表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

作者: 詠月 紫彩

匣をもらった。


何も入っていない、空っぽの匣。


鍵もついていない、ただの匣。


常に匣はボクと一緒に在った。


少しずつ、少しずつ、匣の中を埋めていく。


ボクにとって大切なモノで満たされていく。


時が経つにつれて、匣の扱いは乱雑になっていった。


時には叩いたり、放り投げたり、整理もしないで放置した。


中身が溢れて、ふたが閉まらなくても。


それでもボクは無理やりふたをした。


匣から溢れだしても、その匣にモノを入れ続けた。


やがてボクは匣を増やした。


色も形も大きさも同じではない匣。


鍵のある匣、ない匣。


長い時間をかけて増やし続けた。


たくさんの重たい匣を捨てることもできずに。


ふと、後ろを振り返った。


もう重たい匣たちを持ち続けることができなくなった。


持てる匣は最初から一つきりだったのに。


ボクは欲張りだから。


今思い返す。


本当に大切な匣はどこに行ったのだろう。


本当は何が大切だったのだろう。


降ろしたたくさんの匣を前に頭を抱えた。


悩んで。


迷って。


触れて。


開けて。


出して。


探して。


そして見つけた。


中身を少し整理して、詰め直す。


今までの匣がいらないわけじゃない。


大切じゃないものが入っていないわけじゃない。


ただ一つだけ選ぶのなら……。


匣を選び終えたボクはそっと、目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ