40:別れ
静寂が訪れる。
わけのわからないうちに決着がついてしまった。
取り敢えずは、まあいい。
宙に浮いているリンのところに向かう。
地上に降りてきたリン。
その姿に言葉を失う。
「フジワラ君」
そう呼ぶリンのその瞳には光が無い。
「お、おぅ。ここだぜ」
金色の光がなくなったということではなく、その瞳は視力を失っているのだ。
「良かった、巻き込まれてないね」
そして美しかった絹のような黒髪は、
「おぅ、結界? のお陰で無傷だぜ」
「うん、良かった」
色が無い。その着ているローブと同じで真っ白だ。
「おぅ」
ぐらりとリンが倒れるのを、両腕で抱きとめる。
軽い。
その身体を抱きしめた瞬間、その軽さに驚く。そうだよな、女の子なんだよな。
と、と、と、と、、
「ありがと」
抱きしめられたままのリンが小さくつぶやく。
「お、おぅ」
ドキドキと早鐘を突く心臓の音を聞かれて無いかと余計ドキドキしてしまっている俺。
とぅ!
見えない眼で俺を見ながら、
「フジワラ君、悪いけどしばらく気を失うから。その間お願いね」
そうつぶやいたリンの身体から力が抜けていく。
くるん、くるん、くるん!
「お、おぅ」
言いつつ、脱力したリンを離さない様に、抱く腕に力を込める。
………
………抱く腕に力を込める。
………
………ギュッと抱きしめる。
………
ああ、やっぱり女の子だな、柔らか、どげしっ!!!
「ハブアァァ!」
ネコの助走をつけた空中三回転飛び蹴りを顔面にまともに喰らい吹き飛ぶ俺。
ふっ、わかってた、ぜ、、、と思いつつ盛大に壁にぶつかる俺。
ふっ、悔い、は、無い、、ぜ。
大きな満足感と共に俺の意識が闇に包まれる。
「よう、兄弟」
「あ? なんだ、アンタか」
「お? 驚かないんだな」
「夢だろ」
「なんだよ兄弟、素っ気ないなあ」
「で、なんだよ?」
「弟が世話になった。ありがとな」
「俺は何もしてねーよ」
「ハハッ、そうだな」
「……傷付くんだけど」
「これ、ありがとな」
童子切を手渡してくる。
「ああ、」
「あと、これもやるよ」
男の使っていた槍も手渡してくる。
「ん、ああ、いいのか貰って」
「ああ、もう必要無いしな」
寂しい事を言うなよ、バカ。
「じゃあ、ありがたく貰っておくわ」
「ああ、役立ててくれ」
「俺のメイン武器は刀だけどな」
「ハハハッ、そうだな」
…………
…………
…………
「じゃあ、いくわ」
「おう、じゃーな」
何処へゆくのか、それを聞くほど野暮ではない。
そう言えば、名前を聞いてなかったな。
振り向くが、そこには誰もいない、、
……まあ、いいか。
少しの寂しさと共に意識が光に包まれる。
フジワラは、槍装備:人間無骨を手に入れた!
フジワラは、スキル:魔槍技を手に入れた!