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夢幻の住人  作者: 昼行灯
31/43

31:絶望

 赤鬼と青鬼。

 それを見た瞬間の感想だ。そして感じる強大な力、格が違う。

 魔人になる前のジジイと相対した時に感じた絶望が、ぬるま湯に感じるくらいの圧倒的な絶望感。

 隣に立つ男に感じた強さを遥かに凌駕するその圧倒的な暴力。


 相対するは、織田信長。ひと目でわかるその存在感、その隣に槍を構える男が一人、その人相、俺の隣にいる男と似ている。

 「オヤジ殿、ハハハッ」

 親子か、しかし、力の差は明らか、織田信長、その力量もズバ抜けているが、鬼の発する圧倒的な暴力の前には霞んでしまう。

 「じゃあな兄弟」

 突然の別れの言葉と共に、男が槍を構え歩き出す。


 「おい」

 思わず声をかけてしまう。勝てないだろ?

 「ん?」

 首だけ傾け、こちらを見る男の唇は自然に笑っている。


 ああ、

 それだけで理解出来てしまう。


 笑いながら死地へと向かう男。

 「じゃあな兄弟」

 贈るのはその言葉だけ。


 そういえば名前も知らなかったな。と思いつつ振り返る。








 ドクンッ!!!


 …………最初に飛び込んできたのは、真紅に染まる壁。


 …………その下に(うずくま)る血塗れの、、


 それを見た瞬間、頭の中が真っ白になる。



 動かない。


 引き裂かれたローブのから覗く、肩から先には腕が無い。両腕が無い!


 地面に広がる血の池に顔を(うず)め。静かに目を閉じている。


 血の池に座り込み、血塗れの顔をペロペロと舐め続けるネコ。



 死。



 その言葉が頭の中を渦巻く。



 否定。



 ネコがいる。その時点で生きている。




 だが、しかし。

 目の前に存在する絶望。



 これが本当の絶望だ。絶対的な絶望。全てを失う絶望。受け入れることができない絶望。



 アア、コレニクラベタラ、ホカノゼツボウナド、ササイナコト。



 ダレガ?



 目の前が怒りで黒く染まる。



 ダレガヤッタ?


 

 コロス。



 コロス。



 コロス。



 イシキがクロクソマル。



 「落ち着いて」



 その声に黒く染まった視界が現実に戻される。


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