魔王と勇者の暴走
初投稿です、拙いところだらけだと思いますが最後まで読んで頂けたら嬉しいです。
「…なんだその聖騎士みたいな格好は」
「…なんだその大魔王みたいな格好は」
勇者と魔王は敵前にもかかわらず
そう引き気味に言った。
その様子に、勇者についてきた魔法使いも
魔王の側近もそっと目をそらすのだった。
かたや、この世の禍々しいもの全てをかき集めたような圧倒的な威圧感
かたや、その威圧感すら消し飛ばすあらゆる浄化効果をもつ装備。
一応言うが魔王も勇者も真剣なのだ、
自分の国を守るために大真面目に
考えた末に揃えた装備
今までの日々の集大成とも言えよう。
「なぁ魔王…正気か?
そんな装備じゃ気が狂うだろうに」
勇者は、心底憐れむように問いかける
魔物の王とて生き物だ
あまりにも酷いではないかと眉をしかめる。
「…貴様こそ間違いなく黒歴史に刻まれるであろう姿じゃないか」
魔王の方も古傷が痛むかのように
あからさまに顔をしかめる
殺伐としつつも、どうも締まらない空気に
先程からそわそわとしていた魔法使いが
痺れをきらした。
「勇者殿…まさか目的を忘れた
わけじゃないよな?」
「勿論だとも
魔王っ!俺が此処に居る理由なんぞ
言わずともわかるだろう?」
「いや、すまんマジで分からん」
だって魔王は、別に攻め込んでないし
むしろ、自分の領地の開拓に大忙しなのだ
正直今も、厨二病勇者に構っている暇はない
できれば速やかにお引き取り願いたいくらいだ。
なんだこいつは、急に現れ
ディスってくるし、マジ迷惑
くらいにしか思っていない。
この後だって下級魔族の所に
集落の視察に行くのだ、マジ迷惑。
勇者は苛立っていた、何故なら
わざわざ足を運んでやったのに
魔王らしからぬ、やる気のなさ
あれだろ普通此処はバトルな流れだろう
お前それでも魔王かよ…と
喧嘩っ早い勇者は内心舌打ちしまくりだ。
しかもだ、魔王の側近と思わしき山羊っぽい魔人は、さっきからチラチラ時計を見ているしあからさまに不審者を見るようなそれだ
なるべく関わりたくないな〜みたいな感じが見え見えなのだ。
だか、今更面倒だ単刀直入にいこう。
「魔王、貴様の魔力をよこせ!」
「……なんだと?」
「魔王様、いっちょ魔法で派手に
ぶっ飛ばして差し上げては?」
「それは、是非お目にかかりたいですが
勇者殿ここは任せてください
魔王殿、一から説明致しますと…」
さて、魔法使いの話を聞き終えた魔王は
どうしたものかとドン引いた。
「つまり貴様等は、我が魔力で
全ての生物を魔物にしたいと…」
なんて、クレイジーな野郎だ
言い分としては、魔物化をする事で
丈夫な体を手に入れまた
そのことにより、魔物によって侵食された
荒地でも暮らせると言う。
なんて奴だ、魔王倒して魔物沈静化させようぜ!
ではなく、魔物になって生き延びようぜ!
と、暴論だヤバイコイツ。
「貴様、本当に勇者か?」
「他になんだってんだ
…だいたい人類は基本脆すぎる
なら、強くなればいい!
俺達だけでは守りきれない
やはり前提から覆さなくては!」
話を聞いている限りそれテロだ
ある日いきなり許容量を超える
魔力が流れ込み、魔物化するのだ
魔王の魔力を勇者があれこれし流す予定だそうだ。
ヤダコイツ、ヤベェじゃんと
魔王はマジでドン引いた。
「では、魔王殿、魔力を頂けますかな?」
「貴様も魔物となるのだぞ?」
「構いません、むしろ魔法の開発が捗ります」
と、魔法使いはギラギラと目を光らせ
ふふふ…と笑う
あっコイツもただのヤバイ奴だ。
「全生物の進化な為に俺達は
準備をしてきたんだ
仲間になろうじゃないか
勿論手を貸してくれるだろ?」
「勇者よ、なんで貴様なんぞが
聖なる力を持っているんだ…」
魔王はマジのマジでドン引いた
コイツを希望に掲げる人類に心底同情した
まさか、勇者ともあろうものが
全生物を魔物にしようとするなんて
夢にも思わないだろう…。
しかし魔王も魔王でありながら
平和主義だった。
そんな魔王は、魔力により
弱った森を浄化してまわり
よりよく、住みやすいようにと
魔獣達の魔力の調整を行い
無害なものへと変えてきた。
魔族の集落では、魔力による
作物への影響の軽減について教え
魔人達にも魔力放出の危険性や
コントロールを徹底して指導していた。
また、最近では、魔力に含まれる
有害性を浄化する目処が立ったところだ
著しく魔力が下がるものの
人間達は、低い魔力でも生きているのだ
不便ではあるが生きてはいける
彼等の生活の場を奪わない為にも
害を断ち、また自分達の暮らしの為に
計画を進行中だったのだ。
なのになんだ、この勇者は
ここまで来るのにどれほど苦労したことか
また、どれほど生活状況が悪いか
貴様は荒野を増やすつもりかと
怒鳴りたいところだ。
勇者が、妙に禍々しい装備なのも納得だ
生物への魔力汚染にはおあつらえ向きだろう。
全く、宝の持ち腐れだ
浄化特化を詰め込んだ装備を着込む者からしたら
喉から手が出るくらい
その聖なる力が欲しいのに。
「必要なものを持っているのに何故…」
そう魔王と勇者は言ったのだった。
最後までありがとうございました。