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Moon Shadow  作者: 七条雫
第一章 夢見る少女と怪盗見習い
9/11

「ティファはどんなのが好きなんだい?」


換金を終えた三人は、町を歩き回っていた。


「そうね。正直、あまり良い待遇ではなかったからおしゃれがわからなくて」


「そっかぁ」


ピーターは困ったな、と頭を掻いた。


「あっ」


ティファがある店の前で立ち止まった。


「何か気に入ったかい?」


「ここのお店の雰囲気が、好きかもしれないわ」


「よかった!じゃあ、選ぼうか」


ピーターも一緒に選ぶつもりのようだ。しかし、スティーブは店に入ろうとしない。


「俺は先に宿でシャワーを浴びてるからな」


「そう、わかったわ」


「何言ってんのさ!スティーブも何か選んであげなって」


「別にいいわよ」


「よくないね。ほら、この店じゃなくてもいいからさ」


ピーターがそう言ったが、スティーブは返事をせずに歩き出した。


「別によかったのに」


「少しは女の子に慣れたほうがいいと思うんだよ。そっけないだろ?」


今までのスティーブとのやり取りを思い出す。確かに返事はそっけない。


「なるほどね」


「じゃあ、選ぼうか。あ、このスカートとかはどうだい?」


ピーターが差し出したのは水色のフワフワのスカート。


「可愛いわね」


どうやらティファも気に入ったようだ。


「だろ?」


そうして二人は着々と服を選んでいった。会計を済ませた二人は店を出て宿へと向かった。


「それじゃあ、またあとでね」


「わかったわ」


宿に着いて、二人は一旦別れた。





「へぇ、見違えたね。とても似合ってるよ」


着替えて入ってきたティファを見て、ニコニコしながらピーターはそう言った。ティファは得意げに笑った。


「ありがとう。何から何まで悪いわね」


「いいんだってば!ねぇ、スティーブ」


ピーターが見た方をティファも見る。スティーブが壁に寄りかかって立っていた。


「私を見て、何か言うことは?」


ティファはスティーブを見上げながら悪戯っぽく微笑んだ。


「似合ってる」


「ありがと」


「何か買ってきたのかい?」


ピーターがそう言うと、無言でティファに小さな紙袋を差し出した。


「開けてみても?」


「ああ」


紙袋から現れたのはピンクのリボンだった。


「あ、可愛い」


「へぇ、リボン買ったんだ」


「ありがとう、嬉しいわ」


ティファは笑いながら早速リボンをつけた。


「どうかしら」


「思った通りだ。似合ってる」


「ありがとう」


ティファが嬉しそうに笑いかけると、スティーブは目を逸らした。


ピーターは打ち解けつつある二人を嬉しそうに見ていた。


「決めたよ!」


ピーターが突然叫んだ。


「何をだ?」


「まずは団長に会いに行こう!」


「団長?」


ティファは首を傾げ、スティーブは少し驚いた。


「ティファを紹介しよう!」


「平気か?」


「彼女なら平気さ。むしろ気に入ると思うよ」


「まあ、そうだな」


「ねぇ、何の話なの?」


ピーターはニヤッと笑った。


「世界一素敵なサーカス団、ソル・シャドウの話さ!」


「ソル・シャドウですって!?」


ティファもその名前は聞いたことがあった。世界的に有名なサーカス団である。


「あんな有名なサーカス団とあなた達に何か関係があるの?」


「団長と僕らは仲間さ。師匠といた頃のね」


「ムーンシャドウの?」


「だからサーカスの名前が対になってるのさ」


まだ驚いて目をパチパチさせているティファを見て、ピーターは笑った。

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