13:急転直下
(リン、何か来たのだ)
(んー? 詳しく)
(見た目は鶴だけど、鶴じゃないのだ。クチバシに何か咥えているのだ)
見た目が鶴? ああ、魔眼で鑑定したのね、とすると何か魔法的なモノかな、確か森家の家紋が鶴だった気が、、ちょっとまずいかも。
(そっちにいくから、なにもしないでね)
(我の前に留まったのだ。これはもしかして糸を辿って来たのではないか?)
む、有り得る。とすると誰からの差し金かも確定する。まさか払われた糸を逆に利用されるとは。
「なんだこれ」
フジワラが、咥えていたものを手に取る。
「あ、バカ」
「え?」
鶴が羽を広げ、、光輝く。
(リン、転移魔方陣なのだ!)
(ちょ、なにしてるのさ!)
(我じゃない、バカワラなのだ!)
(もー、魔眼で構造解析できる? 出来たら壊してほしいんだけど!)
(むぅ、いきなり難易度高いのだ!)
(魔眼マスターなんでしょ?)
(あれはネコジョークなのだ!)
(取り合えず、転移先の阻害だけでもしてみて)
(うむ!)
「小僧、空間魔法で結界を張れ!」
「ん、おう」
魔方陣を取り囲むように結界が張られる。
魔眼で転移魔方陣を読み解く。
「むぅ、小僧、我のいうものを刀で断て!」
「おお、任せろ」
「まずその持っているモノを斬れ」
「おう、飛燕!」
招待状のようなものを二つに斬る。と、展開中だった魔方陣が消え二つに斬ったモノが二羽の鶴に変化する。
「両方とも斬れ」
「おーう、月下……新月!」
四つになった鶴の破片が、四羽の鶴に変化して羽を広げる。
(リンー、魔方陣破壊すると増えてくのだー!)
(えー、それちゃんと読み解けてないんじゃないの?)
(むー、ちゃんとやってるのだ!)
「小僧、取り合えず鶴の首を全部跳ねるのだ!」
「おう、派手にいくっぜ! ネコ俺の肩に乗ってろ」
「うむ」
刀を鞘に納める。
「いくぜ、疾風、、乱舞!」
無数の刃が無数に増えていく鶴の首を跳ねる。
「どんどん増えてくけど大丈夫なのかネコよ」
「だいじょうぶ、なはず? 増える回数にも限界がある、はず?」
「おいおい、マジかよ」
いきなり走り出した私を、ヤンさんが何かあったのかと聞きながら追ってくる。けど、説明している暇はない。庭の噴水へと続く扉を開く。そこには四角く囲まれた空間の中で沢山の鶴に囲まれたクロとフジワラ君の姿。斬ると増えるタイプの仕掛けか、しかし相当数斬ったのか魔力が弱まっている。けど、転移魔法は発動してしまいそうだ。
クロを見る。
私を見て首を振る。
仕様がない、クロに小さく頷くと共に転移魔法が発動し、二人が消える。
少し遅れてヤンさん逹が駆け付ける。
「リン様、これは?」
「連れていかれちゃいました。早々に動いてくることは予想していたんですけど、速かったなあ。まいった」
完全に後手に回されている。どうしたものか。
「取り合えず、宿に戻ります。何か情報があったら知らせてください」
「……わかりました。馬車をまわします」
「はい。お願いします」
うん、余計なことを聞いてこないヤンさん。とても助かります。
馬車に乗り宿へ戻るリン様を見送る。
「やけにあっさり帰したな」
何の質問もせずに送り出した事がいまいち理解できていない。
「ああ、どうやら我々の手に負える問題ではないようなのでね」
「なんだ、諦めるのか?」
「何を言っている、リン様はローランだぞ、諦めるもなにもないだろう」
「どうするんだ?」
「影に回る。まあ、平たく言えばサポートだな」
「そうか、確かにそれこそが俺達の仕事だな」
暗部は、影から王家を支える。俺のように荒事の解決もあれば、ヤツのように情報を集めて対処することもある。
「では俺の出番は無しか」
「そうだな」
「酷いな」
「なんだ、慰めてほしかったのか」
「バカ言え」
戯れ事を言いながら、馬車が見えなくなるまで見送る。




