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夢幻の住人  作者: 昼行灯
14/43

14:今後

 今後の行動を考える。

 もし、クロとフジワラ君の転移先が相手の想定通りの場所だった場合は考えたくもない。おそらく次元の迷宮入り口から転移できる場所だろうから最悪私も出向くしかなくなる。それ以前に何かしらのアクションが二人に行われた場合は状況によってはクロだけ私の元に召喚で呼び戻し、フジワラ君は諦めるしかない。

 まあ、クロがフジワラ君についていくことを選んだのだから最悪の結果というのはないだろうけど、ついていくことを選択した理由はフジワラ君を助けるためと言うのもあるけど、あの鶴は私に対して放たれた仕掛けの可能性が高いというのも理由のひとつだ、おそらくクロと私を間違えて仕掛けが発動したと考え相手の意図を探る意味も込めての最後の(うなず)き。


 二人に関してはクロからの念話か、クロのHPが削られるかしたら、私とクロは(そば)に居なくても互いに何か異常が起きたときは感じることが出来るので、対応を考えれば良い。


 それにしても、相手の出鼻(でばな)(くじ)く、戦いに於いての基本をきっちりをやって来る。下に見るとか余裕をかますとか言うことを一切してこない、油断がないのは彼等の最後が油断によるものだったからとかかな、こういう相手は非常にやりづらい。


 とにかく時間がない。

 まずはギルバートさん。どこにいるかわからないけど、連絡を取ってみよう。メッセージを伝える(しき)を放つ。早ければ明日、遅ければ十日後とかになるかもしれない、確実性に欠ける。あと出来ることは何があるか、


 「すみません、冒険者ギルドに寄ってもらえますか」


 もしかしたらウィリアムさんなら連絡する術を持っているか、居場所を知っているかもしれない。あの時、私が魔王ナベリウスを倒した時、一緒にいたのがギルバートさんということはウィリアムさんなら気づいていたはず。何かしらの策を講じたはず。おそらく。


 冒険者ギルドに到着する。


 「あ゛あ゛ぁん? フザケンナ、俺はお前らギルドに依頼をしてきた客だぞ? なんだその態度は、こっちに出てきて土下座しろ、ゴラァ!」

 「はい、申し訳ございません」

 「あ゛? こっち来いっていってるんだゴラァ!」


 揉めてる。面倒くさい。

 近くのギルド職員さんにウィリアムさんがいるか聞く。

 「あのー、ギルド長さんいます?」

 「え? はい、あ、リンちゃん」

 「どうも、で、ウィリアムさんいます?」

 「ごめんね、ギルド長もテレスも今居ないのよ」

 「あら、そうですか。ウィリアムさんと連絡取りたいんですけど」

 「ギルド長ならもうすぐ戻ると思うけど、」

 「ゴラァテメェら、お客様が謝罪を求めてるのに、なに笑いながら話してやがるんだゴラァ!」

 ただ話してただけなのに絡んでくる。面倒くさい。この人はお客様は神様です教の信者か何かなのだろうか、バカらしい。自分が周りから相手にされてないことを自覚した方がいい。皆冷めた目でそちらを伺っているだけで、誰も恐れた目で見てはいない。


 「テメェだ、テメェ、お、可愛い顔してるじゃねーかエエ? 俺はお前逹の仕事を依頼しに来たお客様だぞ、サービスしろやゴラァ!」


 手を捕まれる。


 ああ、


 そうだ、


 クロがいないんだ。


 いつもなら、こんなことをされる前に、ね。


 「ギャアアアアアアアアアアアア! イデエイデエエエエ!」


 糸で男の痛覚全てに刺激を与える。おそらく死んだほうがましとおもえるほど痛いだろう。白目を剥いて口から泡を吹きながらいろんなものを垂れ流し倒れるお客さん。


 「リンさん。どうしたのですか?」

 ちょうど戻ってきたらしいウィリアムさんが、この光景を見て驚きながらたずねてくる。

 「ああ、丁度良かったです。ちょっといいですか?」

 「……はい、ではギルド長室へいきましょうか。誰かこれの始末をお願いします」

 ギルド職員の一人が出てきてウィリアムさんに確認する。

 「はい、わかりました。内容はどうしますか?」

 「ギルド職員への恐喝に、冒険者に対する暴行で処理しておいてください」

 「はい、わかりました。誰か手伝ってくれますか? 報酬は定額になります」

 「オー、では、その依頼受けようか」

 俺も私もと、冒険者逹が次々と手を挙げる。

 「あら大変ね、慰謝料と冒険者への報酬額でこの人破産してしまうわ」

 「そうね、大変ね」

 私と話したギルド職員さんと謝っていた職員さんが話している。確かに定額報酬×依頼を受けた冒険者の数、が相当なものになりそうだ。

 魔物に対する暴力を生業としている冒険者、それを取り仕切るギルドと言うものに対する認識が足りない。まあ、どうでもいい。あの人がお客様になることは二度と無いというだけの話だ。倒した魔物から効率良くお金になる素材だけを剥ぎ取っていくように、あの人からも効率良くお金になるものだけを剥ぎ取っていくのだろう。



 ギルド長室に入り、うながされるままソファーに座る。

 そのタイミングでギルド職員さんが紅茶を持ってきてテーブルに置いていく。

 重厚な扉が閉まると、完全な密室になり外へ会話が漏れることはない。


 「何か問題が起きていることは把握していますが、、進展があったようですね」

 私には王家の暗部の他に冒険者ギルドからも護衛がついている。そこから報告が上がっているのだろう。ここに来るまで私を観察しクロがいないことを見てとり、何かが起きたことを推察し聞いてくる。

 「はい、色々と進展と言うか問題が」

 「悪いほうに進展したようですね、あのように過激なリンさんは初めて見ました」

 「はあ、」

 今までは、私がやる前にクロがやっちゃってただけで、危害を加えてくるものに対して手加減するつもりは微塵もないのだけど。 


 簡単に経緯を話す。

 「そのようなことが…」

 「で、単刀直入に聞くのですが、ギルバートさんの居場所知ってます?」

 ウィリアムさんが目を合わせてくる。

 「本当に単刀直入ですね。残念ながら知りません」

 目を見て思考を探る……わかんないなあ。魔眼を使うという手もあるけど、観察しているのは向こうも同じ。下手な手は出せない。

 

 「私からも単刀直入に聞いてもいいでしょうか?」

 「はあ」

 「あの時の御仁(ごじん)は、やはりギルバートなのですね?」

 そういうことになるのかあ。失敗したかな。あの時と言うのは、魔王ナベリウスを倒した後地上に出た時の事。そしてその御仁と言うのは魔人になって若返ったギルバートさん本人。ウィリアムさんとしては確信はあったけど、この機会に確証を取ろうということだ。

 裏で連絡を取り合ってるのではないかと思ったのだけど、考えてみればその様なことが他にばれたらウィリアムさんの失脚の種子として使われてしまう事柄だ。そんなことに手を出すはずもないというのと、もし出していたとしてもこの場ではいそうですというはずもない。


 うーん。


 もしかして私、今、調子悪いのかもしれない。いや、あせっているのか。ダメだなあ。


 「帰ります」


 このまま何か行動を起こしても空回りしそうな気がするので、今日は大人しく宿に帰ることにする。


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