表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Moon Shadow  作者: 七条雫
第一章 夢見る少女と怪盗見習い
5/11

「警察だ!」


扉が開くと、少年はティファを自分の後ろにかばった。


「やっぱり怪盗とつるんでたのか!」


「抵抗は無駄だぞ!」


ティファは慌てて『月の魔法』という本を抱えた。


「それは?」


「火事の時に唯一残ったものなの」


「わかった。それをしっかり持ってて」


「今からでも遅くないわ。あなただけでも逃げて」


「逃げる?女の子を残していけるわけないじゃないか」


少年はニッコリ笑う。


「今から君も怪盗見習いの仲間だ。だから、リーダーである僕を信じて」


少年の真面目な表情と言葉に、ティファは黙ってうなずいた。


「僕の名前、決まった?」


ティファはちらりと本を見た。幼いころから見てきた本だ。


「……ピーター」


「ふーん。なかなか普通でいいね」


少年、もといピーターはニッと笑うと突然ティファを抱き上げた。


「怪盗見習いピーターだ!彼女はいただいてく!」


ピーターの行動に警察も叔母も、それどころかティファも驚いていた。


「僕を信じて、ティファ」


ピーターがティファに小声で囁き、ティファもうなずく。


するとピーターは窓に足をかけた。


「まさか、このまま飛び降りるつもり?」


「人を抱えては無理かな」


「え?」


「大丈夫だから、信じて」


ピーターはニッコリ笑うと、ティファを窓から放り投げた。


「きゃああああああああ!」


ティファも、警察も叔母も誰もが思ってもいなかった行動だった。ティファは悲鳴をあげながら、どんどん地面に近付いて行く。


「スティーブ!」


ピーターがそう叫ぶと、突然人影が現れてティファを受け止めた。


「大丈夫か?」


「え、ええ。ありがとう」


「ナイスキャッチ!それでは皆さん、さようなら!」


そう言ってピーターも窓から飛び降りた。警察が慌てて駆け寄るが、もう遅い。ピーターと、ティファを抱えたスティーブという人物は走っていた。


「寿命が縮まったわ!」


ティファが涙目で叫ぶ。まだ心臓が大きな音を立てている。


「全くだ。無茶にも程がある」


「あはは!ごめんごめん!だってスティーブなら大丈夫だと思って!」


「知らない間に仲間も増やすし、本当に勝手だ」


布を被ったスティーブという人物。少し不機嫌そうだ。


「えっと、スティーブ?私、重くないかしら」


「平気だ」


そっけない返事だが、声の優しさに安心する。ティファからはスティーブの顔が見えなかったが、なんとなくこの人物は頼れると思った。


「ティファ・エレクトリアよ。助けてくれてありがとう。よろしくね」


そう言ってティファは微笑んだ。それに対してスティーブは何も言わなかった。


「僕には?」


「突然窓から放り投げるような人に、お礼の言葉なんてないわよ」


「そんなぁ」


「冗談よ。ありがとう」


ティファが笑うと、ピーターも笑い返した。


「ところで、リーダー。このあとどうやって逃げるんだ?」


スティーブの疑問にピーターは笑顔で応える。


「うん、良いことを聞いてくれたね」


「何も考えてないのか」


「流石スティーブ!わかってるじゃないか!」


「え、そうなの!?」


ティファが驚いて声をあげるが、ピーターはのんきに笑っている。


「なんとかなるよ!」


「ひとまず、この町を出るしかないな」


「道は……ティファ、わかるかい?」


「わからないわ」


「わからないのかい!?」


「だって、この町を歩き回ったことないもの」


流石にピーターが顔を引きつらせる。その時、曲がり角から一人の少年が現れた。


「エレクトリア?」


その少年の出現に、思わずピーターとスティーブは足を止めた。


「え、ラウル?」


現れたのは、ティファと同じ学校のラウルという少年だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ