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夢幻の住人  作者: 昼行灯
17/43

17:風雲ゴブリン城

 ゴブリン城の迷宮。

 おかしな話だが城門がスタート地点で、王の間がゴールという一風変わった迷宮だ。

 王の間と言うのだから当然そこにいるのは王様、つまりキングだ。魔物としては弱い部類に入るゴブリンだがキングともなればユニークスキルも持っているだろうしドロップする品もレア度の高いもの、専用装備やもしかしたらユニークアイテムの取得も期待できる。

 それにゴブリンというのは人族と同じように職持ちが多いこともあり、ことによったら鑑定スキル持ちのゴブリンも存在するかもしれない。ゴブリン司祭(ビショップ)辺りが鑑定持ち職業と噂されている。

 当然、それほど貴重な職持ちがポップするのは王の間しかない。キングの取り巻きにビショップがいたら俺が確実に殺さなければいけない。どうせ言っても聞かないネコだし、王の間は全力で殺しにいかなくてはネコに一瞬で虐殺されてしまうだろう。

 ネンにはネンをいれて、ここは最高の肉料理で取引を持ちかけておくべきか、いや、下手に取引を持ちかけるとそれが裏目に出る可能性もある。ここは全力の一手だ。ヤッテヤルゼ!


 「ゴブリンキングを倒すぞー!」

 「キングゴブリンをぶっ殺ーす!」


 ん?


 「まてまて、ネコよ」

 「なんだ、バカよ」

 「おいおい、アホネコよ」

 「なんだなんだ、糞バカワラよ」

 「引くことを知らねーネコだな、ここは大人な俺が引いてやるか」

 「ばーかばーか」

 「あ゛? ヤンのかテメー!」

 「まあまて、我も大人だ。今までの暴言、ゆるすにゃん!」

 「あ゛あ゛あ゛? ザケンナクソネコ!」

 「どうどう、落ち着け、大人気ないぞ?」

 「グワアアアアアアアアアアア、モウヤダ! コノネコヤダ!」


 閑話休題(ひとやすみ)


 「でさ、ゴブリンキングとキングゴブリンって、別物じゃね?」

 「ただの倒置法」

 「いやいや、グレーターデーモンはデーモングレーターって言わねーだろ?」

 「うむ、確かに」

 「前に付くのは等級じゃね? で、後ろに付くのが職業みたいな? ゴブリンファイターとか」

 「うむ、一理あり」

 「だろ」

 「どっちが強いのだ?」

 「え、やっぱキングゴブリンじゃね、ゴブリンキングも従えてそうじゃね?」

 「おぉ! キングオブキングス!」

 「滅茶苦茶強そうじゃね」

 「燃える!」

 ま、実際居るのはゴブリンロードだったりしそうだけどな。



 固く閉ざされた城門に手をかけ、思いっきり押す。城門って(かんぬき)とかかける都合上内開きだよな、とか考えつつ門が少し開いたところで肩から重みが一瞬だけ消える。

 「ふぅ、なのだ」

 肩のネコがふぅとか言ってるんだけど。てかコイツ今、魔闘技の縮地使っただろ?

 「オイ、クソネコお前何した?」

 「安心しろ相棒(あいぼう)、我とお前の素晴らしい連携が発動しただけだ」

 俺は一度もネコを相棒と思った事はないけどな。てか、どう考えても敵だろ、よくてライバルとかか。


 門が開く。

 「クソネコよ、素晴らしいって、もしかしてこの全滅してるゴブリンどもの事か?」

 「うむ、相棒が門を開けると共に我が敵を殲滅する。この無駄の無い連携、素晴らしいと思わんか?」

 思わんな、てかわざとやってるよなこいつ。

 「オウ、俺のスキル強奪改というスキルは知ってるか?」

 「うむ、それがどうした?」

 「オオゥ、そうかそうか」

 そうくるか、クソネコめ!


 無言で走り出す俺。わざと肩を揺らすがガッチリ爪を立ててびくともしないネコ。てか爪が肩に食い込んでスゲー痛え。


 ダッダッダッダッダ!

 「トゥ!」

 ドガッ!

 全力ダッシュからのキックで扉を開け、着地と同時に刀を構え、

 「月下、」

 「ふぅ、なのだ」

 「…………」

 無言でクソネコを睨む。

 「くっくっく!」

 ドヤ顔で(わら)うクソクソネコ。


 

 アイテムボックスから肉串を取り出し。

 「ホーレホレホレ、肉串だぞー、(うま)いぞー」

 「じゅるり!」

 「ティ!」

 肉串を思いっきり後方の宙に放り投げる。ネコが目の前から消え次の瞬間宙の肉串にかぶりついている。

 ダッダッダッダッダ!

 「トゥ!」

 ドガッ!

 全力ダッシュからのキックで扉を開け、着地と同時に刀を構え、

 「月下、」

 ドスンッ! という音と共に潰れるゴブリン逹。

 「旨いのだ、むぐむぐ」

 肉串を咥えながらとことこと歩いてくるネコ。

 「…………」

 無言でクソネコを睨む。念動力で潰したな。

 「むぐむぐむぐむぐ」

 むぐむぐ肉を頬張るクソクソクソネコ。



 「…………」

 「…………」

 「…………」

 「…………」

 「なあ」

 「うむ?」

 「順番にしない?」

 「うむ、いいぞ」

 「え、マジ?」

 「うむ、我は相棒である小僧のためを思ってやってたのだが、迷惑そうだしな」

 「え、そうなの?」

 「うむ、実は今までのゴブリン全てが霊体スキル持ちだったのだ! ばばん!」

 「な、なんだってえ!」

 「ウソだが」

 「そうだろうな」

 雑なノリ突っ込みだ。



 いきなりネコが神妙な顔で話し出す。

 「ところで、真剣な話なのだが」

 「なんだ、いきなり」

 「小僧、不死とか取るつもりはないか?」

 「なにいってんだ?」

 「いわゆる、不死者(ノスフェラトゥ)と呼ばれる者逹のスキルなのだが」

 「吸血鬼とかだろ?」

 「うむ、スキル的には霊体の上位互換になるな」

 「物理無効の上に死なないってか」

 「うむ、その辺が重要なのだが、どうだ?」

 「どうだって、取るわけ無いだろ」

 何言ってんだコイツは。日の光を浴びれなくなるだろうが。

 「そうか」

 話はそれで終わる。なんなんだ?


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