通るような腕や首筋、そして閉じた瞳から流れ出た血の涙の跡。

 美しかった黒髪は、真っ白な白髪(プラチナ)へと変わってしまっている。


 白く輝くようなその姿は神々しくさえ見えて、まるで、この世に存在していないかのような、、ドキリと心臓が跳ねる。


 生きている、よな?


 視線を胸に向ければ、胸の上に丸まっているネコが規則正しく上下している。ていうか、ネコ、お前、、なんて所に、、、


 ………………


 …………


 ……


 なにか、


 ムクムクとなにか(よこしま)な感情が、首をもたげてくる。


 柔らかかったんだよな、うん。


 そういやリンに触ったの初めてじゃね?


 なんか、あれだ、


 お姫様の眠りは、王子様のキッスで解けるっていうよな、うん、


 え? 関係なくないだろ、やっぱここはさ、


 うん、


 よろしくねって言われたし、


 うん、


 ちょっとだけ、ネコも寝てるし、


 うん、


 本気を出すぜ!!!


 日頃鍛えた隠密のスキル。ここで使わずいつ使うのか!?


 気配を完全に消す。


 そして、音を立てずに静かに立ちあが、ポトリ、と立ち上がろうと伸ばした手が落ちる。


 「は?」


 え、なになになになに? やばいやばいやばいやばい!


 慌てず騒がずに、ゆっくりと元の態勢に戻る。


 ゆっくりと落ちた手を掴み、切り口にくっ付け、回復魔法最大出力!


 なんとか元通りにくっつく俺の腕。お帰り俺の腕。


 てか、なんだこれ、もしかして、見えない糸がそこら中に張り巡らされている?


 リンを見るが、完全に意識はない御様子。


 「無意識下の自動防御?」

 マジで? なんか容赦なく腕斬られたんですけど、ヤバくね?


 意識無いよね?

 ……………うん、無いね。


 ……………


 紳士な俺はここからリンとネコの回復を待つことに決めたぜ!!!


 ふふ、俺は見守りの紳士。紳士フジワラだぜ!


 ……………………


 ………………


 …………


 ……


 あー、暇だ。


 ……


 …………


 ………………


 ……………………



 覚悟、か。


 ネコの言葉を思い出す。


 戯れで、俺に聞かれてないと思って言ったのかもしれない助言。


 ゴブリン城で、ネコに殺された時。消えていく意識の中、囁くようにネコが言った言葉。


 「小僧、お前は既に選択しているのだ。スキル強奪を使わないという選択を、その意味を理解しろ。既に踏み出している事を理解してお前の意志で、、、」


 ここで意識が途切れた。


 なにを意味している言葉なのか、【スキル強奪を使わないという選択】これの意味する事は何か、


 リンが来るのが予定より早かったとも言っていたな。


 ネコがゴブリン城で俺にやらせようとしていた事。それに、スキル強奪を発動しないという事。いや、、、スキルを発動しないという事、なのか?


 そういう事なの、か?


 閃き、言葉が結び付く。しかし、




 【藤原という名は、不死の原という意味なのだよ、滅びぬ一族の名さ】




 誰に聞いた言葉だったか、何を言っているのかと一笑に伏した記憶が蘇る。


 ……………………


 ………………


 …………


 ……


 なぜ俺は、フジワラと名乗ったのだろうか?


 リンは、リンと自分で決めたのだろうか?


 背筋に悪寒が走る。


 名に縛られるなんて、まるで呪いだ。


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