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幸せのかけら

作者: しゅうか

あらすじでも書いたけど、女審神者です

 六月はジューンブランドと言って、結婚するには縁起のいい月とされている。

 それ故かこの月に結婚する審神者も多く、それに参列する審神者や男士の姿も多かった。

 カリナと呼ばれる審神者も参列者の一人で、その護衛として彼女の初期刀 山姥切国広も式に参列していた。

 そんな祝いの席にいるべきの二人は、何故か式場内にある医務室にいた。

 スタッフが付き添おうとしたが、式で忙しいだろうからと二人が断ったため、室内には彼らしかいない。

「全く、今日は慣れない格好だから大人しくしろと言っただろう」

 国広はそうボヤキながら、カリナの足に医療用テープを丁寧に張っていく。

 ベッドに腰掛ける彼女は、十代半ばの若い少女の姿をしていた。

 丈が短い水色のドレスを着ていて、腰まである長髪を真っすぐに下ろしている。

 本来なら髪は乱藤四郎と加州清光が綺麗にセットしていたのだが、崩れて直せなくなったためほどいたのだ。

 そんな彼女の足元にはヒールのある靴が落ちており、片方のヒールはポッキリと折れている。

「だって、負けたくなかったんだもん」

 カリナが座るベッドの上には、先ほど花嫁によって投げられたブーケが転がっていた。

 カリナは見事な跳躍でこれを取り、着地に失敗し、派手に転倒した。

 結果ヒールが一つ折れ、片足を軽く捻挫した。

 少し痛む程度で歩けないほどではなく、その程度で済んだのは不幸中の幸いだろう。

「あんた、そんなに結婚したかったのか?」

 意外に思った国広が問うと、いや別に、とあっさりとした返事が返ってきた。

「まだ考えられないんだよね。だってまだ十四だし」

 じゃあなんでだ、と国広はテープを巻きながら改めて問う。

「いやだって、これ取り合いでしょ? 負けたくないじゃん」

 当然のように言うカリナに、国広はそういえばこういう主だったなと思い出した。

 かくれんぼの時に屋根裏に隠れたり、軒下に隠れたり、最近では池の中にすら居たことがあったのだ。

 そんな負けず嫌いな彼女なら、ブーケトスで他の参加者に負けたくないと思うのも当然なのかもしれない。

「あ、でも、結婚願望ないなら効力ないのかな。それなら、悪い事したかも」

「どうなんだろうな。既婚者も参加可だったし、大丈夫なんじゃないか?

 一般的には結婚できるジンクスらしいが、それ以外のご利益があるのかもしれないな」

 国広の言葉に、ご利益ねぇ、とカリナはぼんやりと呟いた。

「でも私今十分に幸せだからなぁ。これ以上は想像つかないかも」

「そうなのか?」

「うん。国広に朝起こされて、歌仙の美味しいご飯が食べられて、短刀達と鬼ごっこして、かくれんぼして――国広と歌仙に仕事さぼってるの見つかって怒られるみたいな。それで十分過ぎるかなぁ」

 それはカリナの幸せの中に国広もちゃんといて、それは同時に彼女が国広を必要としているということだった。

 そのことに国広は少しだけ案慮すると同時、けれどそれはいつまでの話だろうと考えた。

 カリナの本丸はまだ発足したばかりで、刀剣も刀種も少ない。

 国広は今でこそ使われているが、これから名剣名刀が増えていく中で必要とされ続ける保証はどこにもなかった。

 もちろん、山姥切国広の名に懸けて、国広の傑作という誇りに懸けて、他の刀に負けるつもりはしない。

 ただ、カリナが写しを正しく評価できる確証を国広はまだ持っていないのだ。

「サボるな。ちゃんと仕事もしろ。――そら、終わったぞ」

 心中を悟られないようにいつも通りの口調で言って、国広は壊れた靴を会場スタッフから貰った袋に入れ立ち上がった。

「ん。ありがと」

 カリナは戦利品のブーケを手にし、国広が慌てて近場で買いそろえたスニーカーに足を入れる。

 このまま帰るかと国広が問うと、カリナは大きく首を横に振った。

「二次会行こう。二次会。まだやってるよね」

 カリナはそう言って国広の手を引き、元気に医務室を出て行った。

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