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女子高生と異世界の話 (買い物をすることになるだけ)

作者: 新月 雫

  それは、おそらくこの世界の文化の発展レベルの問題なのか、あるいは時代的に砂糖が貴重だからこそ貴重なものを贅沢に使ったらしいざりざりしていて甘ったるいお菓子でした。この世界の姫君のお気に入りであると言われているらしいものの……正直感動を覚えるほどおいしいと感じることはなかったです。

 携帯のカメラにおさめてもネット環境がなかったためにSNSに載せることは叶いませんでした。まぁ、現代的な作業だとは思うけれど、無いならないでそれでいいのです。


「良くも悪くもこんなものかぁ」


 異世界のこの国のお姫様と現代に溶け込むように暮らしている私の年が同じくらいらしくて、お姫様には違う世界の視点を勉強して貰うために私が呼ばれたとそういうことらしいですよ。

 ちょうど長期間の休みにさしかかっていたからこそうなずくことは出来ました。

 人民どもから搾取を行いながら伸びやかに緩やかに生活していく上で果たしてそれは必要なのかは疑問でしかありませんが。

 私に与えられたものはというと、そのお姫様と会話を行う時間と自由に城下町を歩いて散策すること。

 魔法には憧れるけれど、私の世界にないこともないのでここに来て見たものの中で特段すごいとは感じなかった。


「あなた、毎日たのしいの?」

「そうでもないです」


 さっきの時間にお姫様に聞かれたときにほとんど考えることなく即答した質問が頭をよぎって、理由こそ聞かれなかったけれど、それほど楽しくない理由を答えるとしたら……楽しくないものごとって理由を考えるだけでも馬鹿みたいなのでやめときましょう。

 城に戻るために道を歩いていると、


「よぉオマエ、姫様の客人なんだってなぁ」


 目の前に赤いような魔方陣が展開されて、そこから現れたのは人間の見た目をしているけれどそれとはどこかかけ離れた存在感のある人でした。派手だとかいかついだとかカタギではなさそうです。


「こんにちは!」


 私のほうの世界には挨拶週間というのがありまして、高校生になってからはあってないようなものでした。


「え、あ、ハイ……こんにちは」


 意表を突く手段には誰かを傷つけるやり方だってあるけれど、無駄に平和に行きたかったので。


「おさらばです」


 走って逃げます。

 なんだったら隠し持っている異能力を使っても良いのですが、日常的には使用してこなかったので……。


「まちな」


 逃げようと思った方向に一瞬で転移をしたっぽいですねぇ、目の前にいるのがなによりの証拠です。


「じゃあ、ご用件は」


 殺すつもりの悪意があれば私は一瞬で彼にスプラッタ映画みたいなことをされているはずなので、


「あー……やる気なくすわ」

「国家転覆できる技術まではわかりませんよ。あくまでどこまでいっても学生でしかないので」

「いや……そういうのはオレより偉い奴の仕事なんで……」


 言葉的に下っ端っぽいです。

 そして明らかに引いている。


「いや……まわりくでぇことしちまったのはいま反省したけどよ。アンタに頼みたいことがあってな……」

「なんでしょうか」

「……オレ、魔族だからさ、この国のモン買えねぇんだよ」


 買えない。

 確かに通貨を持っている魔物なんて聞いたことはないし……。

 ばつが悪そうだとか、しょんぼりしているような様子で魔物は此方を見ていて、


「妹……みたいな個体がいて、そいつに髪飾りでもアンタの食ってたお菓子でも買ってやりてぇんだけど」

「人間のような見た目をしているのに何故?」

「この国の連中はすぐに見抜くし、金そのものにも魔物よけの術がついてて触れねぇし」


 芸当が細かい。

 言われてみれば、魔物ってお金やら宝物やらを盗んでいくスタンスの方々が多いから人間の私財を守るための対策としては充分ですね。


「大変ですね」

「……アンタにしか頼めない」


 報酬としては充分すぎるほど貰っているような気はしていたものの、元の世界に帰れば使えないのでこういうことに使っても良いのかも……?


「私がこんなことをしたら羨ましがる魔物が出て来て争いに発展しませんか?」


 随分極端な問いかけになってしまったけれど、大丈夫なものなのかが疑問です。


「……その辺りは隠すし大丈夫だ」

「では、特別お礼とかは望まないので。気になるものを買いに行きましょう」




(おわり)

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