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エピローグ そして、領主が赤貧を追い出す方法

 そんな、どたばたとした騒動を乗り越え、ようやく落ち着いた頃。


「―――今回、ハガネ殿どにょの使った、魔術にゃのだが」


 これまで眉間に皺を寄せて沈黙していたギルニャオが、重々しい雰囲気で口を開いた。

 似合わないことこの上ない。


「ハガネ殿どにょ達の言う通り、魔術で人への被害はにゃかった」

『当然なんだわ、なんせあたしが直々にこの目で見たんだから!』


 表情を曇らせたまま、ちらりとセイミの方を向いて頷くギルニャオ。


「にゃが……地下に倉庫を有していた商人の一部に、甚大にゃ被害が出たのにゃ」

「……」


 ぴくり、と。無言のまま眉を震わせる鋼。

 言葉の無い鋼に代わって、引き続きセイミが問い返す。


『それって、つまり?』

「今回の騒動において、犯罪者はダルニャス卿―――もとい、ダルニャス。これは間違いにゃいにゃ。

 主たる責任はダルニャスにあり、自分たちが生き延びるために必要にゃ措置であった……ということも分かっているにゃ」


 静かに響く、ギルニャオの声。

 その重々しくも可愛らしいうさねこ声を茶化す者は居ない。

 押し寄せる予感に、誰も、何も言えなかった。


「にゃが、あみゃりに被害が大きく、みゃた過剰にゃ攻撃魔術を街中(みゃちにゃか)で行使したことによる被害であるため―――ハガネ殿どにょにも責任の一端があるという判決が下ったにゃ」


 空気が重い。

 鋼でさえ、いや鋼こそが、紅茶を啜ることもなく、無表情なまま凍りついたように動かない。


 誰も、しゃべれぬまま。一拍の沈黙を挟んで。

 誰かに促されることもなく、絞り出すように、ギルニャオが再び口を開き―――




金貨(・・)728(・・・)みゃい


 これが、ハガネ殿どにょに科された、器物破損に対する賠償金にゃ」







―――ぱたり。




「ハガネ様が……息をしておりません……」


「お兄様ぁ、お兄様ぁしっかりぃ!」


「しっかりしたまえハガネ兄、たかが728枚程度の借金など、借金勇者に比べれば大したこと―――あいてっ」


『あんたはいい加減その話題から離れなさい、とどめ刺すんじゃないわよ』


「ああっ、テレビに映像がぁ、ハガネお兄様の殺害事件が映し出されてますぅぅ」


「おお、これがテレビか。なんとすごい魔法じゃないか、ハガネ兄はやっぱり天才なのだな!」


『その天才、あんたのせい……だけじゃないけど虫の息なんだってば』


「お兄様の安らかな寝顔が、寝顔がぁ……ぐすっ」


「……いや、えっと。本当にどうしたのだ、ハガネ兄は。起きたまえよ?」


『ほらハガネしっかり、あたしがついてるから、生きて大丈夫なんだから!』




「お父さみゃ、どういうことにゃのですか!

 ハガネさみゃは犯罪者に掴みゃって生死の境をさみゃよったというだけですのに、にゃんたる仕打ちですか!」


「さっき言った通りにゃ、被害が大きすぎたのにゃ。

 これでもダルニャスの罪と罰則で最大限補填した上にゃのにゃ」


「だからと言って、ではおとにゃしく死ねばいいとおっしゃるのですか!」


「そうではにゃい、そうではにゃいが―――」


「うるさいっ、お父さみゃにゃんかしりみゃせんわ!」


「涙じょおぉ、にゃがはいだって、にゃがはいだってぇ」


「ギルニャオ様、床が汚れます」


「おみゃえは三日くらいだみゃってろにゃぁぁぁ!」


「(無言で頷く)」


「お父さみゃにゃんか大っきらいにゃ、みゃるごとハゲればいいにょにゃ!」


「うおぉぉぉぁぁぁぁぁ」


「(無言で頷く)」


 ・

 ・


 ・



 ・





「その後のことは、よく覚えていません。


 どこか遠くで、誰かの呼ぶ声や叫び声を聞いたような気もしました。


 でも、そういうの、もうどうでもいいんですよ。


 ぼくは、疲れました。




―――旅に、出ます」





                        ~ 第三条 完 ~




【 現在の可能性行使証 使用状況(3/4) 】



○ 癒しの魔術


 返済内容:癒しの魔術を何度もかける

 利子  :?

 返済期間:無期限

 備考  :銀証を使用



○ ユニカが上級の治療の魔術を使えるだけの莫大な経験値


 返済内容:魔物を倒し、経験値を得る

 利子  :初期5%。以降、半年経過ごとに、残り分に対し1%加算

 返済期間:3年

 備考  :



○ 金貨2110枚


 返済内容:金貨2110枚

 利子  :初期5%。以降、三ヶ月経過ごとに、残り分に対し1%加算

 返済期間:無期限

 備考  :銀証を使用




【 借金の能力 】


 可能性行使証 : 使用可能枚数 4枚

 銀証 利用権 : 残り0回→1回 (up!)

 口約束 : 利用回数 5回 (up!)

 先払い (new!)

 妖精 : レベル5→6 (up!)




【 妖精 】


 存在認識 : レベル2(鋼と契約者)

 物理干渉 : レベル4(任意で全透過) (up!)

 行動範囲 : レベル1(2メートル)

 特殊能力 : レベル2(1×0tハンマー、テレパシー)




【 契約関係 】


○ ユニカ


 契約内容:主従契約(ユーディア)


 契約内容:奴隷契約(犯罪奴隷)


 備考:家族(兄と妹)



○ ギルニャオ


 契約内容:支払契約(金貨1080枚)

 利子  :なし

 返済期間:9年

 備考  :毎月金貨10枚を支払う



○ エリア


 契約内容:家族契約


 契約内容:協力者契約(借金返済と、夢を叶える事に対する)


 備考:家族(兄と弟?)



○ 賠償金


 支払内容:金貨728枚


 理由  :ダズレニアの街内で魔術を発動し、器物破損を行った為





                       ~ Fin ~







 せっかくの誕生日ということで、今日で完結したかったのですが。

 進みが悪く、あと2話くらい続きそうです。閑話が。

 まあ、どうせあと三年間は誕生日来ないし……


 ともあれこれにて三条終了、一区切りとなります。

 少しでも、楽しんでいただけたなら何よりでございますよ。



 次回本編は、もし続いたら商人編(仮)

 大量の借金を抱えた貧乏人が、商売に手を出します。

 借金の膨らむ未来しか見えない。





【★ ネタバレ次回予告 ★】



 鋼が……



(タメ)



 借金を●●します!



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