32:修羅場
「フジワラ君、その無駄に大きな殺気を今すぐ消して、その辺に座って静かにしててね」
「あ、はい」
言われた通りに壁際に正座する。
ぺろぺろぺろぺろ。
「クロも舐めるのやめて」
ぺろぺろぺろぺろ。
「ちょ、ほんとにやめてよ」
ぺろぺろぺろぺろ。
「謝るから、ゴメンって、」
ぺろぺろぺろぺろ。
「ちょ、ゴメン。今度好きなだけお肉食べさせてあげるから」
ぺろぺろぺ、ろぺろぺろぺろぺろぺろ。
「もうしないから、ね」
かぷ。
「ちょ、痛い。なんで噛むの?」
かぷかぷかぷ。
「いた、痛い、痛いって」
ぺろぺろぺろぺろ。
「なあ、楽しそうなとこ申し訳ないんだけど、何で止めたの? 俺もう少しでスーパーなアレに変身しそうだったんだけど」
「何? スーパーなアレって、怒りだけで強くなれるわけないでしょ、無駄に死ぬだけだよ?」
いや、ここは怒りでスーパーなアレになって舐めプして迷宮破壊までがセオリーじゃね?
「ネコ、なんとか言ってくれよ」
「一般人の小僧にはムリ、戦闘ネコ族の我なら可能」
「なんだよ、それ」
安心する。
いつものリンとネコがそこに居る。
つまり、そういうことだ。
俺には絶望的状況にしか見えないが、大丈夫なのだろう。
色々なことが頭をよぎるが、俺は言われた通り、黙ってここに座っていれば良いのだろう。
実質、蚊帳の外宣言だな。
「リン、いくらなんでもアレではバランスが悪すぎなのだ」
「ん、」
「戦力差があり過ぎなのだ」
「うん、そうだね」
「あの見ているだけのヤツの戦力に期待しているのか?」
森蘭丸。今回の災厄の張本人。
「んー、そうだね」
「矛先がリンに向いてしまうのではないか?」
「大丈夫、、、ほら、始まるよ」
その言葉に視線を向ければ、今まさに一方的な蹂躙に近い戦闘が終わるところだった。




